公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

講演情報

ポスター発表

現地発表

クラウンブリッジ

2024年7月6日(土) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-61] AIによる歯冠補綴装置の設計ソフトの有用性

*井上 絵理香1、清宮  一秀1、山谷 勝彦1、足立 拓也2、川西 範繁2、星 憲幸2、木本 克彦2 (1. 神奈川歯科大学歯科診療支援学講座歯科技工学分野、2. 神奈川歯科大学歯科補綴学講座クラウンブリッジ補綴学分野)

[Abstract]
【目的】
 近年,急成長を遂げ日常生活に浸透する人工知能(Artificial Intelligence:以下AI)は,歯科分野にも活用が始まり,歯科技工において一部の歯冠補綴装置の設計が可能となった.
 一方,厚生労働省の調べによると1)就業歯科技工士の54.1%が50歳以上で,資格取得人数は2012年以降3万4千人代を維持していたが,2022年の調査では5.4%人数が減少しており今後も減少が見込まれ,歯科技工の効率化が必須となると推測される.
 そこで本研究では,AIを使用した歯冠補綴装置の設計したデータと、歯科技工士が製作するデータと比較することで違いや特徴を検証し,AIによる設計が臨床に効率的に適用できうるのか検証したので報告する.
【方法】
 ¥bdvabr¥6のクラウン模型データを用いて Dentbird(imagoworks,韓国)でAIによる設計データと,歯科技工士が修正したデータをGeomagic Control X(Deta Design,愛知)を用いて比較し(図1),AIによる歯冠補綴装置設計の特徴を明らかにした.尚,歯科技工士の修正は通常の臨床でのクオリティに近づけるよう,AIが提案したデータを修正し完成とした.
【結果と考察】
 完成したデータをGeomagic Control Xで重ね合わせ比較したところ,形態に大きな差異はなく,歯科技工士が修正した設計データをAi設計のデータと比較すると咬合接触点数や付与する部位,コンタクトポイント周辺の豊隆の作りに若干の差は認められた(図2)が,AIの設計は臨床上のエラー要因にはならない、十分許容範囲内の歯冠形態付与がされている形態であった.
 AIの設計はデータに基づいてパターンを学習し,一般的なケースに対して効果的な設計をすることは可能であるが,微細な個別要素に関しては限界がある.これに対し歯科技工士は,患者の口腔内状態や咬合の特性も加味して設計を行うため,AIの設計と異なるデータになると考えられる.
 したがって,AI設計では一定の精度と速度を補助が可能で,更に歯科技工士が各症例に適した設計に修正することで,設計の合理化に繋がり一定以上の品質かつ効率的な設計が可能であった.以上よりAIによる歯冠補綴装置の設計ソフトは臨床的に有用で効率的であると示唆された.
【参考文献】
 1) 令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況 厚生労働省