第49回日本理学療法学術大会

Presentation information

発表演題 ポスター » 基礎理学療法 ポスター

運動制御・運動学習7

Fri. May 30, 2014 2:25 PM - 3:15 PM ポスター会場 (基礎)

座長:上原信太郎(情報通信研究機構脳情報通信融合研究センター)

基礎 ポスター

[0333] 聴覚刺激の刺激間隔の変化がリズムの予測に基づく反応運動に及ぼす影響

高橋優基1,2, 藤原聡3, 伊藤正憲3, 嘉戸直樹3, 鈴木俊明2 (1.名谷病院リハビリテーション科, 2.関西医療大学大学院保健医療学研究科, 3.神戸リハビリテーション福祉専門学校理学療法学科)

Keywords:リズム, 予測, 筋電図反応時間

【目的】我々は先行研究において,1500msを基本間隔とした周期的な聴覚刺激の刺激系列の最後の刺激間隔を,刺激のリズムが変わったと気づけない1425ms(1500msを5%短縮)または1575ms(5%延長)に変化させても,筋電図反応時間(EMG-RT:electromyographic reaction time)は遅延しないことを明らかにした。一方で,明らかにリズムが変わったと気づく1200ms(20%短縮)または1800ms(20%延長)に変化させると,EMG-RTは有意に遅延した。このことから,基本間隔の前後数10msには予測の範疇に収まるある程度の時間の幅が存在し,周期的なリズムの予測機構が機能することで円滑な反応運動は維持されると考察した。本研究では,1500msを基本間隔とし,その5%から20%の範囲で刺激間隔が変化する刺激系列がリズムの予測に基づく反応運動に及ぼす影響についてEMG-RTを用いて検討した。
【方法】対象は利き足が右の健常者13名(男性10名,女性3名,平均年齢28.4±7.3歳)とした。実験機器はテレメトリー筋電計MQ8(キッセイコムテック株式会社)を使用した。聴覚刺激はSoundTrigger2Plus(キッセイコムテック株式会社)で設定した。聴覚刺激の刺激条件は刺激周波数を900Hzとし,刺激強度は対象者が明瞭に聴き取れる適切な大きさに設定した。聴覚刺激の刺激回数は連続10回とした。対象者は端座位で聴覚刺激を合図にできるだけ素早く右足関節を背屈する反応課題を実施し,右前脛骨筋より筋電図を記録した。条件設定は1500msの間隔の周期的な聴覚刺激を呈示するものを条件1,1500msの5%である75msの範囲の1463~1537msで刺激間隔をランダムに変化させるものを条件2,1500msの20%である300msの範囲の1350~1650msで刺激間隔をランダムに変化させるものを条件3とした。各条件は10試行ずつ,合計30試行をランダムに実施した。統計処理は反復測定一元配置分散分析とTukey-Kramerの多重比較検定を用い,各条件における1~10回目のEMG-RTの変化を検討した。有意水準は5%に設定した。
【説明と同意】対象者には本研究の目的と方法について書面と口頭で説明し,同意を得た。本研究は関西医療大学倫理委員会の承認(承認番号:13-27)を得て実施した。
【結果】条件1および2のEMG-RTは,1回目と比べて2回目以降,2回目と比べて3回目以降で有意に短縮した(p<0.01)。条件3のEMG-RTは,1回目と比べて2回目以降(p<0.01),2回目と比べて3回目(p<0.05)で有意に短縮し,3回目と比べて7回目以降で有意に遅延した(p<0.01)。
【考察】藤原らは,1回目の刺激が予告信号の役割を果たし上位中枢の動員による運動の準備状態が誘発されたことで,2回目と3回目のEMG-RTが短縮すると報告している。いずれの条件においても,次の刺激に対する中枢での運動の準備状態が高まっていたため,2回目と3回目のEMG-RTが短縮したと考えた。条件2では,1500msの5%である75msの範囲で刺激間隔が変化したが,4回目以降のEMG-RTは一定間隔で呈示した条件1と同様の変化を示した。藤原らは,周期的な刺激に対する反応課題に関して,4回目以降は予測に基づく反応が可能になると報告している。また,我々は,周期的なリズムの予測に関して,基本間隔の前後数10msに予測の範疇に収まるある程度の時間の幅が存在することを明らかにした。75msの範囲で刺激間隔が変化したが,4回目以降も基本間隔の前後数10msにある程度の時間の幅をもって予測し,リズムに対する予測機構が機能していたため,円滑な反応運動を維持できたと考えた。条件3では,1500msの20%である300msの範囲で刺激間隔が変化した。Thautは,基本間隔の20%の変化はリズムが変わったことに気づくと報告している。4~6回目では刺激間隔の変化に気づいたことで予測が乱され,7回目以降は予測が成り立たず反応が遅れたと考えた。
【理学療法学研究としての意義】1500ms間隔であれば,75ms以内で刺激間隔が変化しても一定間隔で呈示した場合と同じように運動の周期性は維持され,円滑な反応運動を遂行できる。一方で,20%まで刺激間隔が変化するとリズムを予測できず,反応運動において運動の周期性を乱す要因となる。今後は,刺激間隔がどの程度まで変化すると反応運動に影響を及ぼすか詳細な検討が必要である。