[0550] 経皮的電気刺激療法は腰部脊柱管狭窄症術後の下肢残存症状に効果がある
キーワード:腰部脊柱管狭窄症術後, 下肢残存症状, 経皮的電気刺激療法
【はじめに,目的】
腰部脊柱管狭窄症術後の下肢の疼痛及びしびれを主とした下肢残存症状は,患者満足度の低下にも影響をおよぼし,その治療にも難渋する。本研究の目的は,経皮的電気刺激療法(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation;TENS)が腰部脊柱管狭窄症術後の下肢残存症状におよぼす効果について検討することである。
【方法】
当院にて腰部脊柱管狭窄症に対する後方除圧術を受け,術後に疼痛及びしびれの下肢残存症状を認めた患者40名(男24例:女16例,平均年齢68.8歳)を前向きにサンプリングした。群分けは,TENS介入+従来リハビリ群(以下;TENS群)と従来リハビリ群(以下;control群)とし,手術施行月別に振り分けた。介入内容は,従来リハビリとしてADL指導と個々に応じた運動療法を実施し,TENSは下肢残存症状が強い部位を中心に1日10分間,周波数は100Hz,強度は不快感がなく痛みが生じない範囲で実施した。実施期間は,当院のClinical pathを基準に,リハビリ室に出室する術後4日目から退院日までとした。検討項目は,Primary outcomeとして安静時と歩行時の下肢疼痛及びしびれおよび歩行満足度のVAS(100mm scale),Secondly outcomeとしてPain drawingとJOABPEQの疼痛関連障害,腰椎機能障害,歩行機能障害,社会生活障害,心理的障害とし,術後4日(開始時),術後2週間(退院時),術後1カ月時において評価し,両群間でそれぞれの改善量および有効率を比較検討した。解析はt検定とMann-WhitneyのU検定を用い有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
研究の遂行に当たり,ヘルシンキ宣言の理念に基づき患者の人権擁護には十分の配慮を行い,研究に協力を依頼する患者には研究の目的を十分に理解が得るよう説明と同意を徹底した。また,患者の病状および個人情報の管理を徹底したうえでプライバシーの保護に配慮した。
【結果】
TENS群19例,control群21例であった。術後2週時において,有意な値は認められなかったが,境界領域の値を示したものは安静時下肢疼痛VASの改善量(TENS群9:control群1,P=0.089)であった。術後1カ月時においては,安静時下肢疼痛(TENS群11:control群1,P=0.020),歩行時下肢疼痛(TENS群10:control群0,P=0.033),歩行満足度(TENS群17:control群-9,P=0.018),それぞれのVAS改善量に有意な値を認めた。JOA BPEQは術後1カ月時の有効率で,疼痛機能障害(TENS群86.4%:control群47.1%,P=0.052),腰椎機能障害(TENS群50.0%:control群25.0%,P=0.064)に境界領域の値を示した。その他の検討項目においては有意な値は認められなかった。
【考察】
本研究の結果,TENSは腰部脊柱管狭窄症術後の下肢残存症状に対して有効であることが示唆された。TENSは過去に,肩関節術後,心臓バイパス術後,月経困難症等の侵害受容器性疼痛への効果が報告されており,神経障害性疼痛に対するTENSの効果は不明な点が多い。今回我々は混合性疼痛(侵害受容器性,神経障害性)と考えられている腰部脊柱管狭窄症術後の下肢残存症状に対するTENSの効果を前向き介入比較試験により実証することができた。一般的に,TENSの作用機序はPlacebo効果としての心理的要素,内因性疼痛抑制機構として脳脊髄液中のオピオイド物質が増加し疼痛伝達経路に抑制的に働くとの報告や,gate control theoryに基づき電気刺激が脊髄レベルでの痛みの経路を抑制し求心性神経線維の刺激により疼痛やしびれを緩和させるとの報告がある。本研究においても,これらの作用機序により術後残存症状に効果的であったと考える。
【理学療法学研究としての意義】
術後の創部痛に対するTENSの報告は散見されるが,腰部脊柱管狭窄症術後の下肢残存症状に対するTENSの前向き介入比較研究は存在しない。下肢残存症状に対するTENSは,物理的な特性を考慮すれば患者に負担をかけることなく,臨床的にも有効な手段であるため理学療法研究としても意義があると考える。
腰部脊柱管狭窄症術後の下肢の疼痛及びしびれを主とした下肢残存症状は,患者満足度の低下にも影響をおよぼし,その治療にも難渋する。本研究の目的は,経皮的電気刺激療法(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation;TENS)が腰部脊柱管狭窄症術後の下肢残存症状におよぼす効果について検討することである。
【方法】
当院にて腰部脊柱管狭窄症に対する後方除圧術を受け,術後に疼痛及びしびれの下肢残存症状を認めた患者40名(男24例:女16例,平均年齢68.8歳)を前向きにサンプリングした。群分けは,TENS介入+従来リハビリ群(以下;TENS群)と従来リハビリ群(以下;control群)とし,手術施行月別に振り分けた。介入内容は,従来リハビリとしてADL指導と個々に応じた運動療法を実施し,TENSは下肢残存症状が強い部位を中心に1日10分間,周波数は100Hz,強度は不快感がなく痛みが生じない範囲で実施した。実施期間は,当院のClinical pathを基準に,リハビリ室に出室する術後4日目から退院日までとした。検討項目は,Primary outcomeとして安静時と歩行時の下肢疼痛及びしびれおよび歩行満足度のVAS(100mm scale),Secondly outcomeとしてPain drawingとJOABPEQの疼痛関連障害,腰椎機能障害,歩行機能障害,社会生活障害,心理的障害とし,術後4日(開始時),術後2週間(退院時),術後1カ月時において評価し,両群間でそれぞれの改善量および有効率を比較検討した。解析はt検定とMann-WhitneyのU検定を用い有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
研究の遂行に当たり,ヘルシンキ宣言の理念に基づき患者の人権擁護には十分の配慮を行い,研究に協力を依頼する患者には研究の目的を十分に理解が得るよう説明と同意を徹底した。また,患者の病状および個人情報の管理を徹底したうえでプライバシーの保護に配慮した。
【結果】
TENS群19例,control群21例であった。術後2週時において,有意な値は認められなかったが,境界領域の値を示したものは安静時下肢疼痛VASの改善量(TENS群9:control群1,P=0.089)であった。術後1カ月時においては,安静時下肢疼痛(TENS群11:control群1,P=0.020),歩行時下肢疼痛(TENS群10:control群0,P=0.033),歩行満足度(TENS群17:control群-9,P=0.018),それぞれのVAS改善量に有意な値を認めた。JOA BPEQは術後1カ月時の有効率で,疼痛機能障害(TENS群86.4%:control群47.1%,P=0.052),腰椎機能障害(TENS群50.0%:control群25.0%,P=0.064)に境界領域の値を示した。その他の検討項目においては有意な値は認められなかった。
【考察】
本研究の結果,TENSは腰部脊柱管狭窄症術後の下肢残存症状に対して有効であることが示唆された。TENSは過去に,肩関節術後,心臓バイパス術後,月経困難症等の侵害受容器性疼痛への効果が報告されており,神経障害性疼痛に対するTENSの効果は不明な点が多い。今回我々は混合性疼痛(侵害受容器性,神経障害性)と考えられている腰部脊柱管狭窄症術後の下肢残存症状に対するTENSの効果を前向き介入比較試験により実証することができた。一般的に,TENSの作用機序はPlacebo効果としての心理的要素,内因性疼痛抑制機構として脳脊髄液中のオピオイド物質が増加し疼痛伝達経路に抑制的に働くとの報告や,gate control theoryに基づき電気刺激が脊髄レベルでの痛みの経路を抑制し求心性神経線維の刺激により疼痛やしびれを緩和させるとの報告がある。本研究においても,これらの作用機序により術後残存症状に効果的であったと考える。
【理学療法学研究としての意義】
術後の創部痛に対するTENSの報告は散見されるが,腰部脊柱管狭窄症術後の下肢残存症状に対するTENSの前向き介入比較研究は存在しない。下肢残存症状に対するTENSは,物理的な特性を考慮すれば患者に負担をかけることなく,臨床的にも有効な手段であるため理学療法研究としても意義があると考える。