[0306] 当院救命救急センターにおける呼吸理学療法の現状
Keywords:呼吸理学療法, 人工呼吸器, 移動能力
【はじめに,目的】
当院は2013年4月より救命救急センターとして指定されており,今後,救急患者の受け入れが増加し,理学療法士が対象とする患者像は高齢化・重症化してくることが予想される。このような背景より,救命救急センターにて人工呼吸器管理を要した呼吸器疾患患者の転帰や,その要因を調査することは重要ある。
本研究は当院救命救急センターにおける,人工呼吸器装着患者に対しての理学療法の現状と,患者特徴を明らかにすることを目的とした。
【方法】
2012年1月から2013年8月までで,呼吸器疾患により救命救急センターに入室し,人工呼吸器管理となった患者を対象とし,後方視的に調査した。
調査項目は基礎情報として性別,年齢,入院前の移動能力,臨床所見として人工呼吸器装着期間中のPaO2/FiO2(以下P/F)最低値,アルブミン最低値,カテコラミン使用の有無とした。また経過として人工呼吸器装着日数,救命救急センター在室日数,在院日数,退院時の移動能力,転帰,人工呼吸器装着下での理学療法実施の有無と人工呼吸器装着から理学療法開始までの日数(以下,PT介入までの期間)とした。
人工呼吸器装着下での理学療法を実施した群(以下装着群),人工呼吸器離脱後に理学療法を実施した群(以下抜管群)の2群に分け,年齢,P/F最低値,アルブミン最低値,人工呼吸器装着日数,救命救急センター在室日数,在院日数,PT介入までの期間をMann-WhitneyのU検定を使用し,比較・検討した。また退院時の移動能力において入院時の移動能力と比較した時の低下の有無,カテコラミン使用の有無とともにχ2検定を使用し,比較・検討した。
統計学上の有意水準は5%とした。また演算にはJSTAT for windowsを使用した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究である。
【結果】
対象患者は48例であった。年齢は74.6±9.4(平均±標準偏差)歳,男性35例,女性13例であった。
各調査項目について中央値±標準偏差で示す。P/F最低値101.4±75.3,アルブミン最低値1.9±0.4g/dl,人工呼吸器装着日数6.5±21.9日,救命救急センター在室日数8.0±7.9日,在院日数24.5±0.4日であった。カテコラミンを使用した患者は29例,未使用患者は19例であった。入院前移動能力は屋外歩行27例,屋内歩行12例,介助歩行5例,車いす移動3例,ベッド上が1例であった。退院時の移動能力として屋外歩行5例,屋内歩行15例,介助歩行3例,車いす移動9例,ベッド上16例であった。移動能力低下のあった患者は36例であった。転帰先は自宅退院26例,転院5例,施設入所2例,死亡15例であった。
理学療法処方があった患者は42例,未処方例は6例で,全例死亡であった。装着群は26例,抜管群は16例であった。PT介入までの期間は4.0±3.0日であった。
装着群と抜管群の比較・検討について結果を示す(装着群vs抜管群)。年齢(74.0±8.2vs79.0±6.9歳:p<0.05),P/F最低値(70.9±58.4vs175.9±76.7:p<0.01),アルブミン最低値(1.8±0.4vs2.1±0.5g/dl:p<0.05),人工呼吸器装着日数(11.5±27.3vs3.5±3.0日:p<0.01),救命救急センター在室日数(11.0±9.0vs3.5±3.0日:p<0.05),在院日数(39.5±48.0vs27.0±26.5日:p=0.24),PT介入までの期間は(3.0±2.8vs6.0±2.8日:p<0.01)であった。カテコラミンの有無について,装着群でカテコラミン使用例は18例,抜管群では7例であり,カテコラミンの有無において有意差は認めなかった(p=0.10)。歩行能力低下の有無について,装着群で19例,抜管群で12例であり有意差は認めなかった(p=0.89)。
【考察】
本研究の対象患者は平均74.6歳と高齢であり,P/F最低値,アルブミン最低値などから重症例が多いと考えられる。また入院前に歩行が可能な患者は44例に対し,退院時には23例と減少した。本研究の患者特徴として,高齢であることに加えて,人工呼吸器装着という侵襲的な処置,臥床期間の長期化から,退院ができた患者であっても移動能力の低下をきたしていることが考えられる。
結果より装着群の特徴として,抜管群と比べて重症例であることが伺えた。しかし,在院日数や移動能力の低下において,装着群と抜管群との間に有意差を認めなかった。またPT介入までの期間では,両群に有意差を認めており,装着群が3日後,抜管群は6日後より介入していた。このことから,早期から理学療法介入を行うことで,入院前移動能力の獲得,在院日数の短縮に寄与できたと考えられる。また抜管群においても,より早期から理学療法を実施することで移動能力の維持を図ることや,在院日数の短縮が図れることが考えられるため今後の課題としたい。
【理学療法学研究としての意義】
人工呼吸器装着患者における,早期理学療法介入の有用性が示唆された。
当院は2013年4月より救命救急センターとして指定されており,今後,救急患者の受け入れが増加し,理学療法士が対象とする患者像は高齢化・重症化してくることが予想される。このような背景より,救命救急センターにて人工呼吸器管理を要した呼吸器疾患患者の転帰や,その要因を調査することは重要ある。
本研究は当院救命救急センターにおける,人工呼吸器装着患者に対しての理学療法の現状と,患者特徴を明らかにすることを目的とした。
【方法】
2012年1月から2013年8月までで,呼吸器疾患により救命救急センターに入室し,人工呼吸器管理となった患者を対象とし,後方視的に調査した。
調査項目は基礎情報として性別,年齢,入院前の移動能力,臨床所見として人工呼吸器装着期間中のPaO2/FiO2(以下P/F)最低値,アルブミン最低値,カテコラミン使用の有無とした。また経過として人工呼吸器装着日数,救命救急センター在室日数,在院日数,退院時の移動能力,転帰,人工呼吸器装着下での理学療法実施の有無と人工呼吸器装着から理学療法開始までの日数(以下,PT介入までの期間)とした。
人工呼吸器装着下での理学療法を実施した群(以下装着群),人工呼吸器離脱後に理学療法を実施した群(以下抜管群)の2群に分け,年齢,P/F最低値,アルブミン最低値,人工呼吸器装着日数,救命救急センター在室日数,在院日数,PT介入までの期間をMann-WhitneyのU検定を使用し,比較・検討した。また退院時の移動能力において入院時の移動能力と比較した時の低下の有無,カテコラミン使用の有無とともにχ2検定を使用し,比較・検討した。
統計学上の有意水準は5%とした。また演算にはJSTAT for windowsを使用した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究である。
【結果】
対象患者は48例であった。年齢は74.6±9.4(平均±標準偏差)歳,男性35例,女性13例であった。
各調査項目について中央値±標準偏差で示す。P/F最低値101.4±75.3,アルブミン最低値1.9±0.4g/dl,人工呼吸器装着日数6.5±21.9日,救命救急センター在室日数8.0±7.9日,在院日数24.5±0.4日であった。カテコラミンを使用した患者は29例,未使用患者は19例であった。入院前移動能力は屋外歩行27例,屋内歩行12例,介助歩行5例,車いす移動3例,ベッド上が1例であった。退院時の移動能力として屋外歩行5例,屋内歩行15例,介助歩行3例,車いす移動9例,ベッド上16例であった。移動能力低下のあった患者は36例であった。転帰先は自宅退院26例,転院5例,施設入所2例,死亡15例であった。
理学療法処方があった患者は42例,未処方例は6例で,全例死亡であった。装着群は26例,抜管群は16例であった。PT介入までの期間は4.0±3.0日であった。
装着群と抜管群の比較・検討について結果を示す(装着群vs抜管群)。年齢(74.0±8.2vs79.0±6.9歳:p<0.05),P/F最低値(70.9±58.4vs175.9±76.7:p<0.01),アルブミン最低値(1.8±0.4vs2.1±0.5g/dl:p<0.05),人工呼吸器装着日数(11.5±27.3vs3.5±3.0日:p<0.01),救命救急センター在室日数(11.0±9.0vs3.5±3.0日:p<0.05),在院日数(39.5±48.0vs27.0±26.5日:p=0.24),PT介入までの期間は(3.0±2.8vs6.0±2.8日:p<0.01)であった。カテコラミンの有無について,装着群でカテコラミン使用例は18例,抜管群では7例であり,カテコラミンの有無において有意差は認めなかった(p=0.10)。歩行能力低下の有無について,装着群で19例,抜管群で12例であり有意差は認めなかった(p=0.89)。
【考察】
本研究の対象患者は平均74.6歳と高齢であり,P/F最低値,アルブミン最低値などから重症例が多いと考えられる。また入院前に歩行が可能な患者は44例に対し,退院時には23例と減少した。本研究の患者特徴として,高齢であることに加えて,人工呼吸器装着という侵襲的な処置,臥床期間の長期化から,退院ができた患者であっても移動能力の低下をきたしていることが考えられる。
結果より装着群の特徴として,抜管群と比べて重症例であることが伺えた。しかし,在院日数や移動能力の低下において,装着群と抜管群との間に有意差を認めなかった。またPT介入までの期間では,両群に有意差を認めており,装着群が3日後,抜管群は6日後より介入していた。このことから,早期から理学療法介入を行うことで,入院前移動能力の獲得,在院日数の短縮に寄与できたと考えられる。また抜管群においても,より早期から理学療法を実施することで移動能力の維持を図ることや,在院日数の短縮が図れることが考えられるため今後の課題としたい。
【理学療法学研究としての意義】
人工呼吸器装着患者における,早期理学療法介入の有用性が示唆された。