[0485] 専業主婦と就業女性における身体活動量・座業時間と健康状態との関連
Keywords:身体活動量, 座業時間, 専業主婦
【目的】
身体活動量は,死亡率や健康寿命などと関連があり,健康日本21において身体活動量の増加が目標に挙げられている。加えて近年では,身体活動量に関わらず座業時間が健康状態に悪影響を及ぼすことが報告されるようになった。健康状態や身体活動量には性差や就業による違いが認められているが,国内では専業主婦を対象にした報告が少ない。非労働者である専業主婦は労働安全衛生法による健康診断の対象外であり,特に若年層の専業主婦の健診受診率が低く,健康状態が把握されづらい。そこで本研究は,専業主婦における身体活動量および座業時間と健康状態との関連を,就業女性との比較から検討することを目的とした。
【方法】
大阪府南部に位置するH市の一地区に居住する20歳以上の住民を対象地域とした。全3,301世帯に無記名自記式の質問紙を2部ずつ配布し,900部の回答が得られ,回収率は27.3%であった。分析対象者は,介助なしに1人で歩けると回答した65歳未満の専業主婦および就業女性とした。調査内容には,性別,年齢,身長,体重,就業形態,歩行能力,およびIPAQ日本語版Short version(以下,IPAQ)の項目,SF-8の項目を含んだ。身体活動量と座業時間は,それぞれIPAQから算出した。健康状態はSF-8の成績から評価し,身体的サマリースコア(PCS)と精神的サマリースコア(MCS)を用いた。分析は,専業主婦,就業女性それぞれに対し,年齢,BMI,身体活動量,座業時間,PCS,MCS,相互のPearsonの相関係数を算出した。さらに,年齢,BMIを制御変数とした偏相関分析を身体活動量,座業時間とPCS,MCS間で行なった。次に,IPAQから算出される身体活動量レベル(Low,Moderate,High群)により身体活動量を3群化し,各々で座業時間とPCS,MCSとのPearsonの偏相関係数(年齢,BMIを制御変数)を専業主婦,就業女性別に算出した。統計学的有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象地域の自治会に協力を得て,質問紙配布前に会報誌により住民への周知を行なった。全対象者には紙面上にて,研究目的や個人情報の保護,結果の公表,および記入・回収への協力により同意とすることを説明した。本研究は研究科の研究倫理委員会の承認を得た。
【結果】
有効回答が得られた分析対象者は,専業主婦140名,就業女性157名であった。専業主婦は平均年齢47.3歳,身長154.5cm,体重50.0kg,就業女性は47.2歳,155.5cm,50.9kgであった。身体活動量は,専業主婦2314.8±3331.0METs・min/week,就業女性2534.5±5047.1METs・min/week,座業時間は,専業主婦306.9±208.4min/day,就業女性344.1±238.4min/dayであった。PCSは,専業主婦49.8±7.1,就業女性50.0±6.7,MCSは,専業主婦48.8±6.3,就業女性47.9±6.4であった。以上の項目に対し,専業主婦と就業女性との間に有意差はみられなかった。
専業主婦において,年齢とPCSとに負の相関(r=-0.25,p<0.01),BMIとMCSとに正の相関(r=0.20,p<0.05)を認めた。就業女性では,年齢とBMI(r=0.33,p<0.01)および身体活動量(r=0.17,p<0.05)との間に正の相関,PCSと負の相関(r=-0.27,p<0.05)を認めた。さらに,BMIとMCSとに正の相関(r=0.17,p<0.05),身体活動量とPCSとに負の相関(r=-0.21,p<0.01)がみられた。
年齢とBMIを制御変数とした偏相関分析では,専業主婦で身体活動量とMCSとに正の相関(r=0.18,p<0.05),就業女性で身体活動量とPCSとに負の相関(r=-0.17,p<0.05)がみられた。
身体活動量レベル別偏相関分析の結果,専業主婦ではModerate群において座業時間とPCSとに負の相関(r=-0.34,p<0.05),High群で座業時間とMCSとに負の相関(r=-0.60,p<0.01)を認めた。一方,就業女性では有意な相関はみられなかった。
【考察】
本研究において,専業主婦は身体活動量が高いほど心理面の健康が高いことが示され,先行研究同様であった。一方,就業女性では身体活動量が高いほど身体面の健康が低い結果であった。専業主婦は家事や育児などの中で身体活動を行なっており,その目的が様々な業務内容に従事する就業女性とは異なっていると考える。さらに専業主婦においては,Moderate以上の身体活動量がなされていても,座業時間が長いほど健康状態が低下していることが示された。専業主婦の身体活動量は家族に影響されると考えられるが,座業時間によって健康状態が改善される可能性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法士が健康増進分野に携わる機会が増えており,地域住民の健康と関連する因子の把握が必要である。専業主婦において,身体活動量に関わらず座業時間が健康状態に影響していることが確認され,生活スタイルを踏まえた指導の必要性が示唆された。
身体活動量は,死亡率や健康寿命などと関連があり,健康日本21において身体活動量の増加が目標に挙げられている。加えて近年では,身体活動量に関わらず座業時間が健康状態に悪影響を及ぼすことが報告されるようになった。健康状態や身体活動量には性差や就業による違いが認められているが,国内では専業主婦を対象にした報告が少ない。非労働者である専業主婦は労働安全衛生法による健康診断の対象外であり,特に若年層の専業主婦の健診受診率が低く,健康状態が把握されづらい。そこで本研究は,専業主婦における身体活動量および座業時間と健康状態との関連を,就業女性との比較から検討することを目的とした。
【方法】
大阪府南部に位置するH市の一地区に居住する20歳以上の住民を対象地域とした。全3,301世帯に無記名自記式の質問紙を2部ずつ配布し,900部の回答が得られ,回収率は27.3%であった。分析対象者は,介助なしに1人で歩けると回答した65歳未満の専業主婦および就業女性とした。調査内容には,性別,年齢,身長,体重,就業形態,歩行能力,およびIPAQ日本語版Short version(以下,IPAQ)の項目,SF-8の項目を含んだ。身体活動量と座業時間は,それぞれIPAQから算出した。健康状態はSF-8の成績から評価し,身体的サマリースコア(PCS)と精神的サマリースコア(MCS)を用いた。分析は,専業主婦,就業女性それぞれに対し,年齢,BMI,身体活動量,座業時間,PCS,MCS,相互のPearsonの相関係数を算出した。さらに,年齢,BMIを制御変数とした偏相関分析を身体活動量,座業時間とPCS,MCS間で行なった。次に,IPAQから算出される身体活動量レベル(Low,Moderate,High群)により身体活動量を3群化し,各々で座業時間とPCS,MCSとのPearsonの偏相関係数(年齢,BMIを制御変数)を専業主婦,就業女性別に算出した。統計学的有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象地域の自治会に協力を得て,質問紙配布前に会報誌により住民への周知を行なった。全対象者には紙面上にて,研究目的や個人情報の保護,結果の公表,および記入・回収への協力により同意とすることを説明した。本研究は研究科の研究倫理委員会の承認を得た。
【結果】
有効回答が得られた分析対象者は,専業主婦140名,就業女性157名であった。専業主婦は平均年齢47.3歳,身長154.5cm,体重50.0kg,就業女性は47.2歳,155.5cm,50.9kgであった。身体活動量は,専業主婦2314.8±3331.0METs・min/week,就業女性2534.5±5047.1METs・min/week,座業時間は,専業主婦306.9±208.4min/day,就業女性344.1±238.4min/dayであった。PCSは,専業主婦49.8±7.1,就業女性50.0±6.7,MCSは,専業主婦48.8±6.3,就業女性47.9±6.4であった。以上の項目に対し,専業主婦と就業女性との間に有意差はみられなかった。
専業主婦において,年齢とPCSとに負の相関(r=-0.25,p<0.01),BMIとMCSとに正の相関(r=0.20,p<0.05)を認めた。就業女性では,年齢とBMI(r=0.33,p<0.01)および身体活動量(r=0.17,p<0.05)との間に正の相関,PCSと負の相関(r=-0.27,p<0.05)を認めた。さらに,BMIとMCSとに正の相関(r=0.17,p<0.05),身体活動量とPCSとに負の相関(r=-0.21,p<0.01)がみられた。
年齢とBMIを制御変数とした偏相関分析では,専業主婦で身体活動量とMCSとに正の相関(r=0.18,p<0.05),就業女性で身体活動量とPCSとに負の相関(r=-0.17,p<0.05)がみられた。
身体活動量レベル別偏相関分析の結果,専業主婦ではModerate群において座業時間とPCSとに負の相関(r=-0.34,p<0.05),High群で座業時間とMCSとに負の相関(r=-0.60,p<0.01)を認めた。一方,就業女性では有意な相関はみられなかった。
【考察】
本研究において,専業主婦は身体活動量が高いほど心理面の健康が高いことが示され,先行研究同様であった。一方,就業女性では身体活動量が高いほど身体面の健康が低い結果であった。専業主婦は家事や育児などの中で身体活動を行なっており,その目的が様々な業務内容に従事する就業女性とは異なっていると考える。さらに専業主婦においては,Moderate以上の身体活動量がなされていても,座業時間が長いほど健康状態が低下していることが示された。専業主婦の身体活動量は家族に影響されると考えられるが,座業時間によって健康状態が改善される可能性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法士が健康増進分野に携わる機会が増えており,地域住民の健康と関連する因子の把握が必要である。専業主婦において,身体活動量に関わらず座業時間が健康状態に影響していることが確認され,生活スタイルを踏まえた指導の必要性が示唆された。