公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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バイオロジー・バイオマテリアル

2024年7月7日(日) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-94] 1細胞解析を応用した骨髄由来間葉系幹細胞の一つであるCAR細胞の起源探索

*窪木 慎野介1,2、大野 充昭1,3、北川 若奈1,2、土佐 郁恵2、石橋 啓3、ダントゥアン アイン1,2、大橋 俊孝1、窪木 拓男2,3 (1. 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 分子医化学分野、2. 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 インプラント再生補綴学分野、3. 岡山大学病院 歯科・口腔インプラント科部門)

[Abstract]
【目的】
 骨髄由来間葉系幹細胞の一つであるCxcl12 Abundant Reticular(CAR)細胞は,造血幹細胞ニッチと呼ばれる特別な微小環境を形成し,骨形成や造血機能の維持に重要な働きを担っていることが知られている.しかし,CAR細胞の起源については未だ不明な点が多い.そこで本研究では,1細胞解析(scRNA-seq)を用いて,大腿骨骨端部の二次骨化中心形成期に出現するCAR細胞の起源の探索を行ったので報告する.
【方法】
 生後7日目(P7)と13日目(P13)の野生型マウスの大腿骨骨端部の二次骨化中心,8週齢の野生型マウスの大腿骨骨髄を回収し,酵素処理後にセルソーターにて非血球系細胞を分離し,cDNAライブラリーを作製し,scRNA-seqを行った.データ解析には,解析ソフトSeurat 4.0.6.を用い,次元削減・クラスター解析後,発現変動遺伝子(DEG)解析を行った.また,Velocity 解析をするためにRNAのUnspliced/Spliced比からRNA速度を算出し,疑似時間を推測し,分化経路を推定した.
【結果と考察】
 クラスター解析の結果,Sox9Col2a1共陽性の間葉系細胞(主要軟骨細胞)とCol1a1陽性の間葉系細胞,Cxcl12陽性のCAR細胞,血管内皮細胞の4つのクラスターに大別された.CAR細胞は,8週齢のマウス由来の大腿骨骨髄細胞では大半を占め,P13の二次骨化中心細胞にも若干存在した.また,興味深いことに,P7及び P13 において,主要軟骨細胞のクラスターとは別に,Cxcl12 陽性の CAR 細胞と分化経路解析が可能な Mmp13を発現する軟骨細胞(Mmp13陽性軟骨細胞)が存在した(図1).これらの細胞集団に対して,Velocity 解析を行ったところ P7,P13のMmp13陽性軟骨細胞からCAR 細胞への分化経路が推測された(図2).次に,Mmp13陽性軟骨細胞の特徴を理解するため,主要軟骨細胞とDEG を用いて,エンリッチメント解析を行った.その結果,石灰化や基底膜コラーゲンをコードしている遺伝子の発現が有意に変動していることが明らかとなった.以上より,マウス長管骨の成長過程においては,石灰化や基底膜コラーゲンをコードした遺伝子の発現が異なるMmp13を高発現している特殊な軟骨細胞が,CAR細胞の起源細胞の一つである可能性が示唆された.