[0172] 当院におけるクリニカルクラークシップ型臨床実習経験前後での学生の認識の変化
キーワード:臨床実習, クリニカルクラークシップ, アンケート
【目的】クリニカルクラークシップ(以下CC)の概念に従った臨床実習の効果について検討した報告は少ない。我々は,先行文献を参考にCC型臨床実習ガイドラインを作成し,理学療法部門全体で活用している。今回は,このガイドラインに従った臨床実習の効果を検証することを目的とした。
【方法】対象は同一年度に当院の臨床実習を経験した全ての学生5名とした。調査方法は,記述式のアンケートとした。アンケートの内容は,臨床実習経験前後での認識の変化を分析するために,実習開始時と終了時に「全くない」から「極めてある」までの7件法12項目にて調査し,臨床実習あるいは今後の臨床業務で不安に思うことも自由記述にて調査した。また,終了時に,CC型臨床実習の良かった点,改善すべき点についても自由記述にて調査した。終了時には開始時の記載内容は閲覧させなかった。
【倫理的配慮】全ての対象には本研究の趣旨を説明し,同意を得た上でアンケート調査を行った。その際,アンケート結果が臨床実習の指導内容や成績に影響を与えないことを特に入念に説明した。なお,本研究の趣旨説明とアンケート用紙の配布および回収は,臨床実習に直接関わらない当科の所属長が行い,当該年度の臨床実習が全て終了するまで所属長以外はアンケート結果を閲覧できないようにし,予め個人情報を削除した上でアンケート結果を閲覧,分析した。
【結果】7件法による臨床実習経験前後での認識の変化の調査では,CCに対する理解は全ての対象で向上した。理学療法治療・介入の知識は3名が向上,2名が変化なかった。理学療法治療・介入の技術は全ての対象で向上した。理学療法評価の知識は2名が向上,2名が変化なし,1名が低下した。理学療法評価の技術は4名が向上,1名が変化なかった。医学的知識は3名が向上,2名が変化なかった。書類作成のスキルは4名が向上,1名が変化なかった。社会人としてのマナーは2名が向上,2名が変化なし,1名が低下した。患者との人間関係構築の自信は2名が向上,3名が変化なかった。職員との人間関係構築の自信は全ての対象で向上した。理学療法士になりたいと思うかは2名で向上,3名で変化なかった。当院に就職したいと思うかは3名が向上,1名が変化なし,1名が低下した。自由記述による不安に思うことの変化では,概ね自信がついた者,臨床実習前後とも治療介入の不安がある者,対人関係から治療介入に不安の内容が変化した者,予後予測に対する不安が残った者,終了時にも患者との人間関係の不安が継続した者など様々であった。CC型臨床実習の良かった点では,多くの患者に接することで患者の個別性や多様な介入経験を積むことができた点や,セラピストと一緒に診療をするので不安が少なかった点が記載された。CC型臨床実習の改善すべき点では,評価の統合と解釈の経験が不足した点,セラピストにより介入方法に差異がある点,学生が主体的に診療を行う経験が不足している点が記載された。
【考察】7件法による臨床実習経験前後での認識の変化において,CCに対する理解は全ての対象で向上しており,CC型臨床実習の趣旨は概ね理解できたものと思われる。また,理学療法治療・介入の技術や理学療法評価の技術,職員との人間関係構築の自信の項目も向上した者が多く,職員と共に臨床を体験する実習形態の特徴をよく表した結果であると示唆された。反面,向上した者が少なかった項目(2名が向上)は,理学療法評価の知識,社会人としてのマナー,患者との人間関係構築の自信,理学療法士になりたいと思うかであった。この要因として,理学療法士になりたいと思うかについては,評価尺度の天井効果が影響したと考えられた。理学療法評価の知識については,臨床実習指導者が行った評価結果に対する解釈を聞く機会,すなわち指導者自身の統合と解釈を聞く機会が少なかったことが要因として考えられた。また,社会人としてのマナー,患者との人間関係構築の自信については,臨床実習では患者と主体的に人間関係を構築することに限界があることが要因として考えられ,卒後の課題になると思われた。
【理学療法学研究としての意義】臨床実習に対する学生の認識は個別性が大きく,評価しにくい面があるが,今回の結果から一定の傾向は得られたことは意義深いものと思われる。今後は,個々の臨床実習指導者が行っている工夫を職員間で共有するなどして,職場全体でCC型臨床実習を成熟させる必要があるものと思われた。
【方法】対象は同一年度に当院の臨床実習を経験した全ての学生5名とした。調査方法は,記述式のアンケートとした。アンケートの内容は,臨床実習経験前後での認識の変化を分析するために,実習開始時と終了時に「全くない」から「極めてある」までの7件法12項目にて調査し,臨床実習あるいは今後の臨床業務で不安に思うことも自由記述にて調査した。また,終了時に,CC型臨床実習の良かった点,改善すべき点についても自由記述にて調査した。終了時には開始時の記載内容は閲覧させなかった。
【倫理的配慮】全ての対象には本研究の趣旨を説明し,同意を得た上でアンケート調査を行った。その際,アンケート結果が臨床実習の指導内容や成績に影響を与えないことを特に入念に説明した。なお,本研究の趣旨説明とアンケート用紙の配布および回収は,臨床実習に直接関わらない当科の所属長が行い,当該年度の臨床実習が全て終了するまで所属長以外はアンケート結果を閲覧できないようにし,予め個人情報を削除した上でアンケート結果を閲覧,分析した。
【結果】7件法による臨床実習経験前後での認識の変化の調査では,CCに対する理解は全ての対象で向上した。理学療法治療・介入の知識は3名が向上,2名が変化なかった。理学療法治療・介入の技術は全ての対象で向上した。理学療法評価の知識は2名が向上,2名が変化なし,1名が低下した。理学療法評価の技術は4名が向上,1名が変化なかった。医学的知識は3名が向上,2名が変化なかった。書類作成のスキルは4名が向上,1名が変化なかった。社会人としてのマナーは2名が向上,2名が変化なし,1名が低下した。患者との人間関係構築の自信は2名が向上,3名が変化なかった。職員との人間関係構築の自信は全ての対象で向上した。理学療法士になりたいと思うかは2名で向上,3名で変化なかった。当院に就職したいと思うかは3名が向上,1名が変化なし,1名が低下した。自由記述による不安に思うことの変化では,概ね自信がついた者,臨床実習前後とも治療介入の不安がある者,対人関係から治療介入に不安の内容が変化した者,予後予測に対する不安が残った者,終了時にも患者との人間関係の不安が継続した者など様々であった。CC型臨床実習の良かった点では,多くの患者に接することで患者の個別性や多様な介入経験を積むことができた点や,セラピストと一緒に診療をするので不安が少なかった点が記載された。CC型臨床実習の改善すべき点では,評価の統合と解釈の経験が不足した点,セラピストにより介入方法に差異がある点,学生が主体的に診療を行う経験が不足している点が記載された。
【考察】7件法による臨床実習経験前後での認識の変化において,CCに対する理解は全ての対象で向上しており,CC型臨床実習の趣旨は概ね理解できたものと思われる。また,理学療法治療・介入の技術や理学療法評価の技術,職員との人間関係構築の自信の項目も向上した者が多く,職員と共に臨床を体験する実習形態の特徴をよく表した結果であると示唆された。反面,向上した者が少なかった項目(2名が向上)は,理学療法評価の知識,社会人としてのマナー,患者との人間関係構築の自信,理学療法士になりたいと思うかであった。この要因として,理学療法士になりたいと思うかについては,評価尺度の天井効果が影響したと考えられた。理学療法評価の知識については,臨床実習指導者が行った評価結果に対する解釈を聞く機会,すなわち指導者自身の統合と解釈を聞く機会が少なかったことが要因として考えられた。また,社会人としてのマナー,患者との人間関係構築の自信については,臨床実習では患者と主体的に人間関係を構築することに限界があることが要因として考えられ,卒後の課題になると思われた。
【理学療法学研究としての意義】臨床実習に対する学生の認識は個別性が大きく,評価しにくい面があるが,今回の結果から一定の傾向は得られたことは意義深いものと思われる。今後は,個々の臨床実習指導者が行っている工夫を職員間で共有するなどして,職場全体でCC型臨床実習を成熟させる必要があるものと思われた。