公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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現地発表

有床義歯

2024年7月6日(土) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-29] 熱溶解積層法3Dプリンタで造形したPEEKと義歯床用流し込みレジンの接着評価

*張 君瑋1、羽田 多麻木2、Ha Roubing3、副田 弓夏1、宇尾 基弘3、金澤 学2、水口 俊介1 (1. 東京医科歯科大学大学院 高齢者歯科学分野、2. 東京医科歯科大学大学院 口腔デジタルプロセス学分野、3. 東京医科歯科大学大学院 先端材料評価学分野)

[Abstract]
【目的】
 耐疲労性,耐熱性,耐磨耗性に優れた熱可塑性ポリマーであるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)は,切削加工だけでなく熱溶解積層法(FDM)による造形が可能となった.そこで,カスタムプレートによるフルデジタル部分床義歯製作方法に金属材料の代替としてFDM PEEKフレームワークを応用することができれば,金属価格の高騰,金属アレルギー,および審美性の観点から有用であると考えられる.しかし,FDM PEEKと義歯床用流し込みレジンとの接着強度に関しては,未だ明らかになっていない.そこで,本研究は,FDM PEEKと義歯床用流し込みレジンの接着強さを表面処理と接着条件で評価することである.
【方法】
 FDM方式の3Dプリンタ(FUNMAT HT, INTAMSYS)を用いて,PEEKフィラメント(Daicel-evonik, Hotty Polymer)をプリントした.FDM PEEKの接着面に3種類の表面処理:①無し,②サンドブラスト処理(0.4 MPa, 粒径50 μm),③サンドペーパー研磨(#600,注水下1分間)を行った.接着条件は接着剤塗布:①有り,②無しの2種類とし,レジンブロック用プライマー(HCプライマー,松風)を用いた(表1).続いて,FDM PEEKの接着面上に,義歯床用流し込みレジン(フィットレジン,松風)を流し込み重合後,試験片が完成した.せん断試験は,万能試験機(AG-Xplus, 島津製作所)にてクロスヘッド速度1 mm/minで荷重を負荷した.せん断接着強さは,最大荷重を接着面積で除して求めた.統計解析は二元配置分散分析を行った後,Tukeyの多重比較を行った(α=0.05).
【結果と考察】
 表面処理について,サンドブラスト処理はサンドペーパー研磨と比較して有意に高い接着強さが認められた.これは,FDM PEEKの表面粗さに起因する可能性が示唆された. 接着処理について,接着剤有りに有意に高いせん断接着強さが認められた.メタクリル酸メチル(MMA)含有の接着性レジンセメントはPEEKに対して高い接着強さが得られるとの報告のように,本研究においても,接着剤含有のMMAによりFDM PEEKとのなじみが向上したことでせん断接着強さが向上した可能性が示唆された.よって,FDM PEEKと義歯床用流し込みレジンの接着には,サンドブラスト処理と接着剤の使用が有効であることが示唆された.