第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 口述 » 教育・管理理学療法 口述

臨床教育系3

Fri. May 30, 2014 1:30 PM - 2:20 PM 第8会場 (4F 411+412)

座長:加藤研太郎(上尾中央医療専門学校教育部理学療法学科)

教育・管理 口述

[0217] 回復期リハビリテーション病棟開設に伴う新人教育・マネジメント

丸水貴生1, 福山千寿子1, 福原華1, 那須友美1, 妹尾真奈美1, 船木香菜子1, 原田雄大1, 藤元静二郎1, 神田勝利2 (1.医療法人社団静雄会藤元上町病院, 2.鹿児島第一医療リハビリ専門学校)

Keywords:回復期, 新人教育, マネジメント

【目的】
集中的なリハビリテーションにより在宅復帰を目指す,回復期リハビリテーション病棟は中核医療を担う当院においても,地域の役割として重要視されている。しかし,全国各地域,同病棟を設立した機関においては,施設基準を満たすためのセラピスト確保に伴い,卒業して間もない新人セラピストの増員が余儀なくされ,質の問われる時代へ移行している。今回,地域の中でも質の高い医療を提供するために,新人教育・管理者育成・組織マネジメントが急務と考え,キャリアパス式の教育システムを構築した。本研究の目的は,組織全体での能力向上実現へと活かされることである。まずは新人と経験者で評価値の違いを調査し,現状の把握と今後の課題を報告する。
【方法】
評価対象は当院リハビリ部職員26名のうち,A群7名(4~6年目)とB群17名(3年目以下)の24名(PT12名・OT9名・ST3名)とした。教育システムの内容は,キャリアパス式のクリニカルラダーマトリックス(以下C表)と4柱の領域別評価「実践能力領域」「管理運営領域」「教育指導,自己研鑽領域」「情意領域」とした。各20項目×5点=100点とし,4領域合計400満点とした。C表では,この4領域合計点数をキャリアパス基準とし,他基準として,協会新プロ履修や学術大会演題発表,院内外講師経験,ISO内・外部審査対応,CV,SVの経験,リーダー業務,管理者業務等を含んでいる。今回は4領域別評価とその合計点数をMann-WhitneyのU検定(有意水準p<0.01)を用いて分析し,A/B群間で比較した。
【倫理的配慮,説明と同意】
全対象者に個人が特定されないこと,回答内容について個人の不利益が生じないことを説明し,同意を得た。また,今回の報告にあたり,医療法人社団静雄会藤元上町病院理事長の承認を得た。
【結果】
「実践能力」A群66.1±26点,B群49.1±44点(p=0.007)で有意差を認めた。「教育指導,自己研鑽」A群61.1±21点,B群40.1±36点(p=0.001)で有意差を認めた。「管理運営」A群57.7±12点,B群36.5±28点(p=0.0009)で有意差を認めた。「情意領域」A群65.1±20点,B群54±48点(p=0.05)で有意差を認めなかった。「合計」A群250.1±71点,B群180±156点(p=0.003)で有意差を認めた。入職3年以内の新人17名が在籍している当院では,「教育指導,自己研鑽」,「管理運営」面での組織力不足,「実践能力」における臨床業務やリスク管理等の不足が課題として数値に現れる結果となった。「情意領域」における主体性,柔軟性,協調性,医療倫理といった評価項目においてもB群では数値が低く,卒前教育から抱える問題点が,入職してからも残されているという結果が得られた。
【考察】
新人の単位消化の問題点が叫ばれる中,彼らも多く不安を抱えながら業務にあたっている。その不安を取り除くためには教育者が必要であるが,教育者が育つためには個々に合った指導,育成,管理者としての経験が必要と考えた。C表を作成し,目標値を設定しやすく表示した事で,最終的に知識や経験を得た教育者が増え,後輩や学生指導を行う事で組織全体での能力向上実現へと繋がっていくと考える。結果については現状を受け止め,3か月ごとの経過を観察しながら1年後の評価を確認する。教育システムの適性を評価し,随時内容を検討しながらも,組織力向上に影響を与えることを期待したい。また,主体性,柔軟性,協調性,医療倫理や臨床業務,リスク管理については,より実践に近い長期実習を学生に経験してもらうことで,入職後に残される課題も軽減するのではないかと考える。その為,教育機関の方針を理解したうえで連携を図り,クリニカルクラーカルシップの導入など,臨床実習における教育指導の在り方も同時期に検討していく必要があると考える。教育機関と就職先が連携を強化し,卒前教育と卒後,新人教育指導法を明確にすることで,学生自身も安心して就職活動に専念することが出来ると考える。今後はC表を活用して経験値を増やし,組織力向上を目指す。回復期在院日数減少,地域に求められる質の高い医療機関へと移行するためには個人の力量向上と共に組織全体の能力向上が重要と考える。
【理学療法学研究としての意義】
卒後,臨床現場において,キャリアパス式の教育システムを利用することで,問題点が明確化され,継続した個別の教育指導を実現され,セラピスト個人の力量向上とともに組織全体の能力向上実現に寄与することが出来る。また,各協会活動に参加し,生涯学習の一助になると考える。