[0346] 市中肺炎患者の理学慮法介入におけるADL改善と帰結に影響する要因の検討
Keywords:市中肺炎患者, FIM利得, 退院時の帰結
【はじめに,目的】
肺炎は,平成24年の死因順位別にみると心疾患に続き第3位で,日本呼吸器学会では「2007年成人市中肺炎のガイドライン」が作成され,迅速に病態を把握し治療する試みがされている。その中で,一般療法として適正な抗菌化学療法に安静,栄養,呼吸管理等の全身管理が記載されているが,リハビリテーションに関する直接的な項目はない。今回,市中肺炎患者における,理学療法介入によるADL改善と帰結に影響する要因を検討し,効果的な理学療法プロトコール作成の一助となることを目的とした。
【方法】
対象は,2011年9月1日から2012年3月31日までに当院で市中肺炎と診断され,入院加療した218例中,理学療法介入し除外基準を満たした124例(男性64例,女性60例)平均年齢79.8±8.7とした。除外基準は,①死亡例②病前の日常生活自立度判定基準がCランクの症例③天井効果により,FIM利得が正確な指標とはならないとされている入院時FIMが108~126点の症例とした。入退院時のFIM利得にて,アウトカム到達群(14点以上)と非到達群(14点未満)の2群に分類し,後方視的に年齢,性別,BMI,ALB,CRP及びWBC,リハ介入時期(入院より理学療法開始までの期間),離床期間(車いす等で20分座位保持可能までの期間),入院時FIM,退院時FIM,1日平均単位数,PSI(市中肺炎重症度スコア),抗菌薬の投与期間,在院日数,総入院費用を調査した。アウトカムのFIM利得の設定根拠として,平成22年度日本リハビリテーショ病院施設協会の疾患別全国平均点数を参考とした。在宅復帰の定義は,介護老人保健施設を除く介護施設や自宅への復帰とする。解析は,2群間はマンホイットニーU検定,カイ2乗検定を用いてアウトカム到達群,非到達群と各項目の関連性について検討した。それに加えて,関連のみられた項目より在宅復帰を従属変数とするロジステック解析分析を行い,オッズ比(OR),95%信頼区間(CI)を算定した。いずれも有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
データーの収集,解析にあたり匿名化,個人情報保護,研究成果の公表等に厚生労働省の疫学研究に関する倫理指針(平成19年8月16日全部改正)に従って対応した。
【結果】
アウトカム到達群と非到達群の比較では,年齢(76.7±6.1歳,83.2±6.4歳),ALB(3.4±0.4,2.5±0.3),介入時期(2.5±4.2日,4.2±8.2日),離床開始期間(4.2±3.8日,11.7±4.6日),1日平均単位数(5.15±2.2,2.4±1.2),退院時FIM(84.6±12.4,65.8±6.4),CRP平均値(0.7±0.5,2.45±1.71),重症度(98.4±23.6,86.3±7.7)で有意差がみられた(以上到達群,非到達群)。在宅復帰については,退院時FIM(OR:2.725,CI 1.372~5.516),年齢(OR 1.075,CI 1.012~1.114)離床期間(OR 3.784,CI 1.878~8.325),PSI(OR 2.325,CI 1.115~5.448)との関連がみられた。(いずれもP<0.05)
【考察】
入江は,市中肺炎患者には理学療法士自ら介入目的を定め,可及的かつ適切な負荷の理学療法が肺炎患者に提供できなければならないと述べている。当院の理学療法プログラムとしては,リスク管理下での早期からの適切なポジショニングを含めた呼吸管理,モビライゼーション,運動療法(レジスタンストレーニング,持久力トレーニング),ADL練習などを実施している。今回の調査で,退院時の帰結には社会的背景などの多面的な側面が影響するが,年齢や全身状態,重症度を考慮した理学療法介入で,一定時間の座位保持を早期に獲得できることが,ADL改善に結びつき,在宅復帰につながる可能性が示唆された。さらに,全身状態安定していれば,充実したリハビリテーション提供もADL獲得には効果的である。CRP値は全身状態を反映し,理学療法進行・中止の指標となるため,高値を示す場合は離床時期や運動負荷量を検討する必要がある。また,適切な抗菌化学療法との併用は,理学療法の効果を高め,ADL改善にも有効であると思われる。市中肺炎のリハビリテーションにおいては,多職種での包括的な取り組みや連携が必要である。今後は,多施設間共同研究も視野に入れ,ガイドラインに記載されるような市中肺炎の理学療法プロトコール確立を目指していきたい。
【理学療法学研究としての意義】
市中肺炎患者の理学療法介入における,ADL改善と帰結に影響する要因を検討することで,在宅復帰に向けて治療プログラムの正確なアウトカムが設定でき,効果的な理学療法の提供が可能になると思われる。
肺炎は,平成24年の死因順位別にみると心疾患に続き第3位で,日本呼吸器学会では「2007年成人市中肺炎のガイドライン」が作成され,迅速に病態を把握し治療する試みがされている。その中で,一般療法として適正な抗菌化学療法に安静,栄養,呼吸管理等の全身管理が記載されているが,リハビリテーションに関する直接的な項目はない。今回,市中肺炎患者における,理学療法介入によるADL改善と帰結に影響する要因を検討し,効果的な理学療法プロトコール作成の一助となることを目的とした。
【方法】
対象は,2011年9月1日から2012年3月31日までに当院で市中肺炎と診断され,入院加療した218例中,理学療法介入し除外基準を満たした124例(男性64例,女性60例)平均年齢79.8±8.7とした。除外基準は,①死亡例②病前の日常生活自立度判定基準がCランクの症例③天井効果により,FIM利得が正確な指標とはならないとされている入院時FIMが108~126点の症例とした。入退院時のFIM利得にて,アウトカム到達群(14点以上)と非到達群(14点未満)の2群に分類し,後方視的に年齢,性別,BMI,ALB,CRP及びWBC,リハ介入時期(入院より理学療法開始までの期間),離床期間(車いす等で20分座位保持可能までの期間),入院時FIM,退院時FIM,1日平均単位数,PSI(市中肺炎重症度スコア),抗菌薬の投与期間,在院日数,総入院費用を調査した。アウトカムのFIM利得の設定根拠として,平成22年度日本リハビリテーショ病院施設協会の疾患別全国平均点数を参考とした。在宅復帰の定義は,介護老人保健施設を除く介護施設や自宅への復帰とする。解析は,2群間はマンホイットニーU検定,カイ2乗検定を用いてアウトカム到達群,非到達群と各項目の関連性について検討した。それに加えて,関連のみられた項目より在宅復帰を従属変数とするロジステック解析分析を行い,オッズ比(OR),95%信頼区間(CI)を算定した。いずれも有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
データーの収集,解析にあたり匿名化,個人情報保護,研究成果の公表等に厚生労働省の疫学研究に関する倫理指針(平成19年8月16日全部改正)に従って対応した。
【結果】
アウトカム到達群と非到達群の比較では,年齢(76.7±6.1歳,83.2±6.4歳),ALB(3.4±0.4,2.5±0.3),介入時期(2.5±4.2日,4.2±8.2日),離床開始期間(4.2±3.8日,11.7±4.6日),1日平均単位数(5.15±2.2,2.4±1.2),退院時FIM(84.6±12.4,65.8±6.4),CRP平均値(0.7±0.5,2.45±1.71),重症度(98.4±23.6,86.3±7.7)で有意差がみられた(以上到達群,非到達群)。在宅復帰については,退院時FIM(OR:2.725,CI 1.372~5.516),年齢(OR 1.075,CI 1.012~1.114)離床期間(OR 3.784,CI 1.878~8.325),PSI(OR 2.325,CI 1.115~5.448)との関連がみられた。(いずれもP<0.05)
【考察】
入江は,市中肺炎患者には理学療法士自ら介入目的を定め,可及的かつ適切な負荷の理学療法が肺炎患者に提供できなければならないと述べている。当院の理学療法プログラムとしては,リスク管理下での早期からの適切なポジショニングを含めた呼吸管理,モビライゼーション,運動療法(レジスタンストレーニング,持久力トレーニング),ADL練習などを実施している。今回の調査で,退院時の帰結には社会的背景などの多面的な側面が影響するが,年齢や全身状態,重症度を考慮した理学療法介入で,一定時間の座位保持を早期に獲得できることが,ADL改善に結びつき,在宅復帰につながる可能性が示唆された。さらに,全身状態安定していれば,充実したリハビリテーション提供もADL獲得には効果的である。CRP値は全身状態を反映し,理学療法進行・中止の指標となるため,高値を示す場合は離床時期や運動負荷量を検討する必要がある。また,適切な抗菌化学療法との併用は,理学療法の効果を高め,ADL改善にも有効であると思われる。市中肺炎のリハビリテーションにおいては,多職種での包括的な取り組みや連携が必要である。今後は,多施設間共同研究も視野に入れ,ガイドラインに記載されるような市中肺炎の理学療法プロトコール確立を目指していきたい。
【理学療法学研究としての意義】
市中肺炎患者の理学療法介入における,ADL改善と帰結に影響する要因を検討することで,在宅復帰に向けて治療プログラムの正確なアウトカムが設定でき,効果的な理学療法の提供が可能になると思われる。