[0175] 棘下筋に対する超音波出力強度の違いによる効果
Keywords:超音波, 出力強度, 関節可動域
【はじめに,目的】
物理療法分野において,超音波療法(以下US)は臨床的に頻繁に使用され,その効果は高いと報告されている。オーバーヘッドスポーツにおいて,肩関節内旋制限が認められることが多く,その原因の一つとして肩後方構成体の拘縮があげられる。本研究では,肩後方構成体の一つである棘下筋に着目し,効果的なUS出力強度および関節可動域に与える影響を検討することを目的とした。
【方法】
対象は,肩関節に既往のない健常人男性50名(平均年齢35.8±11.7歳,BMI22.8±3.0)の利き手側とした。超音波治療器は,伊藤超短波株式会社製US-750を使用した。照射部位は,棘下筋とし,照射範囲は肩甲棘内縁から5×5cmに設定した。照射肢位は,ベッド上腹臥位,両上肢を体側につけた肢位とした。USの設定は,周波数3MHz,照射時間率50%,導子Lタイプ,2cmストローク法,照射時間5分とした。出力強度をコントロール群(以下Co群)0.5W/cm2(以下A群),1.0W/cm2(以下B群),1.5W/cm2(以下C群),2.0W/cm2(以下D群)の5群に分け,対象を各群に10名ずつランダムに振り分け,出力強度について二重盲検法にて実施した。違和感や疼痛を訴えた場合,直ちに実験を中止した。測定項目は,肩関節水平内転(以下HF),肩関節90°外転位での内旋(以下IR2),肩関節90°屈曲位での内旋(以下IR3)とし,各群US施行前後の可動域を肩甲骨固定位にて測定した。測定は各3回行い,平均値を採用した。統計処理は,US施行前後の可動域について,5(出力強度)×3(測定項目)毎に,分割プロット法による二要因分散分析を行い,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
被験者には研究の意義,目的について十分に説明し,同意を得た上で実験を行った。
【結果】
二要因分散分析の結果,出力強度と測定項目の主効果,交互作用のすべてで有意差が認められた(α<0.05)。出力強度の単純主効果は,HF(Co,A,B,C,Dの順に-0.00±1.11,6.32±3.61,5.92±4.31,12.49±3.79,10.00±2.95)とIR2(0.33±1.31,6.17±4.11,6.26±3.24,12.74±8.95,9.58±2.78)において有意差が認められた。
【考察】
今回,Co群を除く全ての群で照射前後の関節可動域に有意な改善が認められた。関節可動域はC群とD群が他の群に比べ有意に関節可動域が増大した。C群とD群間に有意な差が見られなかった。US効果は,温熱作用とマイクロマッサージ効果が考えられる。Draperらによると,3MHzの周波数の連続波による温度上昇は,1.5W/cm2で0.9℃/分,2.0W/cm2で1.2℃/分であると報告されている。本研究では,50%の照射時間率で行ったため,連続波の半分の温度上昇が見込め,今回の設定で1.5W/cm2の場合2.25℃,2.0W/cm2の場合3.0℃の温度上昇が起こると考えられる。また,筋温2~3℃の上昇は,筋スパズムや痛みを軽減し,血流量を増大し,慢性の炎症を軽減するとされている。葛岡らによると,マイクロマッサージ効果により,筋の内部粘性および筋の感受性が低下すると報告している。このことから,C群およびD群が他の3群と比べ可動域の改善が有意に認められたと考える。C群およびD群に関節可動域の有意な改善を認めたが,D群においては,18名中8名の被験者が疼痛を訴えたため実験を中止した。USを照射された部位や周囲の温度の増減は,吸収発熱の量,血流に依存する熱の移動・拡散などに左右されるとされている。従って,出力強度2.0W/cm2では,血流量が乏しいと熱の移動・拡散が少ないため,温度上昇が大きくなり,疼痛が生じたと考えられる。IR2,IR3,HFの比較をした際,IR3の改善が少なかった。IR3は棘下筋以外の影響が大きく,棘下筋の影響が少ないためだと考える。
【理学療法学研究としての意義】
超音波の出力強度は,臨床的に0.5~2.5 W/cm2で使用するとされている。しかし,各部位ごとに出力強度を設定すれば良いかは明確にされていない。本研究において,棘下筋に対しては,出力強度2.0W/cm2で疼痛が生じる危険性が示唆された。出力強度を高くすれば,関節可動域の増大に効果的であるが,疼痛もなく,関節可動域の増大に効果的な出力強度は,1.5W/cm2である事が示唆された。
物理療法分野において,超音波療法(以下US)は臨床的に頻繁に使用され,その効果は高いと報告されている。オーバーヘッドスポーツにおいて,肩関節内旋制限が認められることが多く,その原因の一つとして肩後方構成体の拘縮があげられる。本研究では,肩後方構成体の一つである棘下筋に着目し,効果的なUS出力強度および関節可動域に与える影響を検討することを目的とした。
【方法】
対象は,肩関節に既往のない健常人男性50名(平均年齢35.8±11.7歳,BMI22.8±3.0)の利き手側とした。超音波治療器は,伊藤超短波株式会社製US-750を使用した。照射部位は,棘下筋とし,照射範囲は肩甲棘内縁から5×5cmに設定した。照射肢位は,ベッド上腹臥位,両上肢を体側につけた肢位とした。USの設定は,周波数3MHz,照射時間率50%,導子Lタイプ,2cmストローク法,照射時間5分とした。出力強度をコントロール群(以下Co群)0.5W/cm2(以下A群),1.0W/cm2(以下B群),1.5W/cm2(以下C群),2.0W/cm2(以下D群)の5群に分け,対象を各群に10名ずつランダムに振り分け,出力強度について二重盲検法にて実施した。違和感や疼痛を訴えた場合,直ちに実験を中止した。測定項目は,肩関節水平内転(以下HF),肩関節90°外転位での内旋(以下IR2),肩関節90°屈曲位での内旋(以下IR3)とし,各群US施行前後の可動域を肩甲骨固定位にて測定した。測定は各3回行い,平均値を採用した。統計処理は,US施行前後の可動域について,5(出力強度)×3(測定項目)毎に,分割プロット法による二要因分散分析を行い,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
被験者には研究の意義,目的について十分に説明し,同意を得た上で実験を行った。
【結果】
二要因分散分析の結果,出力強度と測定項目の主効果,交互作用のすべてで有意差が認められた(α<0.05)。出力強度の単純主効果は,HF(Co,A,B,C,Dの順に-0.00±1.11,6.32±3.61,5.92±4.31,12.49±3.79,10.00±2.95)とIR2(0.33±1.31,6.17±4.11,6.26±3.24,12.74±8.95,9.58±2.78)において有意差が認められた。
【考察】
今回,Co群を除く全ての群で照射前後の関節可動域に有意な改善が認められた。関節可動域はC群とD群が他の群に比べ有意に関節可動域が増大した。C群とD群間に有意な差が見られなかった。US効果は,温熱作用とマイクロマッサージ効果が考えられる。Draperらによると,3MHzの周波数の連続波による温度上昇は,1.5W/cm2で0.9℃/分,2.0W/cm2で1.2℃/分であると報告されている。本研究では,50%の照射時間率で行ったため,連続波の半分の温度上昇が見込め,今回の設定で1.5W/cm2の場合2.25℃,2.0W/cm2の場合3.0℃の温度上昇が起こると考えられる。また,筋温2~3℃の上昇は,筋スパズムや痛みを軽減し,血流量を増大し,慢性の炎症を軽減するとされている。葛岡らによると,マイクロマッサージ効果により,筋の内部粘性および筋の感受性が低下すると報告している。このことから,C群およびD群が他の3群と比べ可動域の改善が有意に認められたと考える。C群およびD群に関節可動域の有意な改善を認めたが,D群においては,18名中8名の被験者が疼痛を訴えたため実験を中止した。USを照射された部位や周囲の温度の増減は,吸収発熱の量,血流に依存する熱の移動・拡散などに左右されるとされている。従って,出力強度2.0W/cm2では,血流量が乏しいと熱の移動・拡散が少ないため,温度上昇が大きくなり,疼痛が生じたと考えられる。IR2,IR3,HFの比較をした際,IR3の改善が少なかった。IR3は棘下筋以外の影響が大きく,棘下筋の影響が少ないためだと考える。
【理学療法学研究としての意義】
超音波の出力強度は,臨床的に0.5~2.5 W/cm2で使用するとされている。しかし,各部位ごとに出力強度を設定すれば良いかは明確にされていない。本研究において,棘下筋に対しては,出力強度2.0W/cm2で疼痛が生じる危険性が示唆された。出力強度を高くすれば,関節可動域の増大に効果的であるが,疼痛もなく,関節可動域の増大に効果的な出力強度は,1.5W/cm2である事が示唆された。