[0290] 急性期脳血管障害症例におけるトイレ動作獲得の関連因子
Keywords:トイレ動作, Berg Balance Scale, Stroke Impairment Assessment Set
【目的】排泄動作は人間の尊厳に関わる動作であり,急性期脳血管障害症例においてもトイレでの排泄を希望される例は多く,トイレ動作は目標の一つとして挙げられる。また,脳血管障害症例のトイレ動作の自立は,自宅復帰の可否に関連をもつ因子の一つであり重要である。先行研究において,在宅脳血管障害症例の排泄動作自立者は,排泄動作とバランス能力および非麻痺側下肢筋力が関係していたと報告されている。また,急性期脳血管障害症例のトイレ動作は,Berg Balance Scale(BBS)と関係があると報告されている。脳血管障害症例におけるトイレ動作の獲得に関連する因子は,バランス能力だけでなく脳血管障害による機能障害の関連も含めて調査する必要があるが,トイレ動作とバランス能力および機能障害における下位項目との関連を示した報告は少ない。本研究の目的は,発症後2週時のFunctional Independent Measure(FIM)のトイレ動作を従属変数,BBSおよびStroke Impairment Assessment Set(SIAS)の下位項目を独立変数とし,トイレ動作獲得に必要な因子を検討することとした。
【方法】対象は当院に入院した急性期脳血管症例55名(平均年齢68.2±13.4歳)で,疾患別では脳梗塞37名,脳出血18名であった。評価項目は,発症後2週時のBBS,SIASおよびFIMのトイレ動作とした。SIASの下位項目は,膝口テストおよび手指テストの和を上肢麻痺側運動機能,股関節屈曲テストおよび膝関節伸展テストの和を下肢麻痺側運動機能,上肢および下肢腱反射と上肢および下肢筋緊張の和を筋緊張,上肢および下肢触覚と上肢および下肢位置覚の和を感覚機能,上肢および下肢関節可動域を関節可動域,疼痛,腹筋力および垂直性の和を体幹機能,視空間認知,言語機能,非麻痺側膝伸展筋力および握力の和を非麻痺側機能として算出した。統計学的分析はSPSS.statistics21.0(IBM)を使用し,従属変数をFIMのトイレ動作,独立変数をBBSおよびSIASの下位項目としてステップワイズ重回帰分析を用いてトイレ動作の関連因子を抽出し,有意水準5%未満とした。
【倫理的配慮】倫理的配慮として,高木病院の倫理委員会の承認(承認番号77-2)を得た後に実施した。
【結果】ステップワイズ重回帰分析の結果,トイレ動作の独立決定因子はBBSの着座(β1=0.40,p<0.05),SIASの下肢麻痺側運動機能(β2=0.40,p<0.05),BBSの立位保持(β3=0.34,p<0.05),SIASの筋緊張(β4=-0.14,p<0.05)が選択され,調整済みR2は0.953,B=1.10となった(Y=1.10+0.40x1+0.40 x2+0.34 x3-0.14 x4)。選択された因子間の多重共線性は認められなかった。
【考察】本研究の結果,急性期脳血管障害症例のトイレ動作に関連する因子は,SIASの麻痺側下肢機能と筋緊張,BBSの着座と立位保持であることが示された。トイレ動作は,立位保持,下衣の着脱操作,着座,陰部の清拭,立ち上がりから構成されている。岩田らは,下肢StageIIIの在宅脳卒中片麻痺患者の排泄動作において,健側上下肢筋力と立位での下衣操作能力との間に中等度の相関が認められたと報告している。今回の分析結果では非麻痺側機能が選択されなかったが,在宅脳卒中片麻痺患者では長期の在宅生活から,動作を最適に行うために非麻痺側優位での動作へと適応した結果と推察した。急性期脳血管障害症例のトイレ動作では,麻痺側下肢機能を含めた抗重力伸展活動による立位姿勢保持が下衣の着脱に関与しており,SIASの麻痺側下肢機能とBBSの立位保持の項目がトイレ動作の関連因子として選択されたと推察した。着座の項目に関しては,着座動作は重力による臀部落下とそれに伴う膝関節屈曲を大腿四頭筋,前脛骨筋,傍脊柱筋の働きにて抑えながら行う動作である。立ち上がり動作と比較して下肢筋群の遠心性収縮を必要とするために動作の難易度が高く,トイレ動作の関連因子として選択されたと推察した。
【理学療法学研究としての意義】急性期脳血管症例のトイレ動作獲得に関連する因子として,BBSの着座,立位保持,SIASの下肢,筋緊張が選択された。トイレ動作獲得を進めていく上で,治療介入時の指標となる可能性があると考えられた。今後は,回復期や在宅でのBBS・SIASとトイレ動作との関連について検討するとともに,トイレ動作獲得に向けての介入方法も検討していく。
【方法】対象は当院に入院した急性期脳血管症例55名(平均年齢68.2±13.4歳)で,疾患別では脳梗塞37名,脳出血18名であった。評価項目は,発症後2週時のBBS,SIASおよびFIMのトイレ動作とした。SIASの下位項目は,膝口テストおよび手指テストの和を上肢麻痺側運動機能,股関節屈曲テストおよび膝関節伸展テストの和を下肢麻痺側運動機能,上肢および下肢腱反射と上肢および下肢筋緊張の和を筋緊張,上肢および下肢触覚と上肢および下肢位置覚の和を感覚機能,上肢および下肢関節可動域を関節可動域,疼痛,腹筋力および垂直性の和を体幹機能,視空間認知,言語機能,非麻痺側膝伸展筋力および握力の和を非麻痺側機能として算出した。統計学的分析はSPSS.statistics21.0(IBM)を使用し,従属変数をFIMのトイレ動作,独立変数をBBSおよびSIASの下位項目としてステップワイズ重回帰分析を用いてトイレ動作の関連因子を抽出し,有意水準5%未満とした。
【倫理的配慮】倫理的配慮として,高木病院の倫理委員会の承認(承認番号77-2)を得た後に実施した。
【結果】ステップワイズ重回帰分析の結果,トイレ動作の独立決定因子はBBSの着座(β1=0.40,p<0.05),SIASの下肢麻痺側運動機能(β2=0.40,p<0.05),BBSの立位保持(β3=0.34,p<0.05),SIASの筋緊張(β4=-0.14,p<0.05)が選択され,調整済みR2は0.953,B=1.10となった(Y=1.10+0.40x1+0.40 x2+0.34 x3-0.14 x4)。選択された因子間の多重共線性は認められなかった。
【考察】本研究の結果,急性期脳血管障害症例のトイレ動作に関連する因子は,SIASの麻痺側下肢機能と筋緊張,BBSの着座と立位保持であることが示された。トイレ動作は,立位保持,下衣の着脱操作,着座,陰部の清拭,立ち上がりから構成されている。岩田らは,下肢StageIIIの在宅脳卒中片麻痺患者の排泄動作において,健側上下肢筋力と立位での下衣操作能力との間に中等度の相関が認められたと報告している。今回の分析結果では非麻痺側機能が選択されなかったが,在宅脳卒中片麻痺患者では長期の在宅生活から,動作を最適に行うために非麻痺側優位での動作へと適応した結果と推察した。急性期脳血管障害症例のトイレ動作では,麻痺側下肢機能を含めた抗重力伸展活動による立位姿勢保持が下衣の着脱に関与しており,SIASの麻痺側下肢機能とBBSの立位保持の項目がトイレ動作の関連因子として選択されたと推察した。着座の項目に関しては,着座動作は重力による臀部落下とそれに伴う膝関節屈曲を大腿四頭筋,前脛骨筋,傍脊柱筋の働きにて抑えながら行う動作である。立ち上がり動作と比較して下肢筋群の遠心性収縮を必要とするために動作の難易度が高く,トイレ動作の関連因子として選択されたと推察した。
【理学療法学研究としての意義】急性期脳血管症例のトイレ動作獲得に関連する因子として,BBSの着座,立位保持,SIASの下肢,筋緊張が選択された。トイレ動作獲得を進めていく上で,治療介入時の指標となる可能性があると考えられた。今後は,回復期や在宅でのBBS・SIASとトイレ動作との関連について検討するとともに,トイレ動作獲得に向けての介入方法も検討していく。