[0556] 超高齢大腿骨近位部骨折患者における早期自宅退院の可否に関連する因子の検討
キーワード:大腿骨近位部骨折, 超高齢者, 早期退院
【はじめに】
男女ともに都道府県別の平均寿命が第一位となった長野県に位置する当院において,高齢者に多い大腿骨近位部骨折患者の理学療法に携わる機会は多く,近年の在院日数短縮化の中でより早期から転帰先を適切に判断する必要性を感じる。大腿骨近位部骨折患者の予後予測因子として様々な因子が報告されているが,85歳以上の超高齢者では医学的視点や社会的視点から見て前期高齢者と異なる点も多く,超高齢者の自宅退院が早期に可能となるかという視点で関連する因子を検討した報告は乏しい。そこで本研究は,超高齢者の大腿骨近位部骨折患者の早期自宅退院の可否に関連する因子について検討することを目的とした。
【方法】
対象は2012年1月から2013年10月までに大腿骨近位部骨折で入院し理学療法を行った85歳以上の患者のうち,自宅への退院及び他施設へリハビリ目的で転院された27名とした。対象を当院から直接自宅へ退院となった自宅退院例15名(以下自宅群:男性1名,女性14名,平均年齢91.4±3.7歳,術後在院日数18.5±3.6日)と,リハビリテーション継続目的で他施設へ転院となった12名(以下非自宅群:男性5名,女性7名,平均年齢91.7±5.7歳,術後在院日数17.8±6.8日)に分類し,下記の項目を比較検討した。早期の自宅退院可否への関連性を検討する因子として年齢,性別(男/女),骨折型(頚部骨折/転子部骨折),術式(人工関節置換術/内固定術),受傷前生活場所(自宅/自宅以外),受傷前介護保険利用(有/無)認知症及び既往症(有/無),同居家族(有/無),受傷前移動方法(車いす/歩行)及びADL(自立/自立未満)及び退院時ADL(Barthel Index:以下BI),術後1週時点の病棟トイレまでの移動方法(車いす/歩行器),術後1週時点での理学療法進捗状況(ベッド上~平行棒内歩行/歩行器~杖),退院時移動手段(車いす/歩行器~杖)等を診療情報録から後方視的に調査した。入院前のADLとして移乗,排泄について本人または家族から口頭で聴取した内容からBIに則り自立と自立未満を判定した。また,術後1週時点での病棟でのトイレ移動の方法については見守りや自立を問わず実際の活動量として歩行を行っているかどうかで判定した。統計学的検討として,2群の比較には対応のないt検定,Mann-WhitneyのU検定とFisherの正確確率検定を用いた。統計解析にはSPSS ver11を使用し,有水準はそれぞれ5%未満とした。
【倫理的配慮】
本研究は当院の臨床倫理審査委員会の定める規定に則り行い,ヘルシンキ宣言に沿って実施し,調査において対象とする個人の人権擁護と倫理配慮のうえでデータを取り扱った。
【結果】
自宅群,非自宅群の比較で有意差を認めた項目は,受傷前の生活場所,介護保険利用,同居家族有無,(p<0.01),性別,受傷前移動能力,術後1週時点での病棟内トイレ移動方法,理学療法進捗状況,退院時の移動手段,移乗能力,排泄能力(p<0.05),で有意差を認めた。他の項目では有意差を認めなかった。自宅群では女性が多く,受傷前因子では生活場所が自宅,介護保険利用が無い,移動能力が歩行(歩行補助具利用含む),同居家族が有りのものが有意に多かった。また術後1週時点での病棟トイレまでの移動が歩行,術後1週時点での理学療法時に歩行補助具を用いての歩行,退院時の移動手段が歩行のものが有意に多く,退院時ADLとして移乗と排泄動作のBI点数が有意に高かった。
【考察】
これまで,大腿骨頚部骨折の機能的予後や転帰先の予測因子の報告は高齢者全般を対象としており,超高齢者に限定した中での予後予測因子の検討については乏しい現状である。また,在院日数が短縮化傾向の中で術後早期から転帰先を予測する意義を強く感じ,平均術後在院日数18日前後で自宅復帰が可能な群と継続してリハビリテーションを実施し自宅復帰を目指した群での関連因子の比較検討を行った。今回の結果からは,早期自宅退院の受傷前因子として女性,生活場所が自宅,家族と同居,介護保険利用が無い,歩行での移動等の項目があげられ,入院時点で該当項目についての情報収集を適切に行い,転帰先を予測した中でプログラムの立案を行うことが重要であると考えられる。さらに入院中の経過として,術後1週間の時点で病棟トイレ移動及び理学療法場面で歩行補助具を利用した歩行を行っているかを加味する事で,さらに転帰先についての再検討を適切に行える可能性が示唆されたと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
本研究では,高齢化及び在院日数短縮化迎える医療情勢の中で超高齢者を対象に早期に自宅復復帰に関連する因子を検討した点において理学療法学研究としての意義があると考える。
男女ともに都道府県別の平均寿命が第一位となった長野県に位置する当院において,高齢者に多い大腿骨近位部骨折患者の理学療法に携わる機会は多く,近年の在院日数短縮化の中でより早期から転帰先を適切に判断する必要性を感じる。大腿骨近位部骨折患者の予後予測因子として様々な因子が報告されているが,85歳以上の超高齢者では医学的視点や社会的視点から見て前期高齢者と異なる点も多く,超高齢者の自宅退院が早期に可能となるかという視点で関連する因子を検討した報告は乏しい。そこで本研究は,超高齢者の大腿骨近位部骨折患者の早期自宅退院の可否に関連する因子について検討することを目的とした。
【方法】
対象は2012年1月から2013年10月までに大腿骨近位部骨折で入院し理学療法を行った85歳以上の患者のうち,自宅への退院及び他施設へリハビリ目的で転院された27名とした。対象を当院から直接自宅へ退院となった自宅退院例15名(以下自宅群:男性1名,女性14名,平均年齢91.4±3.7歳,術後在院日数18.5±3.6日)と,リハビリテーション継続目的で他施設へ転院となった12名(以下非自宅群:男性5名,女性7名,平均年齢91.7±5.7歳,術後在院日数17.8±6.8日)に分類し,下記の項目を比較検討した。早期の自宅退院可否への関連性を検討する因子として年齢,性別(男/女),骨折型(頚部骨折/転子部骨折),術式(人工関節置換術/内固定術),受傷前生活場所(自宅/自宅以外),受傷前介護保険利用(有/無)認知症及び既往症(有/無),同居家族(有/無),受傷前移動方法(車いす/歩行)及びADL(自立/自立未満)及び退院時ADL(Barthel Index:以下BI),術後1週時点の病棟トイレまでの移動方法(車いす/歩行器),術後1週時点での理学療法進捗状況(ベッド上~平行棒内歩行/歩行器~杖),退院時移動手段(車いす/歩行器~杖)等を診療情報録から後方視的に調査した。入院前のADLとして移乗,排泄について本人または家族から口頭で聴取した内容からBIに則り自立と自立未満を判定した。また,術後1週時点での病棟でのトイレ移動の方法については見守りや自立を問わず実際の活動量として歩行を行っているかどうかで判定した。統計学的検討として,2群の比較には対応のないt検定,Mann-WhitneyのU検定とFisherの正確確率検定を用いた。統計解析にはSPSS ver11を使用し,有水準はそれぞれ5%未満とした。
【倫理的配慮】
本研究は当院の臨床倫理審査委員会の定める規定に則り行い,ヘルシンキ宣言に沿って実施し,調査において対象とする個人の人権擁護と倫理配慮のうえでデータを取り扱った。
【結果】
自宅群,非自宅群の比較で有意差を認めた項目は,受傷前の生活場所,介護保険利用,同居家族有無,(p<0.01),性別,受傷前移動能力,術後1週時点での病棟内トイレ移動方法,理学療法進捗状況,退院時の移動手段,移乗能力,排泄能力(p<0.05),で有意差を認めた。他の項目では有意差を認めなかった。自宅群では女性が多く,受傷前因子では生活場所が自宅,介護保険利用が無い,移動能力が歩行(歩行補助具利用含む),同居家族が有りのものが有意に多かった。また術後1週時点での病棟トイレまでの移動が歩行,術後1週時点での理学療法時に歩行補助具を用いての歩行,退院時の移動手段が歩行のものが有意に多く,退院時ADLとして移乗と排泄動作のBI点数が有意に高かった。
【考察】
これまで,大腿骨頚部骨折の機能的予後や転帰先の予測因子の報告は高齢者全般を対象としており,超高齢者に限定した中での予後予測因子の検討については乏しい現状である。また,在院日数が短縮化傾向の中で術後早期から転帰先を予測する意義を強く感じ,平均術後在院日数18日前後で自宅復帰が可能な群と継続してリハビリテーションを実施し自宅復帰を目指した群での関連因子の比較検討を行った。今回の結果からは,早期自宅退院の受傷前因子として女性,生活場所が自宅,家族と同居,介護保険利用が無い,歩行での移動等の項目があげられ,入院時点で該当項目についての情報収集を適切に行い,転帰先を予測した中でプログラムの立案を行うことが重要であると考えられる。さらに入院中の経過として,術後1週間の時点で病棟トイレ移動及び理学療法場面で歩行補助具を利用した歩行を行っているかを加味する事で,さらに転帰先についての再検討を適切に行える可能性が示唆されたと考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
本研究では,高齢化及び在院日数短縮化迎える医療情勢の中で超高齢者を対象に早期に自宅復復帰に関連する因子を検討した点において理学療法学研究としての意義があると考える。