[0283] パーキンソン病患者における下肢筋力および下肢荷重率と歩行能力の関係
キーワード:パーキンソ病, 下肢荷重率, 歩行能力
【はじめに】
歩行能力には,多くの因子が関連している。その中でも高齢者の下肢筋力は動作能力を規定する要因であり,膝伸展筋力と歩行能力の関連について多くの研究が報告されている。
また,歩行が自立した症例と自立しない症例が混在する筋力区分では,前方へのリーチ距離や最大下肢荷重率が低値をとる症例で歩行が非自立となる可能性が高いことが報告されており,筋力にバランスの要因を加えることの重要性が示唆されている。
中枢神経系の障害を有する対象者では,高齢者に比較してバランス障害が重症化しやすく,歩行能力を規定する要因としてバランスの問題がより重要となる可能性がある。
本研究では,独歩に必要な筋力を有するパーキンソ病患者を対象として,下肢荷重率を測定し,歩行自立度にバランス能力が与える影響について検討した。
【対象および方法】
対象は,膝伸展筋の筋力体重比が0.25kgf/kg以上のパーキンソ病患者13名(男性7名,女性6名,平均年齢77.3±6.1歳,平均身長153.0±12.6cm,平均体重50.3±12.0kg)である。
これらの対象者について,左右の膝伸展筋力と最大下肢荷重率を測定した。膝伸展筋力の測定には,徒手筋力測定器機(μ-tas F-1,アニマ社製)を使用した。ベッド上端座位においてセンサーパッドを下腿遠位部に固定。更に下腿固定ベルトを下腿下垂位となる長さに調節し,下腿後方の支柱に固定した。測定中は,上肢は両大腿部に置くように指示し,体幹垂直位を保たせた。次に約3秒間の最大等尺性膝伸展運動を左右2回ずつ行わせ,最大値を記録した。尚,各計測間の休息は,30秒以上設けた。最大値(kgf)を,体重(kg)で除した値を体重比とし,左右の平均値を採用した。最大下肢荷重率の測定は,2台の市販体重計を用いた。それぞれの体重計の上に片側下肢をのせた立位姿勢をとらせた。左右の足角は15度とし,両踵部の間隔は10cm開けた。そして,左右下肢にそれぞれ最大限体重を偏位させるよう指示し,5秒間安定した保持が可能であった荷重量(kg)を体重(kg)で除し,その値を最大下肢荷重率(%)とし,左右の平均値を採用した。
日常の歩行能力によってfreehandでの歩行自立群(以下,自立群)と歩行器歩行群(以下,非自立群)に分け,筋力体重比値と最大下肢荷重率を比較検討した。
統計学的手法は,マンホイットニーのU検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には本研究の目的と方法を説明し,同意を得た上で計測を実施した。
【結果】
自立群が5名,非自立群が8名であった。筋力体重比値は自立群,非自立群の順にそれぞれ0.48±0.15kgf/kg,0.37±0.05kgf/kgであり,両群間に有意差を認めなかった。最大下肢荷重率は自立群,非自立群の順にそれぞれ89.1±10.5%,78.3±7.8%であり,自立群が非自立群より有意に高値であった。
【考察】
虚弱高齢者における検討では,筋力体重比値が0.4kgf/kgを以上の対象者では,バランスの良し悪しによらず歩行は自立することが報告されている。しかし,筋力の良好な症例の中に重度のバランス障害を有する症例は含まれていなかった。つまり,バランスが強く障害された場合における歩行能力への影響は十分に検討されていない。
本研究では,歩行自立の上で筋力的な問題が少ないパーキンソン病患者を対象として,バランス障害が歩行能力に与える影響について検討した。その結果,非自立群の最大荷重率は自立群に比較し有意に低値を示した。虚弱高齢者を対象とした検討では,最大荷重率が80.7%を下回る症例では独歩自立例を認めず,87.6%以上の症例では全例が独歩自立していた。今回の非自立群の平均最大荷重率は78.3%であり,これらの値を下回っていた。以上のことから,筋力が良好であっても,バランスが不良な症例では歩行が非自立となることが最大下肢荷重率のデータから確認できた。
筋力に加え,最大下肢荷重率のデータを加えることでパーキンソン病患者の歩行障害の原因分析がより精度よく実施できるものと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
最大下肢荷重率によるバランス障害の評価を導入することで,神経筋疾患患者の歩行障害の原因分析をより客観的に行うことができるようになるかもしれない。
歩行能力には,多くの因子が関連している。その中でも高齢者の下肢筋力は動作能力を規定する要因であり,膝伸展筋力と歩行能力の関連について多くの研究が報告されている。
また,歩行が自立した症例と自立しない症例が混在する筋力区分では,前方へのリーチ距離や最大下肢荷重率が低値をとる症例で歩行が非自立となる可能性が高いことが報告されており,筋力にバランスの要因を加えることの重要性が示唆されている。
中枢神経系の障害を有する対象者では,高齢者に比較してバランス障害が重症化しやすく,歩行能力を規定する要因としてバランスの問題がより重要となる可能性がある。
本研究では,独歩に必要な筋力を有するパーキンソ病患者を対象として,下肢荷重率を測定し,歩行自立度にバランス能力が与える影響について検討した。
【対象および方法】
対象は,膝伸展筋の筋力体重比が0.25kgf/kg以上のパーキンソ病患者13名(男性7名,女性6名,平均年齢77.3±6.1歳,平均身長153.0±12.6cm,平均体重50.3±12.0kg)である。
これらの対象者について,左右の膝伸展筋力と最大下肢荷重率を測定した。膝伸展筋力の測定には,徒手筋力測定器機(μ-tas F-1,アニマ社製)を使用した。ベッド上端座位においてセンサーパッドを下腿遠位部に固定。更に下腿固定ベルトを下腿下垂位となる長さに調節し,下腿後方の支柱に固定した。測定中は,上肢は両大腿部に置くように指示し,体幹垂直位を保たせた。次に約3秒間の最大等尺性膝伸展運動を左右2回ずつ行わせ,最大値を記録した。尚,各計測間の休息は,30秒以上設けた。最大値(kgf)を,体重(kg)で除した値を体重比とし,左右の平均値を採用した。最大下肢荷重率の測定は,2台の市販体重計を用いた。それぞれの体重計の上に片側下肢をのせた立位姿勢をとらせた。左右の足角は15度とし,両踵部の間隔は10cm開けた。そして,左右下肢にそれぞれ最大限体重を偏位させるよう指示し,5秒間安定した保持が可能であった荷重量(kg)を体重(kg)で除し,その値を最大下肢荷重率(%)とし,左右の平均値を採用した。
日常の歩行能力によってfreehandでの歩行自立群(以下,自立群)と歩行器歩行群(以下,非自立群)に分け,筋力体重比値と最大下肢荷重率を比較検討した。
統計学的手法は,マンホイットニーのU検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には本研究の目的と方法を説明し,同意を得た上で計測を実施した。
【結果】
自立群が5名,非自立群が8名であった。筋力体重比値は自立群,非自立群の順にそれぞれ0.48±0.15kgf/kg,0.37±0.05kgf/kgであり,両群間に有意差を認めなかった。最大下肢荷重率は自立群,非自立群の順にそれぞれ89.1±10.5%,78.3±7.8%であり,自立群が非自立群より有意に高値であった。
【考察】
虚弱高齢者における検討では,筋力体重比値が0.4kgf/kgを以上の対象者では,バランスの良し悪しによらず歩行は自立することが報告されている。しかし,筋力の良好な症例の中に重度のバランス障害を有する症例は含まれていなかった。つまり,バランスが強く障害された場合における歩行能力への影響は十分に検討されていない。
本研究では,歩行自立の上で筋力的な問題が少ないパーキンソン病患者を対象として,バランス障害が歩行能力に与える影響について検討した。その結果,非自立群の最大荷重率は自立群に比較し有意に低値を示した。虚弱高齢者を対象とした検討では,最大荷重率が80.7%を下回る症例では独歩自立例を認めず,87.6%以上の症例では全例が独歩自立していた。今回の非自立群の平均最大荷重率は78.3%であり,これらの値を下回っていた。以上のことから,筋力が良好であっても,バランスが不良な症例では歩行が非自立となることが最大下肢荷重率のデータから確認できた。
筋力に加え,最大下肢荷重率のデータを加えることでパーキンソン病患者の歩行障害の原因分析がより精度よく実施できるものと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
最大下肢荷重率によるバランス障害の評価を導入することで,神経筋疾患患者の歩行障害の原因分析をより客観的に行うことができるようになるかもしれない。