[0153] 慢性閉塞性肺疾患患者の健康関連QOLに影響を及ぼす因子の検討
Keywords:慢性閉塞性肺疾患, 生活背景, 身体特性
【はじめに,目的】
COPD患者の健康関連QOLは,予後規定因子にもなりうるとされており,近年重要視されている。よって,健康関連QOLへの影響因子を調査することは重要なことであり,健康関連QOLを改善させるための理学療法の介入手段を検討する上でも重要となる。そこでCOPD患者の健康関連QOLへの影響因子について生活背景や身体特性に着目し検討した。
【方法】
対象は,研究の参加に同意が得られた安定期COPD患者57名である。対象の内訳は男性53名,女性4名,平均年齢73.2±10.1歳,1秒率(FEV1.0%)49.6±13.3%であった。修正MRC息切れスケール(mMRC)は,Grade0が3名,Grade1が20名,Grade2が23名,Grade3が7名,Grade4が4名であり,GOLD重症度分類は,1期が6名,2期が24名,3期が19名,4期が8名であった。なお,対象の選定においては,重篤な内科的合併症の有する者,歩行に支障をきたすような骨関節疾患を有する者,脳血管障害の既往がある者,その他歩行時に介助を有する者,理解力が不良な者,測定への同意が得られなかった者は対象から除外した。
測定項目は,COPD患者57名に対し,健康関連QOLテストとしてSt George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ),生活背景,年齢,Body Mass Index(BMI),mMRC,呼吸機能検査,6分間歩行距離(6MWD),長崎大学呼吸器疾患ADL質問票(NRADL)を評価した。生活背景の調査項目は,仕事,配偶者,同居家族,飲酒,喫煙,運動習慣,車の運転,合併症,HOTの使用,住環境,呼吸器疾患での入院の有無,呼吸器疾患の増悪回数について質問票にて調査した。
統計学的解析は,SGRQの中央値39.7で2群に分類し,SGRQが39.7未満群(QOL保持群)28名と,SGRQが39.7以上群(QOL低下群)29名で,各測定項目を分析した。生活背景において,名義尺度はχ2独立性の検定を行い,順序尺度はMann-Whitney検定を行い2群間の関係を分析した。年齢,BMI,呼吸機能,6MWD,NRADLは,独立サンプルによるt検定を行い,mMRCはMann-Whitney検定を行い2群間の特性を分析した。また,SGRQに影響を及ぼす規定因子の抽出は,従属変数をSGRQ,独立変数を有意な関連が認められた項目とし,ステップワイズ法による重回帰分析を用いて分析した。統計解析にはSPSS ver.11.0Jを使用し,統計学的有意水準は5%とした。データ表記は平均値±標準偏差と中央値で示した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,ヘルシンキ宣言に沿った研究として実施した。対象への説明と同意は,研究の概要を口頭にて説明後,研究内容を理解し,研究参加の同意が得られた場合,書面にて自筆署名で同意を得た。その際,参加は任意であり,測定に同意しなくても何ら不利益を受けないこと,また同意後も常時同意を撤回できること,撤回後も何ら不利益を受けることがないことを説明した。
【結果】
生活背景では,QOL保持群とQOL低下群において,運動習慣(p=0.02),HOTの使用(p=0.01),家外環境(p=0.01),呼吸器疾患での入院の有無(p=0.04),呼吸器疾患の増悪回数(p<0.01)に有意な関連が認められた。身体特性では,mMRC(1vs 2;p<0.001),FVC(2742.8±904.0vs 2389.3±661.5ml;p=0.03),%FVC(87.4±20.6vs 75.7±19.2%;p<0.01),FEV1.0(1556.4±645.4vs 1054.4±483.5ml;p<0.01),%FEV1.0(63.4±16.9vs 46.3±22.3%;p<0.01),FEV1.0%(55.9±9.6vs 43.6±13.8%;p<0.001),6MWD(433.6±121.1vs 294.4±133.0m;p<0.001),NRADL(速度(p<0.001),息切れ(p<0.001),酸素(p=0.01),連続(p<0.01),合計(p<0.001))に有意差が認められた。
ステップワイズ分析の結果,SGRQに影響を及ぼす規定因子は,mMRC(β=0.42,p<0.001),運動習慣(β=-0.33,p<0.01),呼吸器疾患での入院の有無(β=0.23,p<0.01),% FEV1.0(β=-0.22,p=0.03)であった(R2=0.63,p<0.001)。
【考察】
有意な関連が認められた項目を独立変数,SGRQを従属変数としてステップワイズ分析した結果,mMRC,運動習慣,呼吸器疾患での入院の有無,% FEV1.0が規定因子として抽出され,6MWDは除外された。よってCOPDの呼吸リハビリテーションでは,6MWD向上後の日常的な運動習慣の定着が重要であり,そのことで呼吸困難増悪の予防,急性増悪の予防を図っていくことがQOL保持に重要であることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
COPD患者のQOLを保持するためには,気流制限の重症化の予防と同様に,運動習慣の定着が重要である。そのためには患者の運動へのアドヒアランスを高める教育・指導等の包括的呼吸リハビリテーションが必要である。その重要性が示された有意義な研究となった。
COPD患者の健康関連QOLは,予後規定因子にもなりうるとされており,近年重要視されている。よって,健康関連QOLへの影響因子を調査することは重要なことであり,健康関連QOLを改善させるための理学療法の介入手段を検討する上でも重要となる。そこでCOPD患者の健康関連QOLへの影響因子について生活背景や身体特性に着目し検討した。
【方法】
対象は,研究の参加に同意が得られた安定期COPD患者57名である。対象の内訳は男性53名,女性4名,平均年齢73.2±10.1歳,1秒率(FEV1.0%)49.6±13.3%であった。修正MRC息切れスケール(mMRC)は,Grade0が3名,Grade1が20名,Grade2が23名,Grade3が7名,Grade4が4名であり,GOLD重症度分類は,1期が6名,2期が24名,3期が19名,4期が8名であった。なお,対象の選定においては,重篤な内科的合併症の有する者,歩行に支障をきたすような骨関節疾患を有する者,脳血管障害の既往がある者,その他歩行時に介助を有する者,理解力が不良な者,測定への同意が得られなかった者は対象から除外した。
測定項目は,COPD患者57名に対し,健康関連QOLテストとしてSt George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ),生活背景,年齢,Body Mass Index(BMI),mMRC,呼吸機能検査,6分間歩行距離(6MWD),長崎大学呼吸器疾患ADL質問票(NRADL)を評価した。生活背景の調査項目は,仕事,配偶者,同居家族,飲酒,喫煙,運動習慣,車の運転,合併症,HOTの使用,住環境,呼吸器疾患での入院の有無,呼吸器疾患の増悪回数について質問票にて調査した。
統計学的解析は,SGRQの中央値39.7で2群に分類し,SGRQが39.7未満群(QOL保持群)28名と,SGRQが39.7以上群(QOL低下群)29名で,各測定項目を分析した。生活背景において,名義尺度はχ2独立性の検定を行い,順序尺度はMann-Whitney検定を行い2群間の関係を分析した。年齢,BMI,呼吸機能,6MWD,NRADLは,独立サンプルによるt検定を行い,mMRCはMann-Whitney検定を行い2群間の特性を分析した。また,SGRQに影響を及ぼす規定因子の抽出は,従属変数をSGRQ,独立変数を有意な関連が認められた項目とし,ステップワイズ法による重回帰分析を用いて分析した。統計解析にはSPSS ver.11.0Jを使用し,統計学的有意水準は5%とした。データ表記は平均値±標準偏差と中央値で示した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,ヘルシンキ宣言に沿った研究として実施した。対象への説明と同意は,研究の概要を口頭にて説明後,研究内容を理解し,研究参加の同意が得られた場合,書面にて自筆署名で同意を得た。その際,参加は任意であり,測定に同意しなくても何ら不利益を受けないこと,また同意後も常時同意を撤回できること,撤回後も何ら不利益を受けることがないことを説明した。
【結果】
生活背景では,QOL保持群とQOL低下群において,運動習慣(p=0.02),HOTの使用(p=0.01),家外環境(p=0.01),呼吸器疾患での入院の有無(p=0.04),呼吸器疾患の増悪回数(p<0.01)に有意な関連が認められた。身体特性では,mMRC(1vs 2;p<0.001),FVC(2742.8±904.0vs 2389.3±661.5ml;p=0.03),%FVC(87.4±20.6vs 75.7±19.2%;p<0.01),FEV1.0(1556.4±645.4vs 1054.4±483.5ml;p<0.01),%FEV1.0(63.4±16.9vs 46.3±22.3%;p<0.01),FEV1.0%(55.9±9.6vs 43.6±13.8%;p<0.001),6MWD(433.6±121.1vs 294.4±133.0m;p<0.001),NRADL(速度(p<0.001),息切れ(p<0.001),酸素(p=0.01),連続(p<0.01),合計(p<0.001))に有意差が認められた。
ステップワイズ分析の結果,SGRQに影響を及ぼす規定因子は,mMRC(β=0.42,p<0.001),運動習慣(β=-0.33,p<0.01),呼吸器疾患での入院の有無(β=0.23,p<0.01),% FEV1.0(β=-0.22,p=0.03)であった(R2=0.63,p<0.001)。
【考察】
有意な関連が認められた項目を独立変数,SGRQを従属変数としてステップワイズ分析した結果,mMRC,運動習慣,呼吸器疾患での入院の有無,% FEV1.0が規定因子として抽出され,6MWDは除外された。よってCOPDの呼吸リハビリテーションでは,6MWD向上後の日常的な運動習慣の定着が重要であり,そのことで呼吸困難増悪の予防,急性増悪の予防を図っていくことがQOL保持に重要であることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
COPD患者のQOLを保持するためには,気流制限の重症化の予防と同様に,運動習慣の定着が重要である。そのためには患者の運動へのアドヒアランスを高める教育・指導等の包括的呼吸リハビリテーションが必要である。その重要性が示された有意義な研究となった。