第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 神経理学療法 ポスター

脳損傷理学療法2

Fri. May 30, 2014 10:50 AM - 11:40 AM ポスター会場 (神経)

座長:笠原剛敏(日本私立学校振興共済事業団東京臨海病院リハビリテーション室)

神経 ポスター

[0097] 当院の脳卒中地域連携クリティカルパスを用いた現状と特徴

山口順子1, 三谷祐史1, 曽野友輔1, 井澤大樹1, 宮嵜友和3, 細江浩典1, 服部誠2 (1.名古屋第二赤十字病院リハビリテーション課, 2.名古屋第二赤十字病院神経内科, 3.医療法人桂名会木村病院)

Keywords:脳卒中, 地域連携, クリティカルパス

【はじめに,目的】
急性期病院から回復期リハビリテーション(以下,リハビリ)病院を経由して在宅へ至る道筋として地域連携クリティカルパス(以下,地域連携パス)が打ち出されている。脳卒中の地域連携パスは2007年の医療法改正で定められた。近年では各地域での地域連携パスの導入結果が報告されている。当院でも2008年から脳卒中の地域連携パスを使用している。今回,急性期病院の立場から,回復期リハビリ病院へ転出した患者の機能予後や転帰を検証し,既に報告されている他の地域と比較しその差異について検証することを目的とした。
【方法】
対象は2012年1月から2012年12月の1年間に当院でリハビリを施行し,脳卒中地域連携パスを用いて回復期リハビリ病院へ転院し,回復期リハビリ病院からパスを回収できた259名とした。今回,回復期リハビリ病院を退院後に,回収された地域連携パスを後方視的に調査した。調査項目は各病型における年齢,当院ならびに回復期リハビリ病院の在院日数,回復期リハビリ病院の入退院時FIM得点とし,FIM利得(退院時FIM―入院時FIM)とFIM効率(FIM利得/入院日数)を算出した。また,当院退院時の嚥下障害の有無,回復期リハビリ病院からの自宅復帰率を算出した。これらのデータを全国回復期リハビリ病棟連絡協議会の年次報告のデータと比較した。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に則り実施した。地域連携パスの運用ならびにデータ解析には,対象者および家族に本研究の主旨を説明し書面にて同意を得た。
【結果】
対象患者は259名(男性137名・女性122名)であり,平均年齢は73.1±12.3歳(32~95歳)で,発症病型は脳梗塞154名,脳出血85名,くも膜下出血(以下,SAH)20名であった。当院の平均在院日数は全体では30.8±16.2日,脳梗塞28.5±14.9日,脳出血30.4±13.8日,SAH 51.0±21.2日,回復期リハビリ病院の平均在院日数は全体では67.5±45.2日,脳梗塞70.2±49.5日,脳出血63.3±33.4日,SAH 64.6±54.1日であった。回復期リハビリ病院入院時の平均FIM得点は全体では70.3±31.2点,脳梗塞74.4±30.1点,脳出血65.0±31.9点,SAH 62.1±29.0点,回復期リハビリ病院退院時の平均FIM得点は全体では85.1±34.5点,脳梗塞87.6±33.1点,脳出血81.6±36.5点,SAH 80.1±36.5点であった。また,FIM利得は全体では14.9±17.4点,脳梗塞14.9±17.0点,脳出血14.9±18.2点,SAH 14.4±17.7点,FIM効率は全体では0.23±0.36,脳梗塞0.24±0.30,脳出血0.21±0.36,SAH 0.24±0.69であった。当院退院時に嚥下障害があるものは全体で37.8%,脳梗塞33.8%,脳出血44.7%,SAH40.0%であった。自宅復帰率は全体で52.1%,脳梗塞57.1%,脳出血44.7%,SAH 45.0%であった。
【考察】
2012年度全国回復期リハビリ病棟連絡協議会の年次報告のデータでは回復期リハビリ病院入院までの平均日数は36.3日,回復期リハビリ病院平均在院日数89.4日,回復期リハビリ病院入院時FIM得点は68.4点,退院時FIM得点は85.8点,平均FIM利得17.4点,平均FIM効率0.2,自宅復帰率67.8%と報告されている。本研究では,回復期リハビリ病院入院までの日数は同等だが,回復期リハビリ病院の在院日数が短かった。また,回復期リハビリ病院入院時のFIM得点が高値だった。一方ではFIM効率には差がみられなかった。このことから回復期リハビリ病院入院時のFIM得点の高さが,在院日数の短縮に関係している可能性がある。これは当院から回復期リハビリ病院に転院する患者が全国平均よりも良好なADLであることを示す。この理由の一つに,当院の他職種間カンファレンス開催の影響を考えた。カンファレンスでは,患者の現状や回復期リハビリ病院が適応か否かについて検討をし,適応でないと考えられた患者は直接介護転院となることがある。よって,当院から紹介する時点で,回復期リハビリ病院の適応になりにくい重症者は転院していない可能性がある。
【理学療法学研究としての意義】
地域連携パスを用いることで患者は急性期から回復期リハビリ病院へ至る一貫した治療を受けられるといわれる。そのため,地域の特徴を理解し,地域連携パスに必要な情報を明示できるようにすることは,急性期,回復期ともに良質な理学療法を展開するために必要だと考える。