第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 内部障害理学療法 ポスター

呼吸3

2014年5月30日(金) 13:30 〜 14:20 ポスター会場 (内部障害)

座長:野添匡史(甲南女子大学看護リハビリテーション学部理学療法学科)

内部障害 ポスター

[0253] ノルディックウォーキングが呼吸補助筋に及ぼす影響

中嶋仁, 東大輝, 都留貴志, 加納一則 (市立吹田市民病院リハビリテーション科)

キーワード:ノルディックウォークキング, 呼吸補助筋, 呼吸リハビリテーション

【はじめに】ノルディックウォーキング(NW)は,2本のポールを持ち歩行することで下肢だけでなく上肢にも負荷がかかり,通常歩行より高い運動効果が期待できる。我々はNWを呼吸リハプログラムに導入している。NWにおける上肢への影響を検討した研究では,上腕三頭筋や上腕二頭筋に対するものがほとんどで呼吸補助筋に対する研究はない。今回の研究目的は,NWと各種歩行様式における呼吸補助筋の筋活動の違いを比較検討することである。
【対象と方法】被験者は健常男性11名,平均年齢33.4±10.2歳である。歩行様式は,至適速度での通常歩行(通常歩行),通常速歩(速歩),500gの重垂を両手に把持しての歩行(重垂歩行),500gの重垂を両手に把持しての速歩(重垂速歩),至適速度のNW(NW)の5つの歩行とした。重垂500g把持での歩行・速歩は,肘関節90°屈曲位保持で腕を振るように指導した。NWはポールを踵骨付近に突き,推進力を得るAggressive Styleとした。筋活動の測定は表面筋電図(NORAXON社製TELEMYO DTS)を用いた。測定筋は,胸鎖乳突筋,大胸筋,腹直筋上部,僧帽筋上部,僧帽筋中部,僧帽筋下部,広背筋の7筋とし全て右側で測定した。歩行周期を把握するためにビデオ撮影を行い筋電図と同期させた。歩行距離は15mとし,歩行が安定した一歩行周期の全波整流積分値(IEMG)を算出した。そして,速歩,重垂歩行,重垂速歩,NWのIEMGを標準化するために通常歩行のIEMGで徐算した(%IEMG)。また,歩行速度を確認するために15m歩行時間を測定し時速変換した。統計学分析は通常歩行,速歩,重垂歩行,重垂速歩,NWの5つの歩行様式の各筋の平均%IEMGに対して一元配置分散分析を行い,差を認めた項目について多重比較を行った。併せて各歩行様式における歩行速度の違いも同様に検討した。
【説明と同意】今回の研究は,当院の倫理委員会の規定に基づいて実施した。本研究の趣旨,内容,中止基準および個人情報の取り扱いに関して説明を行った上で研究協力の承諾を得た。
【結果】胸鎖乳突筋の筋活動において,重垂速歩(169.6±101.1%)とNW(164.1±54.2%)は,通常歩行よりも有意に高かった(P<0.01)。大胸筋の筋活動において,重垂速歩(192.3±116.4%)とNW(319.5±156.0%)は,通常歩行,重垂歩行(137.0±69.5%)よりも有意に高かった(P<0.01)。腹直筋上部の筋活動において,NW(202.4±128.1%)は,通常歩行,重垂歩行(92.0±30.0%),重垂速歩(114.3±29.4%)よりも有意差に高かった(P<0.01)。僧帽筋上部の筋活動において,重垂歩行(222.2±95.0%),重垂速歩(272.2±100.2%),NW(255.7±116.3%)は,通常歩行,速歩(147.1±54.4%)よりも有意に高かった(P<0.01)。僧帽筋中部の筋活動において,NW(308.7±222.7%)は,通常歩行,速歩(125.4%±19.0%),重垂歩行(146.70±50.1%),重垂速歩(186.3±73.0%)よりも有意に高かった(P<0.01)。僧帽筋下部の筋活動において,NW(465.0±459.7%)は,通常歩行,速歩(135.4%±20.5%),重垂歩行(115.3±24.5%),重垂速歩(167.1±39.5%)よりも有意に高かった(P<0.01)。広背筋の筋活動において,NW(489.6±582.0%)は,通常歩行,速歩(251.4%±360.7%),重垂歩行(125.6±78.6%),重垂速歩(194.1±156.4%)よりも有意に高かった(P<0.01)。歩行速度は,通常歩行(5.5±0.3km/h),速歩(7.2±0.8km/h),重垂速歩(7.3±0.6 km/h),重垂歩行(5.8±0.4 km/h),NW(6.2±0.4 km/h)であった。各歩行様式の違いによる歩行速度の差を認めた(P<0.01)。
【考察】NWはポールで床面を押し推進力を得るために上肢の積極的な運動が促される。そのため,歩行速度が速歩より遅くても,重垂を把持しなくても呼吸補助筋の筋活動が有意に高まった。上肢筋や呼吸筋,呼吸補助筋を強化することで呼吸苦の軽減や運動耐容能の改善が期待出来ることから,NWが呼吸器疾患患者に適したリハビリプログラムになると考える。
【理学療法学研究としての意義】NWの呼吸リハ効果の報告は少ないが,今回の結果が呼吸リハ効果の要因や適応の一考察となることから本研究の意義がある。