[0258] 在宅パーキンソン病者におけるApathy Scaleの信頼性・妥当性の検証
Keywords:パーキンソン病, アパシー尺度, 妥当性
【はじめに,目的】在宅パーキンソン病者(以下,在宅PD者)の日常生活におけるやる気や意欲などの心理的要因を改善することにより,身体機能や日常生活活動自立度向上に好影響を与えることが報告されている。Apathyは,日常生活における感情,情動,興味,関心,および目標に対する行動認知の欠如と定義され,動機づけの欠如,つまり,やる気あるいは意欲の欠如を意味する。在宅PD者に対する理学療法においてApathyなどの精神機能の活性化が課題となっているが,在宅PD者を対象とするApathy尺度(以下,Apathy Scale)の報告は少ない。唯一,PedersenらがStarksteinらのApathy Scaleを用いPD者において探索的因子分析により妥当性の検証を行った。しかし,この分析法では,因子負荷量の値が大きくても統計的に有意であるかどうかは不明であり,逆にこの絶対値が小さくても非有意であるかどうかは分からない。さらに,因子負荷量が無視しづらいほど大きいものの解釈困難となる状況が頻出する欠点がある。本研究の目的は,この欠点を補完可能な構造方程式モデリング(以下,SEM)による確証的因子分析を用い,在宅PD者を対象にStarksteinらのApathy Scaleの構成概念妥当性,基準関連妥当性,および信頼性を検証することである。
【方法】調査対象者は在宅PD者188名であった。このうち,調査拒否および不正回答を除く122名(男60名,女62名,平均年齢70.9±7.8歳)を分析対象とした。調査方法は,質問紙(無記名,自記式)を用い,郵送法による配布・回収,および研修会会場集合法にて実施した。StarksteinらのApathy Scale日本語版は,岡田らの島根医科大学版を使用した。分析方法は,信頼性を検証するために内的一貫性を用いた。構成概念妥当性はSEMによる確証的因子分析にて検証した。基準関連妥当性はベック抑うつ尺度総得点との相関分析によった。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,青森県立保健大学研究倫理委員会の承認を得た。同倫理委員会の規程に基づき,調査対象となる団体および対象者に対して,研究の趣旨,方法,対象者の募集・選択における任意性の確保,個人情報の保護等について文書で十分な説明を行い,同意・回答し返却されたことをもって研究に同意したものとした。
【結果】SEMによる確証的因子分析において,年齢,性,パーキンソン病発症後期間を調整因子とした結果,計14質問項目からなる原Apathy Scaleから,影響指標が0.7未満である5質問項目を削除した11指標1因子構造モデルにおいて高い適合度が得られた。除外された質問項目の内容は,仕事の自己効力感に関する質問が4項目,他人に比しての記憶力に関する質問が1項目であった。この11項目Apathy Scaleにおいて,内的整合性を示すCronbach’s α係数は0.81と高かった。基準関連妥当性については,外的基準としたベック抑うつ尺度総得点と11項目Apathy Scale総得点間に高い相関を認めた(r=0.822,p=0.000)。
【考察】構成概念妥当性を検証した結果,StarksteinらのApathy Scaleから11質問項目が抽出され在宅PD者のデータに適合した。さらに,この11項目Apathy Scaleは,内的整合性が高いこと,基準関連妥当性が確保されたことが確認された。また,この尺度は,原尺度に比べ質問項目数が少なく簡便に使用でき,回答者の負担も減少することが予測される。したがって,今回,妥当性・信頼性が確認された11項目Apathy Scaleは,在宅PD者のApathy評価尺度として使用できる可能性がある。
【理学療法学研究としての意義】Apathyは,適切な介入および物的環境の適合等により改善できる可能性が示されている。本11質問項目Apathy Scaleで在宅PD者のApathyを測定できれば,効率的かつ効果的な理学療法評価および目標・プログラム設定につながり,日常生活活動自立度や生活の質の向上に資する可能性がある。
【方法】調査対象者は在宅PD者188名であった。このうち,調査拒否および不正回答を除く122名(男60名,女62名,平均年齢70.9±7.8歳)を分析対象とした。調査方法は,質問紙(無記名,自記式)を用い,郵送法による配布・回収,および研修会会場集合法にて実施した。StarksteinらのApathy Scale日本語版は,岡田らの島根医科大学版を使用した。分析方法は,信頼性を検証するために内的一貫性を用いた。構成概念妥当性はSEMによる確証的因子分析にて検証した。基準関連妥当性はベック抑うつ尺度総得点との相関分析によった。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,青森県立保健大学研究倫理委員会の承認を得た。同倫理委員会の規程に基づき,調査対象となる団体および対象者に対して,研究の趣旨,方法,対象者の募集・選択における任意性の確保,個人情報の保護等について文書で十分な説明を行い,同意・回答し返却されたことをもって研究に同意したものとした。
【結果】SEMによる確証的因子分析において,年齢,性,パーキンソン病発症後期間を調整因子とした結果,計14質問項目からなる原Apathy Scaleから,影響指標が0.7未満である5質問項目を削除した11指標1因子構造モデルにおいて高い適合度が得られた。除外された質問項目の内容は,仕事の自己効力感に関する質問が4項目,他人に比しての記憶力に関する質問が1項目であった。この11項目Apathy Scaleにおいて,内的整合性を示すCronbach’s α係数は0.81と高かった。基準関連妥当性については,外的基準としたベック抑うつ尺度総得点と11項目Apathy Scale総得点間に高い相関を認めた(r=0.822,p=0.000)。
【考察】構成概念妥当性を検証した結果,StarksteinらのApathy Scaleから11質問項目が抽出され在宅PD者のデータに適合した。さらに,この11項目Apathy Scaleは,内的整合性が高いこと,基準関連妥当性が確保されたことが確認された。また,この尺度は,原尺度に比べ質問項目数が少なく簡便に使用でき,回答者の負担も減少することが予測される。したがって,今回,妥当性・信頼性が確認された11項目Apathy Scaleは,在宅PD者のApathy評価尺度として使用できる可能性がある。
【理学療法学研究としての意義】Apathyは,適切な介入および物的環境の適合等により改善できる可能性が示されている。本11質問項目Apathy Scaleで在宅PD者のApathyを測定できれば,効率的かつ効果的な理学療法評価および目標・プログラム設定につながり,日常生活活動自立度や生活の質の向上に資する可能性がある。