公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

講演情報

ポスター発表

現地発表

教育

2024年7月7日(日) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-123] 歯科診療に起因する歯科医師の職業性・騒音性難聴を予防する

*奥 由里1、水頭 英樹1、藤本 けい子1、永尾 寛1、市川 哲雄1 (1. 徳島大学大学院医歯薬学研究部口腔顎顔面補綴学分野)

[Abstract]
【目的】
 補綴歯科医は,診療室や技工室など騒音の生じる環境下で治療・技工をおこなっている.特に新型コロナ感染蔓延により患者と医療従事者の双方に感染意識型が向上したことによって,口腔外バキューム装置の設置が不可欠となっている.口腔外バキュームは歯科診療時に生じる飛沫を吸入し感染防止に役立つ反面,歯科医師の近くで大きな音を発生する.また,治療に伴い発生する騒音は歯科医師の職業性・騒音性難聴との関連が示唆されている1).本研究では口腔外・口腔内バキュームを使用する際に,術者の左耳の位置で労働安全衛生規則に準じて85 dB以下となる条件を明らかにすることを目的とする.
【方法】
 歯科用頭部マネキンを診療室内のデンタルチェアで仰臥位治療するヘッドの位置に設置した.マネキンの顔面正中から左側10 ㎝で左側耳孔相当部から床に垂直に15 ㎝の高さの位置を中心点として水平(0°)から直上(90°)まで30°ごと,10 ㎝~40 ㎝まで10 ㎝ごと計17カ所で騒音を計測した.口腔外バキューム(フリーアーム・アルティオ‐T,東京技研,東京)は開口部を床と水平に,中心点から患者の左側10 ㎝の位置に設置した.┌6の注水下での支台歯形成を想定して歯列の舌側にタービンを,頬側に口腔内バキュームを設置した.各点の騒音を精密騒音計(NL-52,リオン,東京)で,3分間測定した.測定条件は,①口腔外バキュームのみ,②口腔内バキューム+タービン使用,③口腔外バキューム+口腔内バキューム+タービン使用の3条件とした.
【結果と考察】
 口腔外バキュームのみの条件では中心点から離れるほど,測定点が上方にいくほど等価騒音レベルは低下する傾向があった.口腔外・口腔内バキュームを併用すると中心点から30 ㎝以上離れないと85 dB以下とならず,水平方向や直上方向がより騒音レベルが高い傾向がみられた.以上より,タービンを使用する際には患者の口腔から少なくとも30 cm以上離れて治療することで術者の歯科治療による騒音障害の防止基準以下にできることが示唆された.
【参考文献】
 1) J. C. Hartland, G. Tejada, E. J. Riedel et al. Systematic review of hearing loss in dentalprofessionals. Occupational Medicine 2023; 73: 391-397.