第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 神経理学療法 ポスター

脳損傷理学療法4

Fri. May 30, 2014 11:45 AM - 12:35 PM ポスター会場 (神経)

座長:大塚功(社会医療法人財団慈泉会相澤病院リハセラピスト部門)

神経 ポスター

[0192] 脳卒中に特異的なQuality of Lifeとその関連要因

清藤恭貴, 北地雄, 鈴木淳志, 尾崎慶多, 高橋美晴, 柴田諭史, 原島宏明, 新見昌央, 宮野佐年 (総合東京病院リハビリテーション科)

Keywords:QOL, 脳卒中, 全人的アプローチ

【目的】リハビリテーションには医学的,教育的,職業的,社会的リハビリテーションの分野があり,その基調は主体性,自立性,自由といった人間本来の生き方であって,必ずしも職業復帰や経済的自立のみが目標ではないとされる。したがって,機能障害や能力障害の医学的側面のみならず心理・社会的側面も含めた全人的アプローチが必要となる。本研究の目的は全人的アプローチの一角であるQOLを数量化するSS-QOLを用いて,脳卒中者のQOLと身体機能,日常生活機能,心理・社会的側面の関係を調査することである。
【方法】対象は同意のもとSS-QOL(Stroke Specific Quality of Life)の聴取が可能であった脳卒中により当院回復期病棟に入院した連続症例23名(内訳:男性20名,女性3名,年齢69.9±13.8歳,発症からの期間27.6±19.5日,右半球病巣6名,左半球病巣6名,両側3名,脳幹6名,小脳2名,MMSE25.9±4.6点)であった。脳卒中者に特異的なQOLの評価としてSS-QOLを,感情状態の評価としてCES-D(The Center for Epidemiologic Studies Depression Scale)を,身体機能の評価としてFBS,10m歩行,TUG,膝伸展筋力,下肢BS(Brunnstrom stage),上肢FMA(Fugl-Meyer Assessment),ABMS(Ability for Basic Movement Scale)を,ADLの評価としてBI,mRS(modified Rankin scale)を,その他Vitality Index,リハビリに対する期待度やお見舞い頻度なども調査した。統計学的解析はSS-QOLの合計得点,SS-QOLの下位項目(活気,家族的役割,言語,活動性,気分,パーソナリティ,セルフケア,社会的役割,思考,上肢機能,視覚,仕事),および各調査測定項目との関連を相関係数にて検討し,身体機能,ADL,および年齢のいずれがSS-QOLに影響を及ぼすのかを回帰分析(ステップワイズ法)にて検討した。また,SS-QOLの合計点と相関を認めた下位項目を用いて回帰分析(ステップワイズ法)を行い,SS-QOLに最も影響のある下位項目を抽出した。SPSS version 17.0を用い5%未満を有意水準とした。
【倫理的配慮】本研究は,当院リハビリテーション科における標準的評価のデータベースからの解析であり,全て匿名化された既存データのみで検討を行った。
【結果】SS-QOLの合計点と相関を認めた項目は麻痺側膝伸展筋力,ABMS,FBS,BI,Vitality Index,年齢であり,SS-QOLの下位項目では言語,活動性,気分,セルフケア,社会的役割,思考,上肢機能,仕事であった。SS-QOLの下位項目である活気は年齢,活動性,気分と,言語は気分,思考,Vitality Indexと,活動性はおもに身体機能の評価項目とBIおよびセルフケア,社会的役割,仕事と,気分はVitality Index,リハビリに対する期待度,セルフケアと,パーソナリティは視覚と,セルフケアはVitality Index,MMSE,身体機能,ADL,社会的役割と,社会的役割は身体機能,BI,年齢と,思考はVitality Index,お見舞い頻度,上肢機能と相関を認めた。SS-QOLと相関を認めた麻痺側膝伸展筋力,ABMS,FBS,BI,Vitality Index,年齢による回帰分析の結果,麻痺側膝伸展筋力および年齢が抽出された(調整済みR2=0.492)。これにCES-Dのネガティブ項目を含めるとCES-Dのネガティブ項目,麻痺側膝伸展筋力が抽出された(調整済みR2=0.544)。SS-QOL合計点と相関を認めた下位項目による回帰分析の結果,活動性,思考,気分が抽出された(調整済みR2=0.842)。
【考察】脳卒中に特異的なQOLを評価することのできるSS-QOLは身体機能,ADL,vitality,および年齢と関連し,なかでも麻痺側膝伸展筋力および年齢に強く影響を受けることが示唆された。しかし感情の状態を評価できるCES-Dを含めると,CES-Dのネガティブ項目と麻痺側膝伸展筋力が抽出されたことより,SS-QOLはネガティブな感情により強く影響されることが示唆された。また,SS-QOLは下位項目のなかでも特に活動性,思考,気分の影響を強く受けることが示された。SS-QOLの下位項目(活気,家族的役割,言語,活動性,気分,パーソナリティ,セルフケア,社会的役割,思考,上肢機能,視覚,仕事)はそれぞれ下位項目同士,および年齢,身体機能,ADL,認知機能,Vitality,リハビリに対する期待度やお見舞い頻度と関連を示した。以上をまとめると,多面的な要素を持つQOLを点数化するSS-QOLは脳卒中発症時の年齢,全体的な活動状態や気分の影響を強く受けるが,SS-QOLを構成する多面的な下位項目は日常生活に影響を及ぼすと考えられるすべてのことに強弱はあるものの影響を受けることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】QOLを客観的に点数化すること自体は難しいことであるが,今回の結果からSS-QOLに関してはさまざまな影響を受けながらも,年齢,全体的な活動性,気分の影響を強く受けることが示唆された。