[0433] 歩行時足角と下肢捻転角の関係
Keywords:足角, 大腿骨捻転角, 脛骨捻転角
【はじめに,目的】
歩行中の進行方向に対する足部の角度(以下,足角)は重要なアライメント要素であり7°~13°外旋が正常であるとされている。その要因としては,股関節の回旋,脛骨大腿関節での回旋,大腿骨や脛骨の捻転など骨性,関節性,神経筋性の要因が考えられているが,骨性因子の報告は少ない。今回の研究は,その要因である骨性因子と歩行時足角の関係を調査することである。
【方法】
下肢疾患の無い健常成人22名44下肢(男性11名,女性11名,平均年齢31.4歳)を対象とした。足角(toe out angle)は,zebris社製FDM-TLRシステムを用いて,トレッドミル上を自由歩行で任意の速度を決定後,試技を1分間行い,その後の30秒間を解析ソフトWin FDM-Tで2回計測し,平均値を算出した。股関節捻転角(femoral neck torsion以下FNT)はブルースラントダイヤル式角度計(感度0.1146°精度±1.0°以内)足底に固定しcraig testに準じて測定した。脛骨捻転角(tibial torsion 以下TT)は腹臥位膝90°屈曲位で,脛骨内果と腓骨外果の中央を結ぶ線と,大腿骨顆部中央を結ぶ線のなす角度をゴニオメーターを用いて測定した。それぞれ2回測定し平均値を算出し,得られたデータは級内相関係数を求め,次にTOAとFNT,TTをスピアマン順位相関係数の検定を行なった。各角度の群間比較ではWelch’s t-testを行い,全ての有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には事前に研究の趣旨を十分に説明し,同意を得た上で実施した。
【結果】
級内相関係数は,足角(右0.97 左0.99),大腿骨前捻角(右0.97 左0.98),脛骨前捻角(右0.72 左0.77)であった。相関係数の検定では,足角とFNTには有意な相関がみられた(rs=-0.4719 P=0.0017)が,脛骨捻転角では低い相関はあるものの有意差はみられなかった(rs=0.02896 P=0.8387)。各平均値は足角(男性9.43±5.1°女性6.36±3.51°P=0.0258),FNT(男性15.27±6.13°女性23.88±8.34°P=0.00036)で有意差がみられたが,TTでは(男性15.02±3.35°女性13.2±3.38°P=0.0967)有意差はみられなかった。
【考察】
歩行時足角とFNTは負の相関であることから,FNTの増大は足角減少に作用することが示唆された。SahrmannらはこのFNTの増大は,中殿筋後部線維の延長・弱化による股関節内旋の優位性を報告しており,歩行時の股関節内旋が起こりやすい状態が推察される。また,宮辻らは,自由歩行における足角の男女比において女性の足角が有意に減少したと報告しており,今回の研究も同様の結果となった。また,女性高齢者では同若年者と比較し足角が増大したと報告している。つまり,加齢にともなうバランス能力・筋機能低下から,その代償作用として足角を変化させ安定性を獲得していると思われる。しかし,FNTが増大した条件下での足角増大は膝関節にknee in toe outの回旋ストレスを誘発させることが推察される。また,同様に女性non contactスポーツに発生頻度の高い膝前十字靱帯損傷の発生メカニズムの要因にも,このFNT増大の条件下での足角増大による回旋ストレスが関与しているのではないかと思われる。したがって,この3つの形態評価は膝障害へのマルアライメントの解釈に重要と思われる。しかし,今回の研究では歩行時の膝関節回旋角度の評価を行なっていないため,脛骨・大腿骨の回旋角度と,足角,FNT,TTをパラメーターとした調査が今後の課題である。
【理学療法学研究としての意義】
臨床において,歩行分析を行なう上で膝回旋ストレスを考える際,動的な股関節・足部の影響が考慮されるが,あらかじめ解剖学的構造的特性を評価することで,その解釈の情報の一部になると思われる。また,さまざまな膝疾患の発生メカニズム解明の一助として意義がある。
歩行中の進行方向に対する足部の角度(以下,足角)は重要なアライメント要素であり7°~13°外旋が正常であるとされている。その要因としては,股関節の回旋,脛骨大腿関節での回旋,大腿骨や脛骨の捻転など骨性,関節性,神経筋性の要因が考えられているが,骨性因子の報告は少ない。今回の研究は,その要因である骨性因子と歩行時足角の関係を調査することである。
【方法】
下肢疾患の無い健常成人22名44下肢(男性11名,女性11名,平均年齢31.4歳)を対象とした。足角(toe out angle)は,zebris社製FDM-TLRシステムを用いて,トレッドミル上を自由歩行で任意の速度を決定後,試技を1分間行い,その後の30秒間を解析ソフトWin FDM-Tで2回計測し,平均値を算出した。股関節捻転角(femoral neck torsion以下FNT)はブルースラントダイヤル式角度計(感度0.1146°精度±1.0°以内)足底に固定しcraig testに準じて測定した。脛骨捻転角(tibial torsion 以下TT)は腹臥位膝90°屈曲位で,脛骨内果と腓骨外果の中央を結ぶ線と,大腿骨顆部中央を結ぶ線のなす角度をゴニオメーターを用いて測定した。それぞれ2回測定し平均値を算出し,得られたデータは級内相関係数を求め,次にTOAとFNT,TTをスピアマン順位相関係数の検定を行なった。各角度の群間比較ではWelch’s t-testを行い,全ての有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には事前に研究の趣旨を十分に説明し,同意を得た上で実施した。
【結果】
級内相関係数は,足角(右0.97 左0.99),大腿骨前捻角(右0.97 左0.98),脛骨前捻角(右0.72 左0.77)であった。相関係数の検定では,足角とFNTには有意な相関がみられた(rs=-0.4719 P=0.0017)が,脛骨捻転角では低い相関はあるものの有意差はみられなかった(rs=0.02896 P=0.8387)。各平均値は足角(男性9.43±5.1°女性6.36±3.51°P=0.0258),FNT(男性15.27±6.13°女性23.88±8.34°P=0.00036)で有意差がみられたが,TTでは(男性15.02±3.35°女性13.2±3.38°P=0.0967)有意差はみられなかった。
【考察】
歩行時足角とFNTは負の相関であることから,FNTの増大は足角減少に作用することが示唆された。SahrmannらはこのFNTの増大は,中殿筋後部線維の延長・弱化による股関節内旋の優位性を報告しており,歩行時の股関節内旋が起こりやすい状態が推察される。また,宮辻らは,自由歩行における足角の男女比において女性の足角が有意に減少したと報告しており,今回の研究も同様の結果となった。また,女性高齢者では同若年者と比較し足角が増大したと報告している。つまり,加齢にともなうバランス能力・筋機能低下から,その代償作用として足角を変化させ安定性を獲得していると思われる。しかし,FNTが増大した条件下での足角増大は膝関節にknee in toe outの回旋ストレスを誘発させることが推察される。また,同様に女性non contactスポーツに発生頻度の高い膝前十字靱帯損傷の発生メカニズムの要因にも,このFNT増大の条件下での足角増大による回旋ストレスが関与しているのではないかと思われる。したがって,この3つの形態評価は膝障害へのマルアライメントの解釈に重要と思われる。しかし,今回の研究では歩行時の膝関節回旋角度の評価を行なっていないため,脛骨・大腿骨の回旋角度と,足角,FNT,TTをパラメーターとした調査が今後の課題である。
【理学療法学研究としての意義】
臨床において,歩行分析を行なう上で膝回旋ストレスを考える際,動的な股関節・足部の影響が考慮されるが,あらかじめ解剖学的構造的特性を評価することで,その解釈の情報の一部になると思われる。また,さまざまな膝疾患の発生メカニズム解明の一助として意義がある。