公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

講演情報

一般口演

現地発表

一般口演11
症例

2024年7月7日(日) 14:10 〜 14:40 第3会場 (幕張メッセ国際会議場 2F 201)

座長:岡本 和彦(明海大)

[O2-7] 外科的郭清処置によるインプラント周囲炎治療後にインプラント義歯にて対応した一症例

*遠藤 義樹1 (1. 東北・北海道支部)

[Abstract]
【緒言】
 インプラント周囲炎はいまだ標準治療とされる治療法が確立されておらず,治療後の補綴設計もさまざまに考慮されている.今回,重度インプラント周囲炎に対する外科的郭清処置を行ったうえで,補綴装置としてインプラント支持を活用したパーシャルデンチャー(以下,IARPD)を装着したところ,良好な経過が得られているので報告する.
【症例の概要・治療内容】
 患者は56歳女性.下顎右側臼歯部の腫脹を主訴に来院した.5年前に下顎右側犬歯部と第二小臼歯部にインプラントを埋入し,固定式のインプラント義歯と下顎右側第一大臼歯に陶材焼付冠を装着している.装着当初から同部位の腫脹を繰り返してきたという.上下顎残存歯は広汎型慢性歯周炎 StageⅣ Grade C,下顎インプラントはインプラント周囲炎と診断した1).歯周基本治療と並行して下顎右側第一大臼歯は抜歯,インプラント周囲炎に対しては外科的郭清処置後にインプラント体に根面アタッチメントを装着.症型分類はlevel Ⅲ (総得点38)で,下顎片側遊離端欠損に対してIARPDを装着した.
【経過ならびに考察】
 初診時,歯肉の腫脹と自然出血を認め,次世代シーケンシング法による歯周病源細菌検査の結果,red complexの比率は19%と高率に認められた.歯周基本治療と外科的郭清処置後の再評価ではインプラントを含む全顎的な歯周組織の改善が得られ,red complexの比率は0%,健常菌の比率は初診時1.8%から18%へと増加した.そこで補綴前処置としての充填処置と歯冠修復処置を施した上で,IARPDを装着した.術後評価として,口腔関連QOLのすべての項目において改善を認め,咀嚼能力検査においても向上を認めた.現在術後3年を経過し,インプラント周囲骨組織の維持も良好に得られている.これらのことから,インプラント周囲炎に対する外科的郭清処置とIARPDの有効性が示唆された.
 なお,発表に関する患者の同意は得られている.
【参考文献】
1)Schwarz F, Derks J, Monje A, Wang H-L. Peri-implantits. J Periodontol 2018;89(Suppl 1) :S267-S290.