[0432] 入谷式足底板における中足骨レベル横アーチパッドが歩行中の踵離地と足尖離地のタイミングに与える影響について
Keywords:入谷式足底板, 踵離地, 足尖離地
【はじめに,目的】
入谷は中足骨レベル横アーチを前方部分と後方部分に分け,前方部分の横アーチは立脚後期の前後の重心移動に影響し,後方部分の横アーチは踵離地の時間的因子に深く関わっていると述べている。また,中足骨レベル横アーチの評価で用いられる中足骨レベル前方部分の横アーチパッド(前方パッド)の貼付は踵離地(heel off:HO)を延長させ,中足骨レベル後方部分の横アーチパッド(後方パッド)の貼付は足尖離地(toe off:TO)を延長させると述べているが,その詳細についての研究は少ない。本研究の目的は入谷式足底板の前方パッドと後方パッドの貼付により踵接地(heel contact:HC)からHO,HOからTOの1歩行周期に対する時間的割合の変化の有無を検証することである。
【方法】
対象は下肢に疾患を有さない成人男性10名10足,平均年齢26.3(22-29)歳,測定側は右下肢とした。被験者は直径8mmの赤色マーカー用シールを踵骨隆起,第1末節骨に貼り,裸足にてトレッドミル上を歩行速度4.7kg/hに設定し歩行を行った。撮影はデジタルビデオカメラ(SONY製HDR-CX17)を使用し,レンズの高さ54cm,被写体までの距離3.6mに設定し,サンプリング周波数240Hzにて記録し側方から定点撮影を行った。中足骨レベル横アーチパッドは右足底のみに貼付し①パッド貼付無し(無し)②前方パッド貼付(前方)③後方パッド貼付(後方)の3パターンの歩行をランダムに行わせた。使用するパッドの形状は縦1cm×横2cm×厚さ2mmの長方形とし,第4中足骨の中央を基準線とし,基準線より前方に前方パッドを,後方に後方パッドを貼付した。各々の歩行を撮影前に1分間実施した後に3歩行周期を撮影し,右側のHCからHO,HOからTOの時間を測定し,1歩行周期での時間的割合の平均値を算出した。統計学的解析はSPSS statistics 20にて多重分析Bonferroni法を用いた。有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に則り,対象には実験前に口頭と書面で本研究の目的,実験手順,考えうる危険性等を十分に説明し,内容について十分に理解を得た。その上で参加に同意した者は同意書に署名し実験に参加した。
【結果】
HC-HOの1歩行周期に対する時間的割合は前方が34.5±2.8%,後方が35.7±2.9%,無しが35.1±3.34%であった。HO-TOは前方が30.4±3.2%,後方が29.3±3.3%,無しが29.1±3.7%であった。HC-HO,HO-TOともに前方と後方の間に有意差が認められた。
【考察】
前方パッドを貼付することでHC-HOの短縮とHO-TOの延長,後方パッドを貼付することでHC-HOの延長とHO-TOの短縮に影響する事が示唆され,中足骨レベル横アーチパッドが立脚中期以降の時間的因子に深く関与している事が分かった。入谷は前方パッドの貼付によって歩行時に股関節を伸展に誘導すると述べており,立脚後期で生じる股関節の伸展が増大することで立脚後期が延長し,TOが遅延したのではないかと考えられる。また,後方パッドの貼付に関しても歩行時に膝関節を屈曲に誘導すると述べており,膝関節が屈曲に誘導されることによって立脚中期での膝関節伸展が遅延し,結果としてHOが遅延したのではないかと考えらえる。これらの影響から前方パッドと後方パッドの貼付によってHOとTOが遅延したのではないかと考えらえる。
【理学療法学研究としての意義】
入谷式足底板療法では歩行観察を基に関節や筋にかかるメカニカルストレスの増減の推察を行い,そのコントロールを目的に足底板の処方を行っている。前方パッドと後方パッドの貼付は立脚中期以降の時間的因子を変化させる事が示唆され,メカニカルストレスによって生じる疼痛の改善を目的に実施される理学療法を施行していく上で貴重な知見となると思われる。
入谷は中足骨レベル横アーチを前方部分と後方部分に分け,前方部分の横アーチは立脚後期の前後の重心移動に影響し,後方部分の横アーチは踵離地の時間的因子に深く関わっていると述べている。また,中足骨レベル横アーチの評価で用いられる中足骨レベル前方部分の横アーチパッド(前方パッド)の貼付は踵離地(heel off:HO)を延長させ,中足骨レベル後方部分の横アーチパッド(後方パッド)の貼付は足尖離地(toe off:TO)を延長させると述べているが,その詳細についての研究は少ない。本研究の目的は入谷式足底板の前方パッドと後方パッドの貼付により踵接地(heel contact:HC)からHO,HOからTOの1歩行周期に対する時間的割合の変化の有無を検証することである。
【方法】
対象は下肢に疾患を有さない成人男性10名10足,平均年齢26.3(22-29)歳,測定側は右下肢とした。被験者は直径8mmの赤色マーカー用シールを踵骨隆起,第1末節骨に貼り,裸足にてトレッドミル上を歩行速度4.7kg/hに設定し歩行を行った。撮影はデジタルビデオカメラ(SONY製HDR-CX17)を使用し,レンズの高さ54cm,被写体までの距離3.6mに設定し,サンプリング周波数240Hzにて記録し側方から定点撮影を行った。中足骨レベル横アーチパッドは右足底のみに貼付し①パッド貼付無し(無し)②前方パッド貼付(前方)③後方パッド貼付(後方)の3パターンの歩行をランダムに行わせた。使用するパッドの形状は縦1cm×横2cm×厚さ2mmの長方形とし,第4中足骨の中央を基準線とし,基準線より前方に前方パッドを,後方に後方パッドを貼付した。各々の歩行を撮影前に1分間実施した後に3歩行周期を撮影し,右側のHCからHO,HOからTOの時間を測定し,1歩行周期での時間的割合の平均値を算出した。統計学的解析はSPSS statistics 20にて多重分析Bonferroni法を用いた。有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に則り,対象には実験前に口頭と書面で本研究の目的,実験手順,考えうる危険性等を十分に説明し,内容について十分に理解を得た。その上で参加に同意した者は同意書に署名し実験に参加した。
【結果】
HC-HOの1歩行周期に対する時間的割合は前方が34.5±2.8%,後方が35.7±2.9%,無しが35.1±3.34%であった。HO-TOは前方が30.4±3.2%,後方が29.3±3.3%,無しが29.1±3.7%であった。HC-HO,HO-TOともに前方と後方の間に有意差が認められた。
【考察】
前方パッドを貼付することでHC-HOの短縮とHO-TOの延長,後方パッドを貼付することでHC-HOの延長とHO-TOの短縮に影響する事が示唆され,中足骨レベル横アーチパッドが立脚中期以降の時間的因子に深く関与している事が分かった。入谷は前方パッドの貼付によって歩行時に股関節を伸展に誘導すると述べており,立脚後期で生じる股関節の伸展が増大することで立脚後期が延長し,TOが遅延したのではないかと考えられる。また,後方パッドの貼付に関しても歩行時に膝関節を屈曲に誘導すると述べており,膝関節が屈曲に誘導されることによって立脚中期での膝関節伸展が遅延し,結果としてHOが遅延したのではないかと考えらえる。これらの影響から前方パッドと後方パッドの貼付によってHOとTOが遅延したのではないかと考えらえる。
【理学療法学研究としての意義】
入谷式足底板療法では歩行観察を基に関節や筋にかかるメカニカルストレスの増減の推察を行い,そのコントロールを目的に足底板の処方を行っている。前方パッドと後方パッドの貼付は立脚中期以降の時間的因子を変化させる事が示唆され,メカニカルストレスによって生じる疼痛の改善を目的に実施される理学療法を施行していく上で貴重な知見となると思われる。