公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

講演情報

一般口演

現地発表

一般口演9
口腔機能

2024年7月7日(日) 13:10 〜 13:40 第3会場 (幕張メッセ国際会議場 2F 201)

座長:上田 貴之(東歯大)

[O2-1] 中山間地域在住高齢者における肥満とフレイル・口腔機能・離村との関連

*後藤 崇晴1、藤原 真治2、松田 岳1、岸本 卓大3、市川 哲雄1 (1. 徳島大学大学院医歯薬学研究部 口腔顎顔面補綴学分野、2. 美馬市国民健康保険木屋平診療所、3. 徳島大学大学院医歯薬学研究部 総合診療歯科学分野)

[Abstract]
【目的】
 肥満は高血圧や糖尿病,心血管系疾患発症などの誘因となることが報告されている一方,高齢者では肥満と動脈硬化などのリスク要因との関連は年齢の上昇とともに減弱することが報告されており,高齢者における肥満状態の把握は重要な研究課題となっている.しかし,この肥満とフレイルや口腔機能との関連を包括的に検討した報告は少なく,とくに中山間地域における限界集落での報告はない.そこで本研究では,このような地区である徳島県美馬市木屋平地区在住高齢者の肥満状態とフレイル,口腔機能との関連性を検討するとともに,人口激減地域で大きな問題となっている離村との関連を検討した.
【方法】
 木屋平診療所を定期的に受診している65歳以上の高齢患者111名を対象とした.腹囲が男性85 cm以上,女性が90 cm以上の場合を肥満群,それ以外を標準群とした.フレイルの評価として,握力,MMSE,老年期うつ病評価尺度の点数,日本語版 LSNS-6の点数を調査した.口腔機能の評価として,舌苔の付着度,オーラルディアドコキネシス,咬合力を測定した.また栄養状態の評価として,血液検査によるアルブミン値を測定した.離村に関しては,ベースライン時から5年経過時に死亡あるいは地区内の自宅での生活が不可能となった場合を離村として判断した.統計学的検討にはカイ二乗検定,Mann-WhitneyのU検定,共分散分析を用いた.なお本研究は「木屋平地域の買い物と健康寿命に関する研究(国立病院機構京都医療センター倫理審査委員会,17-032」の一環として行われた.本研究に関連し開示すべきCOI関係にある企業はない.
【結果と考察】
 本調査対象者の内,標準群は60名,肥満群は51名であった.握力と咬合力は標準群と比較して肥満群が有意に高い値を示した.LSNS-6の得点は,肥満群と比較して標準群で有意に低い値を示し,標準群では社会的フレイル傾向が強かった.また離村と肥満との関連に関して,統計学的に有意な関連は認められなかったが(p=0.052),肥満群と比較して標準群では離村した者の割合が高かった.以上の結果より,中山間地域に位置する木屋平地区の高齢者における,肥満状態の実態と咬合力,社会的フレイル,離村との関係が示され,口腔機能に加えて日本歯科医師会が示すフレイルドミノの上流に位置する社会的フレイルへの対応の重要性が示唆された.