第49回日本理学療法学術大会

講演情報

発表演題 セレクション » 教育・管理理学療法 セレクション

臨床教育系,管理運営系

2014年5月30日(金) 15:20 〜 18:50 第8会場 (4F 411+412)

座長:日髙正巳(兵庫医療大学リハビリテーション学部), 酒井吉仁(富山医療福祉専門学校理学療法学科)

教育・管理 セレクション

[0426] クオリティマネージメントシムテムを用いたリハビリテーシヨン部門管理の効果

池戸佳代美, 岩佐佳恵, 寺坂晋作 (福井県済生会病院リハビリテーション部)

キーワード:クオリティマネージメントシステム, 業務管理, 職員満足度

【はじめに】
当院では,組織の継続的改善と成長を続けるために,ISO9001(品質マネジメントシステム),BSC(バランストスコアカード),シックスシグマ(行動プロセスを用いた経営変革手法の1つ)の3つのマネージメントツールを融合させた独自の「済生会クオリティマネジメントシステム(以下SQM)を導入し,理念や意識のベクトルの統一,組織横断的なチームの形成,創造工夫しながら問題解決をする場の提供等,組織風土改善を目的としている。今回リハビリテーション部門の視点からSQMシステムを紹介,報告する。
【方法】
SQM導入後の取り組みとしては,病院の年度目標から部門目標をワークアウト手法(ゼネラル・エレクトリックにおける組織運営の手法の1つ)を用いて全員の共通理解を得る方式で,BSCを作成し,PDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)を回して継続的に改善を行い,ISO9001の運用では,年2回のSQMインタビューにて確認した。また,年1回病院全体で各部署SWOT分析(4つのカテゴリーで分析する経営戦略ツールの1つ)・部門別ベストスタッフ賞・優秀学術活動のノミネートや各種プロジェクトの発表,BSCの達成度の分析などのマネージメントレビューの機会があり,1年の業務全般を職員全体で共有しフィートバック出来るシステムとなっている。今回,SQM導入の効果を,BSC導入前の2007年度と導入5年後の2012年度のリハビリテーション部の患者満足度(CS)と職員満足度(ES)を,厚生労働省調査研究班による外部顧客満足度調査(現在は株式会社エクスアンティによる)の結果をもとに比較検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は当院倫理委員会の定める規定,ならびに本研究に関わる対象者の個人が特定されないように配慮し,統計処理されたデータを用いて実施した。
【結果】
患者満足度を部門別職種別サービス実行ポイントからみると,「リハの目的説明」,「日常生活でのリハの応用等」の項目で,入院で4.54(最高5.0)から4.73,偏差値58(7:1-10段階評価)から70(10)に改善,外来では偏差値41(4)から47(5)に改善した。また,職員満足度としては,「家族,友人,知人などが病気になったら,この病院を薦める」66.7%から88.5%,「この病院で働くことにして良かったと思う」が,66.7%から84.6%,「職場の人間関係に満足している」が,52.4%から73.1%,「今後もこの病院で働くことで専門的な技能や知識が向上すると思う」が71.4%から80.8%,「他の病院への転職は考えたことがない」が,23.8%から38.5%,「自分がこの病院にとって必要な人材だという手ごたえを感じる」が14.3%から30.8%,「家族,友人,知人などが病院勤務を希望するなら,この病院を薦める」が33.3%から65.4%,「全体として,この病院で働いている事に満足している」が57.1%から80.8%に改善し,全ての項目で平均を上回る結果となった。
【考察】
今回リハビリテーション部の質の改善度をCS,ES面から検討した。改善の理由として,ISO9001や病院機能評価では,部署目標やチーム医療の充実,文書管理・機器管理や個人力量評価等,リハビリテーションの質から医療安全,業務管理まで多岐にわたって評価される為,業務が整理され,BSCを用いることで共通の目標意識が持てたといえる。その基盤として,前述の各種経営ツールを学べる研修など,経験年数等に応じて段階的に職員教育が行われており,積極的に業務で活用する事により,問題点や改善が必要になった場合でも,自然とワークアウトが行われ,話し合い,共通意識が得られやすい環境づくりが出来てきている。直近のリハビリテーション部BSCを紹介すると,学習と成長の視点で,役割分担チームや診療チームごとに,イノベーションプロジェクトに取り組んだ点が特徴である。色々な管理運営ツールを用いているが,評価の為に行うのではなく,業務改善につながるように導入していく事が大切な事だと感じている。今回,SQMでのトータルマネージメントシステムをリハビリテーション部に導入したことにより,働きがいのある職場への改善の要因となったのではないかと考える。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法業務において,管理運営のマネージメントシステムによる職場環境の充実は,1人1人の理学療法士の育成,安全で質の高い理学療法の発展に有意義であると考える。