[0558] くも膜下出血におけるコイル塞栓術+早期リハビリテーションの有用性
Keywords:早期リハビリテーション, コイル塞栓術, 転帰
【目的】当院は2009年に脳血管内治療センター(以下センター)を立ち上げ,くも膜下出血(以下SAH)の治療においてクリッピング術からコイル塞栓術を第一選択とし,これに伴い早期リハビリテーション(以下早期リハ)を実施している。昨年の同学術大会にて高齢SAH症例におけるコイル塞栓術の有用性と早期リハの効果が明らかになったが,2つのバイアスにより転帰改善の要因が不明確であった。そこで今回はセンター開設後のクリッピング例を加え,コイル塞栓術の有用性と早期リハの効果を再分析することを目的とする。
【方法】対象は2006年1月~2013年8月までにSAHと診断され手術が行われた163例(死亡例,保存症例は除外)とした。センター開設前の1群:クリップ安静(n=53)は,術後1~7日で介入しspasm期はベッド上のリハビリ中心でその後段階的に離床を拡大した。一方センター開設後を2群:クリップ早期リハ(n=15),3群:コイル早期リハ(n=95)に分類し,これらは術式に関わらず術後早期にドレーン挿入下であっても離床を促し,装具療法も取り入れ立位・歩行を実施した。また,ドレーン管理においてはマニュアルを作成し,看護師との協力体制を敷いている。1群と2+3群,つまり血管内治療導入前後で転帰(肺炎発生率・退院時mRS・自宅復帰率)を比較検討した。次に3群間での転帰を比較検討した。統計学的検定にはt検定,カイ2乗検定,Mann-Whitney検定,Kruskal-Wallis検定を用い有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究の内容は当院倫理委員会にて承認され,対象症例には研究の説明と同意を得て行った。
【結果】1,2,3群における年齢,重症度(H&K grade)に差はなかった。肺炎発生率は1群:26%,2群:13%,3群:9%であり,自宅復帰率は1群:58%,2群:53%,3群:73%であった。血管内治療導入前後の比較では,2+3群で肺炎発生率(p=0.006),mRS(p=0.008)は有意に良好であり,自宅復帰率は有意差を認めないものの良好であった(p=0.15)。1vs2群では肺炎発生率(p=0.29),mRS(p=0.72),自宅復帰率(p=0.72)いずれも有意差を認めなかった。また2vs 3群でも肺炎発生率(p=0.64),mRS(p=0.20),自宅復帰率(p=0.13)いずれも有意差を認めなかった。一方1vs 3群において,肺炎発生率(p=0.006),mRS(p=0.004)は有意に3群が良好であり,自宅復帰率も有意差はないが3群が良好であった(p=0.08)。
【考察】SAHの転帰において救命はなされても機能予後の低下が問題視されている。脳卒中データバンクによると,SAHの予後に関する因子は重症度と年齢と動脈瘤の大きさである。転帰不良とされている重症例や高齢者をどう救うかが今後のSAH治療の課題と言える。近藤らは80歳以上のSAHに対して適切な治療選択と早期リハの重要性を述べている。また嶋田らはSAH独歩退院のための治療戦略の1つに術翌日からの離床を挙げている。当院においても低侵襲である血管内治療導入後に早期にリハベースに乗せることが可能となった。この方針転換によりSAH患者の転帰は肺炎発生率と退院時mRSが有意に改善し,機能予後の改善につながったものと考えられる。そこで,コイル塞栓術と早期リハのどちらの要因が転帰改善に影響を及ぼしているのかを明らかにするため,1から3群の比較検討を行った。その結果,1vs2群にて有意差が認められなかったことから早期リハだけが転帰改善の要因ではなく,2vs 3群にて有意差が認められなかったことからコイル塞栓術だけが転帰改善の要因ではないことが明らかになった。そして1vs 3群において有意差を認めたことから,コイル塞栓術と早期リハ双方の相乗効果によりSAH患者の転帰向上に結びついたと考えられる。しかしながら自宅復帰率に有意差が認められなかった。この理由として,特に高齢者では機能改善を図っても病前の生活背景が影響し,自宅復帰を困難にしている場合があると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】脳卒中ガイドライン2009においても早期リハはグレードAで推奨されているが,SAH術後の離床開始時期は明確な方針が確立されていない。SAH患者の転帰向上には,医師による手術手技の選択や技術向上に加え,私たちによる術後の確かなリスク管理下,廃用症候群を可能な限り排除した早期リハビリテーションが重要と考えられる。
【方法】対象は2006年1月~2013年8月までにSAHと診断され手術が行われた163例(死亡例,保存症例は除外)とした。センター開設前の1群:クリップ安静(n=53)は,術後1~7日で介入しspasm期はベッド上のリハビリ中心でその後段階的に離床を拡大した。一方センター開設後を2群:クリップ早期リハ(n=15),3群:コイル早期リハ(n=95)に分類し,これらは術式に関わらず術後早期にドレーン挿入下であっても離床を促し,装具療法も取り入れ立位・歩行を実施した。また,ドレーン管理においてはマニュアルを作成し,看護師との協力体制を敷いている。1群と2+3群,つまり血管内治療導入前後で転帰(肺炎発生率・退院時mRS・自宅復帰率)を比較検討した。次に3群間での転帰を比較検討した。統計学的検定にはt検定,カイ2乗検定,Mann-Whitney検定,Kruskal-Wallis検定を用い有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究の内容は当院倫理委員会にて承認され,対象症例には研究の説明と同意を得て行った。
【結果】1,2,3群における年齢,重症度(H&K grade)に差はなかった。肺炎発生率は1群:26%,2群:13%,3群:9%であり,自宅復帰率は1群:58%,2群:53%,3群:73%であった。血管内治療導入前後の比較では,2+3群で肺炎発生率(p=0.006),mRS(p=0.008)は有意に良好であり,自宅復帰率は有意差を認めないものの良好であった(p=0.15)。1vs2群では肺炎発生率(p=0.29),mRS(p=0.72),自宅復帰率(p=0.72)いずれも有意差を認めなかった。また2vs 3群でも肺炎発生率(p=0.64),mRS(p=0.20),自宅復帰率(p=0.13)いずれも有意差を認めなかった。一方1vs 3群において,肺炎発生率(p=0.006),mRS(p=0.004)は有意に3群が良好であり,自宅復帰率も有意差はないが3群が良好であった(p=0.08)。
【考察】SAHの転帰において救命はなされても機能予後の低下が問題視されている。脳卒中データバンクによると,SAHの予後に関する因子は重症度と年齢と動脈瘤の大きさである。転帰不良とされている重症例や高齢者をどう救うかが今後のSAH治療の課題と言える。近藤らは80歳以上のSAHに対して適切な治療選択と早期リハの重要性を述べている。また嶋田らはSAH独歩退院のための治療戦略の1つに術翌日からの離床を挙げている。当院においても低侵襲である血管内治療導入後に早期にリハベースに乗せることが可能となった。この方針転換によりSAH患者の転帰は肺炎発生率と退院時mRSが有意に改善し,機能予後の改善につながったものと考えられる。そこで,コイル塞栓術と早期リハのどちらの要因が転帰改善に影響を及ぼしているのかを明らかにするため,1から3群の比較検討を行った。その結果,1vs2群にて有意差が認められなかったことから早期リハだけが転帰改善の要因ではなく,2vs 3群にて有意差が認められなかったことからコイル塞栓術だけが転帰改善の要因ではないことが明らかになった。そして1vs 3群において有意差を認めたことから,コイル塞栓術と早期リハ双方の相乗効果によりSAH患者の転帰向上に結びついたと考えられる。しかしながら自宅復帰率に有意差が認められなかった。この理由として,特に高齢者では機能改善を図っても病前の生活背景が影響し,自宅復帰を困難にしている場合があると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】脳卒中ガイドライン2009においても早期リハはグレードAで推奨されているが,SAH術後の離床開始時期は明確な方針が確立されていない。SAH患者の転帰向上には,医師による手術手技の選択や技術向上に加え,私たちによる術後の確かなリスク管理下,廃用症候群を可能な限り排除した早期リハビリテーションが重要と考えられる。