[0516] 地域在住中高齢者に対するロコモ判定ツールの検討
キーワード:ロコモティブシンドローム, ロコチェック, ロコモ25
【目的】超高齢社会の到来とともに健康寿命の延伸に関わる取り組みは重要な位置づけをしめている。健康日本21(第2次)における高齢者の健康目標として,認知症とともにロコモティブシンドローム(以下,ロコモ)の認知度向上があげられている。高齢者における運動器の老化は,活動性の低下だけでなくADLの低下にもつながる重要な課題といえる。対策としては運動器の衰えについて気付くための判定ツールが必要である。本研究では地域在住中高齢者の運動機能調査を行い,ロコモの危険性判定に用いられているロコモーションチェック(以下,ロコチェック)とロコモ25を用い有用性を検討した。
【方法】対象は埼玉県内県伊奈町に在住し,住民票から性別・年齢分布が均等になるように無作為に選ばれた,要介護・要支援および身体障害非該当の60歳から79歳までの高齢者中高年者246名(男性116名/女性130名)である。事前に調査票を配布しロコチュエック,ロコモ25を調査した。運動機能については,握力,開眼片足立ち時間(以下,片足立ち),Functional Reach Test(FRT),5回立ち上がりテスト(以下,5STS),歩行速度(通常・最速),2ステップテスト(以下,2Step),立ち上がりテスト,膝伸展筋力,足趾把持力を測定した。また,体組成計(TANITA社製MC-190)を用いて体脂肪率,脂肪量,除脂肪量,筋肉量の計測を行った。解析方法はロコモ群と非ロコモ群の比較を行い,ロコチェックでは7項目中一つでも該当するものをロコモ群とし,ロコモ25についてはカットオフ値(16点)以下をロコモ群とした。また,参考までにロコモ25の中央値を基準にロコモ群の比較を行った。統計解析にはPASW Ver18を用い有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者に対しては口頭と文書による十分な説明を行い,同意を得た上で行った。なお,本研究は埼玉医科大学保健医療学部倫理委員会の承認を得て行った。
【結果】ロコチェックによるロコモ該当者は82名(33.3%)であり,ロコモ25によるロコモ該当者は9名(3.7%)であった。また,ロコモ25による中央値は4点であり,4点以下は95名(38.6%)であった。ロコチェックによるロコモ群と非ロコモ群の比較では,BMI(22.8±3.0/22.0±2.7),握力(右:27.1±8.2/30.7±8.1kg,左26.1±7.5/29.4±8.4kg),片足立ち(25.8±26.3/56.9±40.4秒),FRT(34.7±6.2/38.0±4.5cm),5STS(8.8±2.4/7.7±1.8秒),歩行速度(通常:1.53±0.24/1.42±0.21,最速:1.74±0.29/1.87±0.28m/s),2Step(1.34±0.14/1.44±0.12),膝伸展筋力(右:1.74±0.51/2.05±0.53N/m,左:1.77±0.51/2.01±0.56N/m),足趾把持力(右:11.5±4.8/14.1±4.9kg,左:11.7±4.4/13.4±4.9kg),において有意差を認めた。また,立ち上がりテストでは両足10cmの可否,片足40cmの可否において有意差を認めた。ロコモ25による比較では,5STS(10.8±3.4/8.0±2.0秒),歩行速度(通常:1.23±0.17/1.40±0.23m/s),2Step(1.29±0.18/1.41±0.13)に有意差を認めた。なお,ロコモ25について中央値を用いて比較すると,片足立ち,FRT,5STS,歩行速度(通常,最速)2Step,膝伸展筋力,足趾把持力に有意差を認めることができた。
【考察】運動器障害により要支援・要介護となるリスクの高い状態をロコモティブシンドローム(運動器症候群:ロコモ)と呼ばれており,その普及が求められている。ロコモに対する基本的な対策として,セルフトレーニングであるロコモーショントレーニング(以下,ロコトレ)が推奨されている。つまり,自らの運動器の衰えついて気付くための判定ツールが必要であり,そのためのツールとしてロコチェックとロコモ25が開発されている。いずれも運動機能との関連が高いことが求められるが,今回の調査結果ではロコチェックによるロコモ群では運動機能低下が明らかであった。ロコチェックは基本チェックリストや転倒スコアなどの運動機能に関する項目で構成されており,運動機能との関連が改めて確認される結果となった。ロコモ25は,二次予防高齢者・要支援・要介護の状態像との関連が高いと報告されているが,調査項目に社会性などを問うものもあることなどから,運動機能との関連性が小さいことが推測される。さらに,地域在住の一般高齢者を対象とした本研究では,ロコモ25が16点以上であるものの数が極めて少なく,このカットオフ値を一般に適用することには注意を要すると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】運動器の健康としてロコモに対する取り組みは重要な位置づけをしめており,ロコモ判定ツールの確立が求められている。本研究によりロコモ判定のためのツールが確立され,予防理学療法としての介入の基礎研究が図られる。
【方法】対象は埼玉県内県伊奈町に在住し,住民票から性別・年齢分布が均等になるように無作為に選ばれた,要介護・要支援および身体障害非該当の60歳から79歳までの高齢者中高年者246名(男性116名/女性130名)である。事前に調査票を配布しロコチュエック,ロコモ25を調査した。運動機能については,握力,開眼片足立ち時間(以下,片足立ち),Functional Reach Test(FRT),5回立ち上がりテスト(以下,5STS),歩行速度(通常・最速),2ステップテスト(以下,2Step),立ち上がりテスト,膝伸展筋力,足趾把持力を測定した。また,体組成計(TANITA社製MC-190)を用いて体脂肪率,脂肪量,除脂肪量,筋肉量の計測を行った。解析方法はロコモ群と非ロコモ群の比較を行い,ロコチェックでは7項目中一つでも該当するものをロコモ群とし,ロコモ25についてはカットオフ値(16点)以下をロコモ群とした。また,参考までにロコモ25の中央値を基準にロコモ群の比較を行った。統計解析にはPASW Ver18を用い有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者に対しては口頭と文書による十分な説明を行い,同意を得た上で行った。なお,本研究は埼玉医科大学保健医療学部倫理委員会の承認を得て行った。
【結果】ロコチェックによるロコモ該当者は82名(33.3%)であり,ロコモ25によるロコモ該当者は9名(3.7%)であった。また,ロコモ25による中央値は4点であり,4点以下は95名(38.6%)であった。ロコチェックによるロコモ群と非ロコモ群の比較では,BMI(22.8±3.0/22.0±2.7),握力(右:27.1±8.2/30.7±8.1kg,左26.1±7.5/29.4±8.4kg),片足立ち(25.8±26.3/56.9±40.4秒),FRT(34.7±6.2/38.0±4.5cm),5STS(8.8±2.4/7.7±1.8秒),歩行速度(通常:1.53±0.24/1.42±0.21,最速:1.74±0.29/1.87±0.28m/s),2Step(1.34±0.14/1.44±0.12),膝伸展筋力(右:1.74±0.51/2.05±0.53N/m,左:1.77±0.51/2.01±0.56N/m),足趾把持力(右:11.5±4.8/14.1±4.9kg,左:11.7±4.4/13.4±4.9kg),において有意差を認めた。また,立ち上がりテストでは両足10cmの可否,片足40cmの可否において有意差を認めた。ロコモ25による比較では,5STS(10.8±3.4/8.0±2.0秒),歩行速度(通常:1.23±0.17/1.40±0.23m/s),2Step(1.29±0.18/1.41±0.13)に有意差を認めた。なお,ロコモ25について中央値を用いて比較すると,片足立ち,FRT,5STS,歩行速度(通常,最速)2Step,膝伸展筋力,足趾把持力に有意差を認めることができた。
【考察】運動器障害により要支援・要介護となるリスクの高い状態をロコモティブシンドローム(運動器症候群:ロコモ)と呼ばれており,その普及が求められている。ロコモに対する基本的な対策として,セルフトレーニングであるロコモーショントレーニング(以下,ロコトレ)が推奨されている。つまり,自らの運動器の衰えついて気付くための判定ツールが必要であり,そのためのツールとしてロコチェックとロコモ25が開発されている。いずれも運動機能との関連が高いことが求められるが,今回の調査結果ではロコチェックによるロコモ群では運動機能低下が明らかであった。ロコチェックは基本チェックリストや転倒スコアなどの運動機能に関する項目で構成されており,運動機能との関連が改めて確認される結果となった。ロコモ25は,二次予防高齢者・要支援・要介護の状態像との関連が高いと報告されているが,調査項目に社会性などを問うものもあることなどから,運動機能との関連性が小さいことが推測される。さらに,地域在住の一般高齢者を対象とした本研究では,ロコモ25が16点以上であるものの数が極めて少なく,このカットオフ値を一般に適用することには注意を要すると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】運動器の健康としてロコモに対する取り組みは重要な位置づけをしめており,ロコモ判定ツールの確立が求められている。本研究によりロコモ判定のためのツールが確立され,予防理学療法としての介入の基礎研究が図られる。