[0227] 青年期腰椎分離症に対する運動療法基準の作成の試み
Keywords:分離症, 運動療法, 評価
【目的】青年期腰椎分離症は腰痛が生じて間もなくであれば,保存療法で分離部の骨癒合が期待できる。一方,急性期をすぎて骨癒合が期待できない場合でも,適切な保存療法によりスポーツ活動の再開が可能となりえる。どちらの場合においても,スポーツ活動を活発に行う症例では,骨癒合の状態を考慮した可及的早期からの運動療法が必要となる。しかし,活動性の高い症例に対する適切な運動療法を進める上で,臨床的に指標となる基準は少ない。そこで,我々は,簡便な臨床的評価として5段階法を考案した。そしてスポーツ活動への復帰を目指す腰椎分離症症例に対し,この評価に基づいた運動療法を行い良好な反応を得ている。今回この評価法について自経例を踏まえて紹介する。
【方法】対象は2013年5月から11月の間に当院で分離症の診断を受け,運動療法が開始となった10例,男性9名,女性1名,平均年齢14,7歳である。分離部は両側4例(L5が3例,1例はL4両側とL5片側),片側5例(L5が1例,L4が4例)であった。また1例はL5の陳旧性の分離症であった。今回我々が考案した5段階評価は,①クッション等を腹部前面に配置し股関節が軽度屈曲位状態でのうつ伏せ姿勢で疼痛が出現する(step1)②step1の姿勢で疼痛が出現しない(step2)③うつ伏せ姿勢でも疼痛が出現しない(step3)④クッション等を腹部前面に配置したうつ伏せ姿勢で,股関節が軽度屈曲位状態から股関節自動伸展で疼痛が出現しない(step4)⑤うつ伏せでの股関節伸展で疼痛がない(step5)である。各段階での運動内容は,step1では,背臥位での股関節のストレッチ,ドローイン,step2では座位での体幹筋の等尺性運動を追加,step3では,うつ伏せ姿勢での腸腰筋や大腿四頭筋のストレッチングを追加,step4では股関節周囲筋の積極的な筋力強化を追加していった。またstep5では座位,立位での積極的な体幹筋強化,さらにスポーツ活動にそくした動作などを開始する。なお,骨癒合程度や伸展時痛,kemp’s Signなどの理学所見などの理学所見など随時医師より情報をうけ運動療法の参考とすることとした。
【倫理的配慮】運動療法の実施に際しては倫理的配慮をし得られたデータと個人情報の保護に十分に努めた。
【結果】10例の運動療法開始時の5段階評価の区分はstep1が3例,step2が3例,step3が3例,step4が1例だった。運動開始後各症例がstep5に改善するのに必要とした期間は,step1では平均2,1カ月,step2では3カ月,step3では2,5カ月であった。Step4の1例は陳旧性であったがstep5に移行するのに3カ月を要した。また運動療法開始後,平均3,3カ月で疼痛なく全例競技復帰した。
【考察】分離症に対する保存療法,とりわけ装具療法の有効性は多数報告されている。しかし運動療法に関する報告は多くはない。また,スポーツ活動の再開基準は,画像所見と伸展時痛,kemp’s Signなどの理学所見に基づいて行われるが,疼痛の再発,また,骨癒合不全症例に対する基準の曖昧さなどの問題も少なくない。一方,運動療法の実施においては,分離症の程度や部位などは様々であり,また股関節周囲の可動範囲の差などの身体的な特長のちがいも関与し,さらに疼痛の訴えも画像所見と必ずしも一致するとは言いがたい。したがって画一的な運動処方では効率的に分離症に対する運動療法を進めることは困難である。様々な状態の分離症の運動療法を進めていく上で,医師の処方とともに,臨床的な指標は,運動の種目の選択,各運動の開始の判断にとって有益である。我々が考案した5段階評価は伸展時痛の再現や股関節の可動性などを無理なく簡便に評価できる利点がある。また運動の選択も容易に出来ることから,症例の状態と合致した運動を選択でき,疼痛や分離が再発することなくスポーツ活動への復帰を効率的に果たす為の一助となると考える。
【理学療法研究としての意義】
今回の方法は分離症の運動療法を段階的に進めるうえでの簡便で有益な基準である可能性がある。
【方法】対象は2013年5月から11月の間に当院で分離症の診断を受け,運動療法が開始となった10例,男性9名,女性1名,平均年齢14,7歳である。分離部は両側4例(L5が3例,1例はL4両側とL5片側),片側5例(L5が1例,L4が4例)であった。また1例はL5の陳旧性の分離症であった。今回我々が考案した5段階評価は,①クッション等を腹部前面に配置し股関節が軽度屈曲位状態でのうつ伏せ姿勢で疼痛が出現する(step1)②step1の姿勢で疼痛が出現しない(step2)③うつ伏せ姿勢でも疼痛が出現しない(step3)④クッション等を腹部前面に配置したうつ伏せ姿勢で,股関節が軽度屈曲位状態から股関節自動伸展で疼痛が出現しない(step4)⑤うつ伏せでの股関節伸展で疼痛がない(step5)である。各段階での運動内容は,step1では,背臥位での股関節のストレッチ,ドローイン,step2では座位での体幹筋の等尺性運動を追加,step3では,うつ伏せ姿勢での腸腰筋や大腿四頭筋のストレッチングを追加,step4では股関節周囲筋の積極的な筋力強化を追加していった。またstep5では座位,立位での積極的な体幹筋強化,さらにスポーツ活動にそくした動作などを開始する。なお,骨癒合程度や伸展時痛,kemp’s Signなどの理学所見などの理学所見など随時医師より情報をうけ運動療法の参考とすることとした。
【倫理的配慮】運動療法の実施に際しては倫理的配慮をし得られたデータと個人情報の保護に十分に努めた。
【結果】10例の運動療法開始時の5段階評価の区分はstep1が3例,step2が3例,step3が3例,step4が1例だった。運動開始後各症例がstep5に改善するのに必要とした期間は,step1では平均2,1カ月,step2では3カ月,step3では2,5カ月であった。Step4の1例は陳旧性であったがstep5に移行するのに3カ月を要した。また運動療法開始後,平均3,3カ月で疼痛なく全例競技復帰した。
【考察】分離症に対する保存療法,とりわけ装具療法の有効性は多数報告されている。しかし運動療法に関する報告は多くはない。また,スポーツ活動の再開基準は,画像所見と伸展時痛,kemp’s Signなどの理学所見に基づいて行われるが,疼痛の再発,また,骨癒合不全症例に対する基準の曖昧さなどの問題も少なくない。一方,運動療法の実施においては,分離症の程度や部位などは様々であり,また股関節周囲の可動範囲の差などの身体的な特長のちがいも関与し,さらに疼痛の訴えも画像所見と必ずしも一致するとは言いがたい。したがって画一的な運動処方では効率的に分離症に対する運動療法を進めることは困難である。様々な状態の分離症の運動療法を進めていく上で,医師の処方とともに,臨床的な指標は,運動の種目の選択,各運動の開始の判断にとって有益である。我々が考案した5段階評価は伸展時痛の再現や股関節の可動性などを無理なく簡便に評価できる利点がある。また運動の選択も容易に出来ることから,症例の状態と合致した運動を選択でき,疼痛や分離が再発することなくスポーツ活動への復帰を効率的に果たす為の一助となると考える。
【理学療法研究としての意義】
今回の方法は分離症の運動療法を段階的に進めるうえでの簡便で有益な基準である可能性がある。