[0223] 大腿骨近位部骨折術後の高齢者において自宅退院を早期に検討するための要因
Keywords:大腿骨近位部骨折, 自宅退院, 高齢者
【はじめに】
近年,急性期病院における在院日数の短縮が進んでおり,クリニカルパスやDPCの導入などにより,早期の退院や転院を必要とするケースがみられている。大腿骨近位部骨折の患者においても地域連携パスが導入されるなど,回復期リハビリテーション病院(以下,回復期)への転院が早期より検討されるケースが増えてきている。しかし,大腿骨近位部骨折においては術後の機能回復も早期化しており,急性期病院から自宅退院が可能かどうかを術後早期より検討する必要が出てきている。今回,当院における大腿骨近位部骨折術後の患者で自宅へ退院した患者(以下,自宅群)と回復期へ転院した患者(以下,回復期群)を比較し,自宅退院を術後早期に検討するための要因を分析することを目的とした。
【方法】
2010年4月から2013年3月までに当院にて大腿骨頚部骨折または転子部骨折の手術を施行した65歳以上の患者のうち,術後免荷の指示があったものを除く,171名を対象とした。回復期群は95名(男性:25名,女性70名)で平均年齢は83.9±6.6歳,自宅群は76名(男性:21名,女性:55名)で平均年齢は79.7±7.9歳であった。
カルテより後方視的に術式,受傷日,入・退院日,手術日,理学療法開始および終了日,同居家族の有無,入院時血清アルブミン値(以下,Alb値),受傷前および退院時歩行能力(独歩または歩行補助具使用),歩行練習開始日を調査した。
在院日数及び術後の在院日数,術後の理学療法介入期間(以下,介入期間),受傷から手術までの期間(以下,待機期間),手術から歩行練習開始までの期間(以下,歩行開始期間)を算出し,対応のないt検定にて比較した。また,同居家族の有無や受傷前及び退院時の歩行能力,性別,術式についてはχ2検定を用いて比較した。さらに,転帰先を従属変数とし,各項目を独立変数としたステップワイズ法によるロジスティック回帰分析を行った。なお,有意な関連を認めた項目はオッズ比を算出した。統計処理にはSPSS21.0を用い,危険率5%未満を有意とした。
【倫理的配慮】
本研究は当院の倫理規定及びヘルシンキ宣言に基づき,個人が特定されないように個人情報の保護に配慮して調査,研究を行った。
【結果】
両群の年齢,同居家族の有無,受傷前及び退院時歩行能力において有意な差を認めた(p<0.01)。性別と術式では有意な差を認めなかった。Alb値(自宅:4.0±0.4,回復期:3.9±0.3)や在院日数(自宅:35.1±12.6日,回復期:35.7±10.3日),術後の在院日数(自宅:28.7±12.4日,回復期:28.7±9.7日),介入期間(自宅:30.3±12.7日,回復期:29.8日±10.0日),待機期間(自宅:7.3±4.3日,回復期:7.8±5.7日),歩行開始期間(自宅:5.7±4.1日,回復期:4.5±5.3日)においては有意差を認めなかった。
ロジスティック回帰分析の結果,同居家族の有無と受傷前歩行能力,年齢が関連要因として抽出された。それぞれのオッズ比は同居家族の有無が3.52(p<0.01),受傷前歩行能力が2.38(p=0.02)年齢が0.93(p<0.01)であった。
【考察】
急性期病院における在院日数の短縮化に伴い,大腿骨近位部骨折の患者においても地域連携パスが導入されるなど,術後早期に転院が決定する場合もある。しかし,実際の臨床場面において自宅退院の検討には,身体機能のみではなく,社会的要因などを含め様々な要因が関係しており,術後早期からの決定を困難にすることがある。
今回,手術直後より検討が可能な要因をロジスティック回帰分析にて検討した結果,同居家族がいることや受傷前の歩行が独歩であること,年齢が低いことが自宅退院の要因として抽出された。これは,日本整形外科学会のガイドラインで,機能予後に影響する因子として年齢が挙げられていることや受傷前の歩行能力や同居家族の存在について検討されているいくつかの先行研究とも一致していた。よって,大腿骨近位部骨折の患者では家族構成や受傷前の歩行能力を検討することで,早期より自宅退院の可能性が判断出来ると考える。また,超高齢群や独居高齢者においては早期より転院の可能性も示すことができるのではないかと考えられた。
しかし,本研究においては認知面や歩行補助具の詳細などは分析しておらず,今後さらに詳細な検討をする必要があると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
大腿骨近位部骨折術後患者の自宅退院決定に関する要因が示唆され,クリニカルパスや理学療法評価に反映できる可能性がある。
近年,急性期病院における在院日数の短縮が進んでおり,クリニカルパスやDPCの導入などにより,早期の退院や転院を必要とするケースがみられている。大腿骨近位部骨折の患者においても地域連携パスが導入されるなど,回復期リハビリテーション病院(以下,回復期)への転院が早期より検討されるケースが増えてきている。しかし,大腿骨近位部骨折においては術後の機能回復も早期化しており,急性期病院から自宅退院が可能かどうかを術後早期より検討する必要が出てきている。今回,当院における大腿骨近位部骨折術後の患者で自宅へ退院した患者(以下,自宅群)と回復期へ転院した患者(以下,回復期群)を比較し,自宅退院を術後早期に検討するための要因を分析することを目的とした。
【方法】
2010年4月から2013年3月までに当院にて大腿骨頚部骨折または転子部骨折の手術を施行した65歳以上の患者のうち,術後免荷の指示があったものを除く,171名を対象とした。回復期群は95名(男性:25名,女性70名)で平均年齢は83.9±6.6歳,自宅群は76名(男性:21名,女性:55名)で平均年齢は79.7±7.9歳であった。
カルテより後方視的に術式,受傷日,入・退院日,手術日,理学療法開始および終了日,同居家族の有無,入院時血清アルブミン値(以下,Alb値),受傷前および退院時歩行能力(独歩または歩行補助具使用),歩行練習開始日を調査した。
在院日数及び術後の在院日数,術後の理学療法介入期間(以下,介入期間),受傷から手術までの期間(以下,待機期間),手術から歩行練習開始までの期間(以下,歩行開始期間)を算出し,対応のないt検定にて比較した。また,同居家族の有無や受傷前及び退院時の歩行能力,性別,術式についてはχ2検定を用いて比較した。さらに,転帰先を従属変数とし,各項目を独立変数としたステップワイズ法によるロジスティック回帰分析を行った。なお,有意な関連を認めた項目はオッズ比を算出した。統計処理にはSPSS21.0を用い,危険率5%未満を有意とした。
【倫理的配慮】
本研究は当院の倫理規定及びヘルシンキ宣言に基づき,個人が特定されないように個人情報の保護に配慮して調査,研究を行った。
【結果】
両群の年齢,同居家族の有無,受傷前及び退院時歩行能力において有意な差を認めた(p<0.01)。性別と術式では有意な差を認めなかった。Alb値(自宅:4.0±0.4,回復期:3.9±0.3)や在院日数(自宅:35.1±12.6日,回復期:35.7±10.3日),術後の在院日数(自宅:28.7±12.4日,回復期:28.7±9.7日),介入期間(自宅:30.3±12.7日,回復期:29.8日±10.0日),待機期間(自宅:7.3±4.3日,回復期:7.8±5.7日),歩行開始期間(自宅:5.7±4.1日,回復期:4.5±5.3日)においては有意差を認めなかった。
ロジスティック回帰分析の結果,同居家族の有無と受傷前歩行能力,年齢が関連要因として抽出された。それぞれのオッズ比は同居家族の有無が3.52(p<0.01),受傷前歩行能力が2.38(p=0.02)年齢が0.93(p<0.01)であった。
【考察】
急性期病院における在院日数の短縮化に伴い,大腿骨近位部骨折の患者においても地域連携パスが導入されるなど,術後早期に転院が決定する場合もある。しかし,実際の臨床場面において自宅退院の検討には,身体機能のみではなく,社会的要因などを含め様々な要因が関係しており,術後早期からの決定を困難にすることがある。
今回,手術直後より検討が可能な要因をロジスティック回帰分析にて検討した結果,同居家族がいることや受傷前の歩行が独歩であること,年齢が低いことが自宅退院の要因として抽出された。これは,日本整形外科学会のガイドラインで,機能予後に影響する因子として年齢が挙げられていることや受傷前の歩行能力や同居家族の存在について検討されているいくつかの先行研究とも一致していた。よって,大腿骨近位部骨折の患者では家族構成や受傷前の歩行能力を検討することで,早期より自宅退院の可能性が判断出来ると考える。また,超高齢群や独居高齢者においては早期より転院の可能性も示すことができるのではないかと考えられた。
しかし,本研究においては認知面や歩行補助具の詳細などは分析しておらず,今後さらに詳細な検討をする必要があると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
大腿骨近位部骨折術後患者の自宅退院決定に関する要因が示唆され,クリニカルパスや理学療法評価に反映できる可能性がある。