[0359] 回復期リハビリテーション病棟における脳血管疾患に対する日本語版STRATIFYを用いた転倒対策
キーワード:回復期, STRATIFY, 転倒
【はじめに,目的】
St. Thomas’s Risk Assessment Tool in Falling Elderly Inpatients(STRATIFY)は1997年にOliver Dが開発した転倒アセスメントシートである。2011年に日本語訳が紹介されて以降,日本においても使い始められており,その有用性について報告されている。当院の従来の転倒対策は,転倒症例に対してカンファレンスを開き,なぜ転倒に至ったかを検討し再転倒を防ぐことが主であった。一方STRATEFYは転倒リスクの高い症例を特定することができるため,病棟スタッフと情報を共有し,事前に転倒対策を立てることで転倒を減らすことが可能と考えた。当院では2012年5月より日本語版STRATIFY(以下:STRATIFY)を用いた転倒対策を回復期リハビリテーション病棟(以下:回復期リハ病棟)において実施している。研究の目的は,STRATIFYの感度と特異度について調査することと,従来型の転倒対策と比較してSTRATIFY導入後の有用性について検討することとした。
【方法】
対象者は2012年1月~11月までに当院の回復期リハ病棟に入院した脳血管疾患80名とした。2012年1月~4月までの期間に入院し従来型の転倒対策を行った群を従来群,2012年5月~11月までの期間に入院しSTRATIFYを用いて転倒対策を行った群をSTRATIFY群とした。従来群は34名であり,平均年齢77±11.5歳,男性15名・女性19名,平均入院期間は60.7±12.2日であった。STRATIFY群は46名であり,平均年齢73±12.1歳,男性21名・女性25名,平均入院期間は91.9±50.5日であった。
従来群は,転倒発生直後にリハビリテーション担当者・看護師・看護助手を含む病棟スタッフで転倒カンファレンスを開き,転倒に至った経緯を多面的に考察し対策を立てた。STRATIFY群は入棟時に担当理学療法士が評価し,5項目中2点以上を陽性とし,陽性者に対して転倒対策を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者にはヘルシンキ宣言に則り,本研究の主旨・目的を口頭にて説明し同意を得た。
【結果】
従来群の転倒者は34名中12名(35.3%)で転倒回数は18回であった。1回転倒者が10名,2回転倒した者が2名,4回転倒者が1名であった。STRATIFY群の転倒者は46名中8名(17.4%)であり,転倒回数は8回であった。STRATIFY導入後に転倒回数が減少する結果となった。
STRATIFY陽性は15名,陰性は31名であった。転倒者8名のうち6名が陽性であり,また非転倒者38名のうち29名が陰性であったことから感度は75.0%,特異度は76.3%であった。
【考察】
STRATIFYは質問項目か5項目と非常に少なく,また「はい=1」「いいえ=0」の2段階評価のため短時間で評価でき,検者間誤差が少く臨床的有用性が高いツールてあると報告されている。本研究においては,先行研究と比べて症例数は少なかったが,感度・特異度ともに70%以上と高い値を示した。このことから転倒アセスメントシートとして有用であると考えた。転倒の多くは病棟のベッドサイドやトイレで起こっていることから,転倒ハイリスク者はカルテやベッドサイドに表記し,カンファレンスや回診時に病棟スタッフに直接伝えるようにした。今回STRATIFYを用いることで,転倒ハイリスク者を早期に特定することができ,入棟時に転倒対策を立てたことと,病棟スタッフと情報共有ができたことで,転倒に対する意識も高くなり,転倒数の減少につながったものと考えた。しかし陽性15名のうち6名は入棟時に対策を立てたにもかかわらず転倒を防ぐことができなかった。今後,転倒をさらに減らすためには,転倒を防ぐことができなかった6名の特徴を把握することと,転倒対策の質の向上が必要と思われた。今後は脳血管疾患のみならず運動器疾患,急性期,慢性期においても症例数を増やし有用性について検証していきたい。
【理学療法学研究としての意義】
先行研究同様にSTRATIFYの感度と特異度は高く,またSTRATIFY導入前後で転倒数が減少したことから転倒アセスメントシートとして有用であることが示唆された。
St. Thomas’s Risk Assessment Tool in Falling Elderly Inpatients(STRATIFY)は1997年にOliver Dが開発した転倒アセスメントシートである。2011年に日本語訳が紹介されて以降,日本においても使い始められており,その有用性について報告されている。当院の従来の転倒対策は,転倒症例に対してカンファレンスを開き,なぜ転倒に至ったかを検討し再転倒を防ぐことが主であった。一方STRATEFYは転倒リスクの高い症例を特定することができるため,病棟スタッフと情報を共有し,事前に転倒対策を立てることで転倒を減らすことが可能と考えた。当院では2012年5月より日本語版STRATIFY(以下:STRATIFY)を用いた転倒対策を回復期リハビリテーション病棟(以下:回復期リハ病棟)において実施している。研究の目的は,STRATIFYの感度と特異度について調査することと,従来型の転倒対策と比較してSTRATIFY導入後の有用性について検討することとした。
【方法】
対象者は2012年1月~11月までに当院の回復期リハ病棟に入院した脳血管疾患80名とした。2012年1月~4月までの期間に入院し従来型の転倒対策を行った群を従来群,2012年5月~11月までの期間に入院しSTRATIFYを用いて転倒対策を行った群をSTRATIFY群とした。従来群は34名であり,平均年齢77±11.5歳,男性15名・女性19名,平均入院期間は60.7±12.2日であった。STRATIFY群は46名であり,平均年齢73±12.1歳,男性21名・女性25名,平均入院期間は91.9±50.5日であった。
従来群は,転倒発生直後にリハビリテーション担当者・看護師・看護助手を含む病棟スタッフで転倒カンファレンスを開き,転倒に至った経緯を多面的に考察し対策を立てた。STRATIFY群は入棟時に担当理学療法士が評価し,5項目中2点以上を陽性とし,陽性者に対して転倒対策を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者にはヘルシンキ宣言に則り,本研究の主旨・目的を口頭にて説明し同意を得た。
【結果】
従来群の転倒者は34名中12名(35.3%)で転倒回数は18回であった。1回転倒者が10名,2回転倒した者が2名,4回転倒者が1名であった。STRATIFY群の転倒者は46名中8名(17.4%)であり,転倒回数は8回であった。STRATIFY導入後に転倒回数が減少する結果となった。
STRATIFY陽性は15名,陰性は31名であった。転倒者8名のうち6名が陽性であり,また非転倒者38名のうち29名が陰性であったことから感度は75.0%,特異度は76.3%であった。
【考察】
STRATIFYは質問項目か5項目と非常に少なく,また「はい=1」「いいえ=0」の2段階評価のため短時間で評価でき,検者間誤差が少く臨床的有用性が高いツールてあると報告されている。本研究においては,先行研究と比べて症例数は少なかったが,感度・特異度ともに70%以上と高い値を示した。このことから転倒アセスメントシートとして有用であると考えた。転倒の多くは病棟のベッドサイドやトイレで起こっていることから,転倒ハイリスク者はカルテやベッドサイドに表記し,カンファレンスや回診時に病棟スタッフに直接伝えるようにした。今回STRATIFYを用いることで,転倒ハイリスク者を早期に特定することができ,入棟時に転倒対策を立てたことと,病棟スタッフと情報共有ができたことで,転倒に対する意識も高くなり,転倒数の減少につながったものと考えた。しかし陽性15名のうち6名は入棟時に対策を立てたにもかかわらず転倒を防ぐことができなかった。今後,転倒をさらに減らすためには,転倒を防ぐことができなかった6名の特徴を把握することと,転倒対策の質の向上が必要と思われた。今後は脳血管疾患のみならず運動器疾患,急性期,慢性期においても症例数を増やし有用性について検証していきたい。
【理学療法学研究としての意義】
先行研究同様にSTRATIFYの感度と特異度は高く,またSTRATIFY導入前後で転倒数が減少したことから転倒アセスメントシートとして有用であることが示唆された。