公益社団法人日本補綴歯科学会第133回学術大会 / The 14th Biennial Congress of the Asian Academy of Prosthodontics (AAP)

講演情報

特別講演

現地発表+ライブ配信(オンデマンド配信あり)

特別講演(共通研修②)
人生の終い方~最終ステージの伴走者としての在り方~

2024年7月7日(日) 13:10 〜 14:10 第1会場 (幕張メッセ国際会議場 2F コンベンションホール A)

座長:古屋 純一(昭和大)

ライブ配信のご視聴はこちら

[SL] 人生の終い方~最終ステージの伴走者としての在り方~

*佐々木 淳1 (1. 医療法人社団悠翔会)

[Abstract]
 もともと寝たきりで摂食障害あり.数日前からの軽度の微熱と軽度の動脈血酸素飽和度の低下はおそらく誤嚥性肺炎.しかしこの肺炎は果たして「病気」なのか.
 全介助で慎重に食介助をしながら食後に吸引.それでも口腔内の食物残渣や唾液が気管に垂れ込むことは完全には防げない.一方,免疫反応も低下して肺炎になっても熱も出ない.咳もなければ息苦しさも訴えない.口腔内細菌が肺胞から体内に侵入することを拒もうともしていないようにも思える.
 下気道の部分的な病態を切り取ればこれは誤嚥性肺炎だ.しかし肺は肺だけで存在しているわけではありません.その人の全体像を見た時に,決して肺の具合が悪いから状態が悪化しているわけではないことがわかる.
 摂食障害,低栄養,サルコペニア,心肺機能の低下,嚥下反射・咳反射の低下,唾液の分泌低下と口腔内の自浄能力の低下,覚醒レベルの低下・・・加齢に伴う不可逆な変化により恒常性が失われ,生命活動の維持を困難にしていく.誤嚥性肺炎は全体的衰弱の一側面でもある.
 もちろん,それを病気として診断し,補液と酸素を投与しながら最後まで抗菌薬で戦う,そんな選択もあっていい.しかし口腔内細菌から身を守ってきた複数のバリアが機能を喪失し,「食べる」という生存のための根源的行動に対する欲求すら失われた状況にフォーカスすれば,これは老衰ということになるのかもしれない.
 病気なのか,老化なのか.生病老死の全体像を意識しながら,その人にとって最善の選択をともに考え続けることができる私たちでありたい.

トピックス
●加齢
●老衰
●意思決定支援