第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 神経理学療法 ポスター

脳損傷理学療法6

Fri. May 30, 2014 1:30 PM - 2:20 PM ポスター会場 (神経)

座長:髙見彰淑(弘前大学大学院保健学研究科)

神経 ポスター

[0292] 回復期脳卒中片麻痺患者のトイレ動作自立における立位バランス能力の検討

米持利枝1, 柴辰典1, 永木健司1, 江西一成2 (1.第一なるみ病院リハビリテーション科, 2.星城大学リハビリテーション学部)

Keywords:脳卒中片麻痺, トイレ動作, 立位バランス

【はじめに】
脳卒中片麻痺患者の自宅復帰にはトイレ動作の獲得が必須条件である。そして,トイレ動作は複合動作であるため獲得が困難な動作の一つでもある。
我々は第20・21回愛知県理学療法学術大会,第29回東海北陸理学療法学術大会において,トイレ動作自立には麻痺の重症度,高次脳機能障害,バランス能力などが関連し,なかでも,立位バランス能力の重要性を報告した。
今回,麻痺重症度,高次脳機能障害の影響を除外し,実用歩行困難な回復期脳卒中片麻痺患者のトイレ動作自立における立位バランスの能力について検討を行った。
【方法】
2010年4月~2013年11月までに当院回復期病棟に入院した脳卒中片麻痺患者125名のうち,歩行が自立に至っていない下肢Brunnstrom StageIIIまたはIVに相当する片麻痺患者27名(男性15名/女性12名,平均年齢68±11歳,発症からの期間34±19日,麻痺側右16名/左11名)を対象とした。
なお,除外基準は歩行に影響を及ぼす整形外科疾患,指示理解が困難な精神機能障害,排泄が失禁状態である者とした。
そして,検査を安定的に行える入院後4~6週目に測定・調査を行った。
測定項目は筋力の指標として非麻痺側膝伸展筋力をハンドヘルドダイナモメーターで同一検者が測定した。肢位は膝90°屈曲位,下腿遠位に固定用ベルトでセンサーを装着し,最大努力下での等尺性膝伸展筋力を2回測定した。そのうち最大値を体重で除して(N/kg)検討に用いた。
バランス能力の指標はBerg Balance Scale(以下BBS)とした。
対象のトイレ動作能力をFIM細項目から自立群(7・6点11名),非自立群(5点以下16名)に分類した。
検討項目はトイレ動作自立・非自立群間において非麻痺側膝伸展筋力,BBS総得点,BBS各テスト項目の4点獲得率,さらに4点獲得率で差のあった項目の総得点において比較検討を行った。
統計処理はt-検定,χ2検定を用い,危険率5%未満を有意とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は星城大学研究倫理専門委員会の承認を受け,被験者には研究の趣旨と方法を十分に説明し,書面で同意を得たのち行った。
【結果】
非麻痺側膝伸展筋力は自立群(38.1±17.4N/kg),非自立群(41.9±10.4N/kg)であり,両群間に有意な差を認めなかった。
BBS総得点は自立群(40±8.2点),非自立群(22±11.4点)であり,自立群は有意に高い得点を示し,自立群は良好なバランス能力を有していた。
BBS各テスト項目における4点獲得率の対比では,自立群は「閉眼で支えなしで立位保持(以下閉眼立位)」,「立位から座位まで腰を降ろす(以下着座)」,「移乗」,「座位からの立ち上がり(以下起立)」,「支えなしで静止立位保持(以下立位保持)」の5項目では80%以上の獲得率であったのに対し,非自立群は50%以下であり,両群間に有意な差を認めた。
また,「両足を揃えた立位の保持(以下閉脚立位)」,「片足立ち」では自立群の獲得率は40%以下であったが,非自立群は5%以下であり両群間に際立った差を認めた。
さらに,残る6項目では自立群の獲得率が高い傾向あったものの有意ではなく,「背もたれなしで座位を保持」においても両群ともに全員可能で差がなかった。
そして,4点獲得率において差のあった閉眼立位,着座,移乗,起立,立位保持,閉脚立位,片足立ちの7項目(満点28点)の総得点では自立群(24.1±3点),非自立群(12.6±7.6点)であり,自立群は7項目いずれも満点を含んだ何らかの方法で遂行可能であったが,非自立群では7項目いずれかの項目で遂行不可の項目があり,両群間の立位動作能力に有意な差を認めた。
【考察】
今回の結果から,実用歩行困難かつ下肢Br.SIIIおよびIVの回復期脳卒中片麻痺患者のトイレ動作自立における立位バランス能力の要因として,非麻痺側筋力および座位保持能力はトイレ動作遂行に必要最低限の要因であり,着座,移乗,閉眼立位,起立,立位保持の5項目に相当する立位バランス能力はトイレ動作自立の決定的要因であることが示された。
また,狭い支持基底面内での姿勢保持能力もトイレ動作自立に影響することが推察された。
一方,トイレ動作非自立群の特徴は,下肢での体重支持を基本とした立位バランス能力が明らかに低いことであると示唆された。
したがって,実用歩行困難な回復期脳卒中片麻痺患者のトイレ動作自立における立位バランス能力は下肢での体重支持を基本とした姿勢保持および動的な立位バランス能力の獲得であることが考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
実用歩行困難な回復期脳卒中片麻痺患者の自宅復帰にはトイレ動作の自立が必須条件である。
そのため,今回の研究をさらに深めていくことで脳卒中片麻痺患者のトイレ動作獲得に貢献する理学療法内容の効果的手法を提案できる可能性がある。