公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

講演情報

ポスター発表

現地発表

口腔機能

2024年7月7日(日) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-113] 拡散テンソル画像を応用した内・外側翼突筋筋線維走行の三次元解析

*木之村 史織1、小川 徹1、菅野 武彦1、庄原 健太1、佐々木 啓一2,3、江草 宏4、依田 信裕1 (1. 東北大学大学院歯学研究科 口腔システム補綴学分野、2. 東北大学大学院歯学研究科、3. 宮城大学、4. 東北大学大学院歯学研究科 分子・再生歯科補綴学分野)

[Abstract]
【目的】
 顎口腔系の様々な機能運動は,咀嚼筋などの筋群の協調活動により遂行される.さらに多羽状構造から成る咀嚼筋では,その内部も機能的に分化している.各筋の筋活動解析には筋電図が用いられるが,筋機能に対応する形態学的特徴の把握にはMRI解析が有用である.しかし,繊細な咀嚼筋内部の分画,分画内の筋線維の配向構造の把握には至っておらず,咀嚼筋内部の機能分化を筋線維構造に関連付けて理解することは困難であった.当分野では,これらを解決する一助としてMRIの撮像方法の一つである拡散テンソル画像(diffusion tensor imaging,以下DTI)に着目し,咬筋筋線維の抽出に適したDTI撮像・解析条件を同定し,下顎安静位と開口位での筋線維配向性の変化を明らかにした1).本研究では,体内深部に位置し,筋内部の機能分化の実態が未だ明らかではない内・外側翼突筋に本手法を応用し,両筋に対する最適解析条件を同定し,異なる下顎位における筋線維構造を調査した.
【方法】
 健常成人3名を対象に,3T超高磁場磁気共鳴画像撮像装置を用いて,3D T1-TFEおよびDTIの連続撮像を下顎安静位と切歯間距離25mm開口位にて実施した.3D T1-TFE画像を基準にDTI上で右側の内・外側翼突筋を同定し,DTI解析ソフト(FMRIB's Software Library,MRtrix3)により筋線維を描出し,筋線維配向性を両下顎位において比較した.
【結果と考察】
 各対象者の両筋において,筋線維描出時のDTI解析パラメータの一つである異方性拡散の最適値が得られた.これらを用いたDTI解析により両下顎位における筋線維配向性を比較したところ,内側翼突筋では2名の対象者において有意な変化が認められた.以上より,DTIにより内・外側翼突筋の筋線維構造を解析しうることが示され,顎口腔系の運動機能の理解に必要となるこれら筋内部の機能分化に関する新たな知見を得られる可能性が見出された.
【参考文献】
1) Sugano T, Ogawa T, Yoda N et al. Morphological comparison of masseter muscle fibres in the mandibular rest and open positions using diffusion tensor imaging. J Oral Rehabil 2022; 49: 608-615.