第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 運動器理学療法 ポスター

骨・関節11

2014年5月30日(金) 16:15 〜 17:05 ポスター会場 (運動器)

座長:山本泰司(市立伊丹病院医療技術部医療技術室リハビリテーション担当)

運動器 ポスター

[0549] 頸椎変性疾患患者の健康関連QOLに影響を及ぼす機能面の因子について

葉清規1,2, 対馬栄輝2, 村瀬正昭3, 大石陽介3 (1.医療法人社団おると会浜脇整形外科リハビリセンター, 2.弘前大学大学院保健学研究科, 3.医療法人社団おると会浜脇整形外科病院整形外科)

キーワード:頚椎変性疾患, 健康関連QOL, JOACMEQ

【目的】
近年患者立脚型アウトカム評価が重要視されるようになり,整形外科疾患の治療成績においても,健康関連QOL(HRQOL)の代表的指標であるSF36およびSF8を用いた報告が散見される。しかしながら,本邦では頸椎疾患のHRQOLに対して影響を与える因子の詳細な報告は見られない。頸椎疾患については多角的なアプローチが必要とされているため,HRQOLに影響する因子を把握することは臨床上重要である。頸椎疾患の治療成績判定基準の代表的指標として,日本整形外科学会頸部脊髄症評価質問票(JOACMEQ)が用いられ,JOACMEQとHRQOLの関係を知ることは有効であると考える。そこで本研究の目的は,SF8とJOACMEQを用いて,頸椎変性疾患患者の機能面がHRQOLにどのように影響するか検討することである。
【方法】
対象は2013年7月から2013年10月の期間に当院へ受診し,頸椎疾患にて理学療法の処方された98例のうち,初診時にSF8とJOACMEQを評価可能であった40例とした。平均年齢48.1±9.88歳,男性25例,女性15例であった。疾患内訳は頸椎椎間板ヘルニア10例,頸椎症性神経根症23例,変形性頸椎症7例であった。評価基準としてSF8の評価基準に則り,また機能面,HRQOLに影響を与える可能性がある,明らかな原因による急性発症例,事故後の頸椎疾患,精神疾患・中枢性疾患・上肢疾患合併症例,他疾患による歩行介助症例は除外した。
方法は,初診時のSF8の身体的健康度(PCS)と精神的健康度(MCS)のサマリースコアを国民標準値と比較した。またPCS,MCSを従属変数とし,JOACMEQのサブスケールである頸椎機能,上肢機能,下肢機能,膀胱機能,QOLを独立変数として,その影響について検討した。統計学的解析は正準相関分析を適用した。解析にはR2.8.1(CRAN,freeware)を用い,危険率は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究については筆頭演者所属施設の倫理委員会の承認を得て,対象者には説明を行い,同意を得た。
【結果】
PCS,MCSはともに国民標準値を下回っていた。正準相関分析では,第1正準変量で正準相関係数がr=0.811(p<0.01)であった。従属変数の第1正準負荷量はMCS:-0.958,PCS:-0.271であり,独立変数の第1正準負荷量はQOL:-0.909,膀胱機能:-0.618,下肢運動機能:-0.517,上肢運動機能:-0.328,頸椎機能:-0.141であった。
【考察】
本研究結果より,頸椎変性疾患患者はHRQOLが低下しており,さらにMCSに影響を与える因子として膀胱機能や下肢運動機能などが強く影響し,上肢運動機能はやや影響していた。膀胱機能障害や下肢運動機能障害によるHRQOLの低下についての報告は散見される。頸椎変性疾患患者においては,頸部や上肢の疼痛,痺れなどが症状として多くみられるが,HRQOLの向上には主症状のみではなく,膀胱機能や下肢運動機能など全身的な身体機能の状態も把握することが必要であると考えた。
【理学療法学研究としての意義】
頸椎変性疾患患者のHRQOLに対して影響を与える機能面の特徴を把握することは,理学療法を実施する上で早期のQOL向上のための一助となると考える。