公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

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2024年7月7日(日) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール B)

[P-97] マウスにおける咀嚼動態の相違が耐糖能に与える影響

*菅 悠希1、石川 啓延1、豊下 祥史1、横関 健治1、髙田 紗理1、川西 克弥1、伊東 由紀夫2、高崎 英仁2、山中 隆裕2、安斎 隆3、越野 寿1 (1. 北海道医療大学歯学部咬合再建補綴学分野、2. 東北・北海道支部、3. 東京支部)

[Abstract]
【目的】
 近年,糖尿病の患者数が増加しており対策が急務である.耐糖能異常は2型糖尿病罹患の兆候であり,発症には肥満,食習慣,身体的活動の低下が挙げられる.食習慣は種々の因子を含んでおり,咀嚼はそこに関わる重要な要素の一つである.咀嚼は栄養摂取行動の一部ではあるが,咀嚼が栄養の吸収と関連する種々の機能と関連することが報告されている.本研究では飼料性状の変更による咀嚼動態の相違が耐糖能に与える影響について検討を行った.
【方法】
 実験動物には4週齢C57BL/6J系雄性マウス20匹を用いた.経口・経管両用栄養剤(エンシュアリキッド,株式会社明治)で飼育する群(非咀嚼群)と同一の栄養成分からなる固形飼料で飼育する群(咀嚼群)を設定した.各々の飼料で12週間飼育した後,24時間絶食をさせ,糖負荷試験を行った.その後心臓より血液を採取し,ELISA用いて血清中のアディポネクチン濃度,レプチン濃度(和光純薬株式会社)を測定した. 統計処理はSPSSを用いてMann WhitneyのU検定を行い,有意水準p < 0.05とした.本実験は北海道医療大学動物実験倫理委員会の承認を得て行った(承認番号21-49号).
【結果と考察】
 糖負荷後120分における血糖値は咀嚼群で86.6 ± 12.6 mg/dL,非咀嚼群で97.9 ± 11.6 mg/dLとなり非咀嚼群が有意に高い値を示した(図).アディポネクチン濃度は咀嚼群で55.9±16.6 ng/ml,非咀嚼群32.1±19.1 ng/mlであり咀嚼群で有意に高い値を示した.レプチン濃度は咀嚼群が1.10±0.48 ng/ml,非咀嚼群が1.23±0.61 ng/mlであり有意な差を認めなかった.
 糖尿病では初期症状として耐糖能異常が起こる.耐糖能異常の評価法として糖負荷試験が広く使われている.本研究の結果により,咀嚼が耐糖能に影響を与えたと考えられる.これまで我々は第125回学術大会において咀嚼がインスリン分泌を上昇させることを報告した.さらに本研究で測定したアディポネクチンとレプチンはインスリン抵抗性に関わる因子であり,咀嚼はアディポネクチンにも影響を与えた.耐糖能異常はインスリンの供給不全と感受性低下により発症するが,咀嚼はその両方を改善することで耐糖能にも影響を与えたと考えられる.
 今後、糖尿病モデルマウスで咀嚼が耐糖能の改善に影響を与えるか検討する予定である.