[0058] 在宅における運動プログラム継続に対するセルフ・エフィカシーへの介入の影響―第2報―
キーワード:高齢者, 在宅, 自己効力感
【はじめに,目的】高齢者の在宅における運動プログラム(以下 運動)の継続率は低く,運動を継続するのは困難であるといわれている。先行研究より運動の継続には多くの要因が指摘されているが,その中で比較的強い要因の1つにセルフ・エフィカシー(self-efficacy:以下SE)がある。SEとは,「ある結果を生み出すために必要な行動を,どの程度うまく行うことができるのかという個人の確信の程度」と定義される。運動において,SEの低下は運動の継続を妨げる一因になり得るといわれている。本研究は,SEへ介入を行い,運動継続との関係を検討することを目的とした。我々は,第48回日本理学療法学術大会で,3ヶ月時点の研究を途中経過として発表した。3ヶ月ではSEに有意な変化はなく,両群とも運動を継続できていた。今回は,継続が困難になるといわれている3ヶ月以降5ヶ月までの運動継続とSE介入の関連について報告する。
【方法】対象者は初回測定に参加した健常高齢者26名中,身体活動量が高活動群に分類された4名を除く22名とし,ランダムに対照群11名(男性7・女性4名,年齢76.1±3.92歳)と介入群11名(男性2名・女性9名,年齢74.7±6.81歳)に群分けした。対象者は運動を5ヶ月間実施した。測定は全4回行い,初回,1ヶ月後,3ヶ月後,5ヶ月後に実施した。初回は運動を行うための動機づけを行い,さらに介入群にはSEへの介入方略を指導した。測定は,身体機能として10M最大歩行時間,Functional Reach,Timed Up and Go Test,30秒椅子立ち上がりテスト(以下CS-30テスト),片脚立位時間を測定した。SEの測定として,身体活動セルフ・エフィカシー尺度,運動セルフ・エフィカシー尺度を測定した。また運動の実施回数(以下 実施回数)は,健康カレンダーを配布し,運動を実施した際に記入するように指導した。その他運動ソーシャルサポート,環境要因尺度,国際標準化身体活動質問票,MMSEなどを測定した。運動課題はウォーキング(5日/週),筋力増強運動(2日/週),バランス運動(2日/週)を指導した。具体的には椅子に腰掛けて行う運動,片脚立位などの運動を指導した。SEへの介入方略は,目標設定(適切な目標で,対象者の達成感を蓄積),セルフモニタリング(運動実施記録,自己の気づきを高める),認知再体制化(視点・思い込みを変えさせる)を実施した。実施回数は全20週を4週間毎の5回に分け,それぞれ実施回数をカウントし解析した。またSEや身体機能測定は初回・1・3・5ヶ月後までの4回のデータを解析した。これらは,測定時点間の差をみるためTukeyの検定・Friedmanの検定を行い,さらに群間での差をみるため,対応のないt検定・Mann-Whitneyの検定を行なった。有意水準はp<0.05とし,統計ソフトはSPSS 16.0Jを使用した。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は研究実施施設の倫理委員会で承認された。対象者には,書面および口頭にて説明し,同意を得て行った。
【結果】5ヶ月間実施した結果,脱落者5名(22.7%)となり介入群8名,対照群9名となった。初回・1・3・5ヶ月の測定時において,実施回数は測定時点間や群間による有意差はなかった。2つのSE尺度の得点は,測定時点間,群間ともに有意な差はなかった。身体機能では,測定時点間では5ヶ月と初回の比較にてCS-30テスト(p=0.03),10M最大歩行時間(p=0.03)に有意差があった。しかし,どの項目でも群間での有意差はなかった。
【考察】Bandura(1977)は,SEは行動の先行要因であると述べている。つまり,運動継続に関するSEが高いほど,意欲的に運動に取り組み,運動の実施回数を維持できることを示唆している。本研究では,初回・1・3・5ヶ月にSEを測定した。1ヶ月では,期間が短く介入の効果や対照群でのSE低下はみられない。3ヶ月でも両群でSE得点が維持されているため運動の実施回数や群間に有意な差がなかったと考えられる。3ヶ月以降は運動継続が困難であることより,対照群ではSEが低下,運動実施回数が低下していくと仮説を立てた。しかし,5ヶ月時点で両群ともにSEが低下せず,実施回数を維持できている。SEは運動中断が続いた後に低下するといわれているが,5ヶ月間ではSEを低下させる程の期間の運動中断がなかったと考えられる。また身体機能のフィードバックは各測定時,両群に行なった。本研究ではCS-30テスト等は時点間で記録が良くなっているため,成功体験となり,SEの維持に作用したのではないかと考えられる。今後は,より長期間の介入やフォローアップ期間でのSEの変化を比較することにより,運動継続やSEの影響を明らかにすることも必要である。
【理学療法学研究としての意義】健康増進分野における理学療法士の役割や重要性は増している。本研究は健康教室などで運動を指導する際に継続して実施するための一助となると考える。
【方法】対象者は初回測定に参加した健常高齢者26名中,身体活動量が高活動群に分類された4名を除く22名とし,ランダムに対照群11名(男性7・女性4名,年齢76.1±3.92歳)と介入群11名(男性2名・女性9名,年齢74.7±6.81歳)に群分けした。対象者は運動を5ヶ月間実施した。測定は全4回行い,初回,1ヶ月後,3ヶ月後,5ヶ月後に実施した。初回は運動を行うための動機づけを行い,さらに介入群にはSEへの介入方略を指導した。測定は,身体機能として10M最大歩行時間,Functional Reach,Timed Up and Go Test,30秒椅子立ち上がりテスト(以下CS-30テスト),片脚立位時間を測定した。SEの測定として,身体活動セルフ・エフィカシー尺度,運動セルフ・エフィカシー尺度を測定した。また運動の実施回数(以下 実施回数)は,健康カレンダーを配布し,運動を実施した際に記入するように指導した。その他運動ソーシャルサポート,環境要因尺度,国際標準化身体活動質問票,MMSEなどを測定した。運動課題はウォーキング(5日/週),筋力増強運動(2日/週),バランス運動(2日/週)を指導した。具体的には椅子に腰掛けて行う運動,片脚立位などの運動を指導した。SEへの介入方略は,目標設定(適切な目標で,対象者の達成感を蓄積),セルフモニタリング(運動実施記録,自己の気づきを高める),認知再体制化(視点・思い込みを変えさせる)を実施した。実施回数は全20週を4週間毎の5回に分け,それぞれ実施回数をカウントし解析した。またSEや身体機能測定は初回・1・3・5ヶ月後までの4回のデータを解析した。これらは,測定時点間の差をみるためTukeyの検定・Friedmanの検定を行い,さらに群間での差をみるため,対応のないt検定・Mann-Whitneyの検定を行なった。有意水準はp<0.05とし,統計ソフトはSPSS 16.0Jを使用した。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は研究実施施設の倫理委員会で承認された。対象者には,書面および口頭にて説明し,同意を得て行った。
【結果】5ヶ月間実施した結果,脱落者5名(22.7%)となり介入群8名,対照群9名となった。初回・1・3・5ヶ月の測定時において,実施回数は測定時点間や群間による有意差はなかった。2つのSE尺度の得点は,測定時点間,群間ともに有意な差はなかった。身体機能では,測定時点間では5ヶ月と初回の比較にてCS-30テスト(p=0.03),10M最大歩行時間(p=0.03)に有意差があった。しかし,どの項目でも群間での有意差はなかった。
【考察】Bandura(1977)は,SEは行動の先行要因であると述べている。つまり,運動継続に関するSEが高いほど,意欲的に運動に取り組み,運動の実施回数を維持できることを示唆している。本研究では,初回・1・3・5ヶ月にSEを測定した。1ヶ月では,期間が短く介入の効果や対照群でのSE低下はみられない。3ヶ月でも両群でSE得点が維持されているため運動の実施回数や群間に有意な差がなかったと考えられる。3ヶ月以降は運動継続が困難であることより,対照群ではSEが低下,運動実施回数が低下していくと仮説を立てた。しかし,5ヶ月時点で両群ともにSEが低下せず,実施回数を維持できている。SEは運動中断が続いた後に低下するといわれているが,5ヶ月間ではSEを低下させる程の期間の運動中断がなかったと考えられる。また身体機能のフィードバックは各測定時,両群に行なった。本研究ではCS-30テスト等は時点間で記録が良くなっているため,成功体験となり,SEの維持に作用したのではないかと考えられる。今後は,より長期間の介入やフォローアップ期間でのSEの変化を比較することにより,運動継続やSEの影響を明らかにすることも必要である。
【理学療法学研究としての意義】健康増進分野における理学療法士の役割や重要性は増している。本研究は健康教室などで運動を指導する際に継続して実施するための一助となると考える。