第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 内部障害理学療法 ポスター

呼吸4

2014年5月30日(金) 14:25 〜 15:15 ポスター会場 (内部障害)

座長:石川朗(神戸大学大学院保健学研究科地域保健学領域)

内部障害 ポスター

[0350] 重症心身障害児・者や神経筋疾患患者に対する在宅NPPV導入への関わり

古田哲朗1, 貫井幸恵1, 高木秀明1, 我妻裕美1, 森田昌男2 (1.船橋二和病院リハビリテーション科, 2.船橋二和病院小児科)

キーワード:重症心身障害児・者, 神経筋疾患, NPPV

【はじめに,目的】
在宅で非侵襲的人工呼吸器(以下NPPV)を使用している人数は,年々増加しているが,理学療法士(以下PT)がNPPV導入に関わるかは施設によって異なる。
当院でも,数年前から,呼吸に問題を抱えている重症心身障害児・者や神経筋疾患患者に対して,在宅でのNPPV導入が行われ,PTも関わることもあったが,関わりにばらつきがあり,導入後の管理も十分にされていなかった。そこで,医師,看護師,PTでチームを編制し,在宅でのNPPV導入とその後の管理を当院で実施していく取り組みが2013年度から開始された。その中で,NPPV導入の際にPTという職種が関わる意義は大きいと感じてきた。
今回,これらの取り組みでのPTの役割や介入意義をまとめるとともに,NPPV導入が行われた症例の特徴や,どのような効果がみられたかを調べ,今後の課題をまとめることを本研究の目的とした。
【方法】
方法1)NPPV導入時の,取り組みの流れやPTの役割を,2012年度以前と2013年度以降とでまとめ,在宅導入率(導入を試みた全症例中,実際に在宅で使用された割合)を比較した。
方法2)対象を,2013年度以降に在宅NPPV導入目的で入院した重症心身障害児・者や神経筋疾患患者6名(平均年齢21.5歳/男性3名,女性3名)とした。まず,NPPV導入前の睡眠時のSpO2,tcPCO2,脈拍数などのバイタルサイン(以下,バイタル)を経皮酸素・二酸化炭素モニター(TOSCA®)にてデータ抽出した結果をまとめた。次いで,NPPV導入前後の睡眠時バイタルの平均値,最低値,最高値などをそれぞれ比較した。また,NPPV導入の目的や使用方法についてもまとめた。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究の実施にあたり,対象者またはご家族に十分な説明を行い,同意を得た。データをまとめる際には,シリアル番号で管理し,個人が特定できないように行った。
【結果】
結果1)2012年度以前はPTの役割が主に「マスクフィッティング」のみだったのに対し,チームが編制された2013年度以降は,「マスクフィッティング」に加え,「呼吸状態の評価」,「バイタルデータや呼吸器データの抽出,分析」,「呼吸器設定の検討」と,役割の幅も増え,入院中に医師,看護師と定期的に話し合う機会も設けられた。在宅導入率も,2012年度以前が80%だったのに対し,2013年度以降は100%となった。
結果2)NPPV導入前の睡眠時バイタルの結果は,低酸素血症(以下,低O2)のみみられた症例が1名,低O2と高二酸化炭素血症(以下,高CO2)のどちらもみられた症例が3名,問題がみられなかった症例が2名であった。導入前後での比較では,低O2の改善がみられた症例が4名,高CO2の改善がみられた症例が1名であった。NPPV導入の目的や使用方法については,睡眠時に低O2や高CO2がみられた症例は,その改善を目的に睡眠時に常時使用し,睡眠時バイタルに問題がない症例は,リハビリテーション目的(肺の伸展,換気促通,肺炎予防)で,夜間または日中の2~3時間程度の使用となった。
【考察】
導入率においては,2013年度以降は100%と,全症例に導入できる結果となった。チーム体制が整い,各職種の役割が明確になると共に,計画的に取り組めるようになったこと,PTの呼吸状態の評価が呼吸器設定に反映されるようになったこと,話し合う機会が定期的に作られたことで,評価結果の共有や相談が密に行われたことなどが要因であると考える。
バイタルの結果については,高CO2が改善したのは1名にとどまった。これは,十分な換気を促せるまでの呼吸器設定に至らなかったことが原因と思われる。どの症例も初めてのNPPV導入であり,はじめから高い圧で換気することで不快感につながることへの懸念やリーク量を抑えるため,慎重な圧設定になってしまったことが考えられた。導入時は,まずは継続的に使用できることを最優先に考えるが,主目的が低O2や高CO2の改善の場合は特に,入院中や導入後のフォローの中でどこまで最適呼吸器設定を追求していけるかが課題である。リハビリテーション目的での導入の効果については,呼吸器感染症での入院回数の減少などが指標になるため,長期的に調べていく必要があると考えた。
【理学療法学研究としての意義】
NPPV導入において,チームで関わることが重要であり,また,呼吸状態の評価をする機会が多いPTという職種が関わっていく意義は高いと考える。今回は症例数が少なかったため,統計的な効果検証はできなかったが,今後もNPPV使用者が増えていくことが予想される中,今後もデータを収集し,長期的な効果についても継続して調べていくとともに,PTが関わる意義を深めていきたい。