第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 口述 » 生活環境支援理学療法 口述

健康増進・予防4

Fri. May 30, 2014 2:25 PM - 3:15 PM 第6会場 (3F 304)

座長:井口茂(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻)

生活環境支援 口述

[0309] 運動習慣のある地域在住中高齢者における運動非継続者の特徴

畠山浩太郎1, 植田拓也2,3, 前田悠紀人4, 柴喜崇3,5 (1.農協共済中伊豆リハビリテーションセンターリハビリテーション部理学療法科, 2.医療法人社団涓泉会山王リハビリ・クリニック, 3.桜美林大学加齢・発達研究所, 4.港北整形外科, 5.北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科理学療法学専攻)

Keywords:運動習慣, 地域在住高齢者, 健康増進

【はじめに,目的】
我が国では世界でも類を見ない速度で少子化及び高齢化が進み,平成22年に高齢化率23.1%という超高齢化社会に突入した。今後さらに平均寿命は伸長すると予測され,健康寿命の延伸を図らなければ,医療費や社会保障負担の増大は避けられない。先行研究では,高齢者の身体機能を維持するために運動習慣の存在(Carolee 2003)や運動実施頻度の程度(田口2008)が重要であるとされている。厚生労働省では「運動習慣がある者」を,「少なくとも週2回以上,1回につき30分以上の運動を1年間以上続けている者」と定義しているが,近年,国民の健康に対する意識が高まり,運動習慣のある者の割合は増加している。こうした社会的背景において,今回,地域の自主参加型運動グループを対象に,こうした運動に参加しなくなる者の特徴を調べることを目的に研究を行った。
【方法】
対象は,神奈川県相模原市R公園のラジオ体操会会員に対する平成23年度の調査への参加者のうち,体力測定とアンケートの全項目に対する有効回答を得られた91名(平均年齢71.8±5.68歳,男性47名,女性44名)とした。本研究では,対象を,その後少なくとも2年連続で本調査への参加が無かった群及びその他の群との2群に分け,前者を非継続群,後者を継続群とした。平成23年度ベースライン調査時の,ラジオ体操を含む定期的な運動の継続期間及び実施頻度,開眼片脚立位時間,握力,立位体前屈,Timed Up and Go test(以下TUG),5m最大歩行速度,5m快適歩行速度,等尺性膝伸展筋力,高次の手段的日常生活活動の指標として老健式活動能力指標(Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology,以下TMIG)及びFrenchay Activities Index(以下FAI)を,転倒に関する自己効力感として国際版転倒自己効力感尺度(the Falls Efficacy Scale-International,以下FES-I),そして生活の質(Quality of Life,以下QOL)を表す精神的健康度としてWHO-5精神的健康状態表(以下WHO5)を調査し,各項目における群間比較を行った。2群間の比較には,マンホイットニーのU検定または対応の無いt検定を行い,有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
参加者には,書面及び口頭にて,本研究の内容について十分に説明し,自署にて研究参加への同意を得た。本研究は共同研究者所属機関の倫理委員会の承認を得て行った。
【結果】
非継続群23名(平均年齢71.0±6.73歳,男性12名,女性11名)の運動継続年数1年以上の者22名(96%),継続群68名(平均年齢72.0±5.31歳,男性35名,女性33名)の継続年数1年以上の者が59名(87%)であった。2群間で年齢,性別,運動継続年数,運動実施頻度において有意差はなく,運動実施頻度は,いずれの群においても週4日以上の者が87%を占めていた。両群の比較において,非継続群は継続群よりも,TUG(p=0.0097),5m快適歩行速度(p=0.0125),膝伸展筋力(p=0.0353)の値が有意に低かったが,そのほかの項目については有意差が見られなかった(n.s.)。
【考察】
非継続群,継続群,ともに運動の実施頻度,継続年数において,厚生労働省の定義による「運動習慣がある」といえた。運動習慣がありながら,定期的な運動に参加しなくなる者は,Lawtonによる高齢者の能力に関する7段階論では高位にあたる,手段的自立などの項目には差が見られなかったが,より低位の機能的な項目が,運動を継続していた群よりも有意に低値を示しており,動的バランスや下肢機能といった,移動能力に直接関わる項目が低下していた。先行研究では,運動定着群では運動時間や近所へ外出する頻度が多い(牧迫2008),転倒,外出頻度,運動習慣においてTUGと有意な関係が認められた(島田2006),外出には実用的な歩行機能が必要である(鈴川2010),というように,運動習慣や歩行機能と外出についての関連が示されている。ラジオ体操会への参加には外出を伴うため,非継続群は,移動能力の低下が外出頻度の低下を招きラジオ体操会への参加をしなくなったと考えることができる。健康日本21における,身体活動や運度に対する意識や態度についての評価では,身体活動や運動に意欲的な者は増えたが,実際にはできていないとされている。今回の調査におけるラジオ体操会の非継続群においても,運動に対して意欲的でも,移動能力といった身体機能面の低下が,これまで高頻度で長年続けてきた運動に参加しなくなるという事態を招く可能性があることを示唆しているといえる。
【理学療法学研究としての意義】
超高齢化社会の我が国において,運動習慣を有する者に運動の非継続者の特徴についての知見を提供する点において意義があり,疾病予防,健康増進,介護予防の分野で専門職として活躍するための一助になるといえる。