[0593] 大腿骨頭壊死症に対する自己骨随由来間葉系幹細胞を用いた臨床試験におけるリハビリテーション
Keywords:大腿骨頭壊死, 再生医療, 運動器リハビリテーション
【はじめに,目的】
再生医療は従来の治療では治癒が困難な患者にとって大きな希望である。いくつかの疾患においては既に臨床試験が開始され,良好な結果も報告されている。しかしながら細胞移植後あるいは輸注後のリハビリテーションにおいて特化したプログラムはなく,従来のリハビリテーションプログラムに沿って実施されているのが現状である。そこで本研究においては,臨床試験「大腿骨頭無腐性壊死患者に対する骨髄間葉系幹細胞を用いた骨再生治療の検討」を実施時のリハビリテーションプログラムとその結果を検証することを目的とする。
【方法】
本臨床試験は特発性大腿骨頭壊死症(ステロイド性含む)のうち厚生労働省素案X線グレードstage3A及び3Bの患者10名を対象に,自己骨随由来間葉系幹細胞とベータリン酸三カルシウムを血管柄付き腸骨移植術と併用し,細胞移植治療の有効性と安全性を検証する非盲検単群試験である。
本臨床試験で実施したリハビリテーションプログラムは従来の骨頭温存手術後のプログラムに準拠してプログラム構築した。荷重は術後6週より1/3荷重から開始し,以後は2週毎に荷重量を増加し,術後12週で全荷重とした。関節可動域エクササイズは健側は術後3日,患側は術後2週から開始した。筋力強化エクササイズは健側は術後3日から,患側は術後6週から開始した。リハビリテーション実施期間は,急性期病院入院の1ヵ月間を急性期リハビリテーション,回復期病院に転院後2ヵ月間を回復期リハビリテーション,回復期病院退院後2ヵ月間を外来リハビリテーションとして実施した。リハビリテーション効果の判定は,機能評価として股関節可動域測定,筋力測定,パフォーマンス評価をTimed up and go test(TUG)にて行い,健康関連QOL評価として日本語版SF-36を用いた。関節可動域は股関節屈曲,伸展,外転,外旋を測定した。股関節周囲筋力(伸展,屈曲,外転)は徒手筋力計を,膝関節周囲筋力(伸展,屈曲)はIsoForce GT-330を用いて評価した。統計解析は術前,術後6ヵ月,術後1年の変化をFriedman検定にて解析した。多重比較はScheffeの対比較により行い,有意水準を5%とした。
安全性の評価はリハビリテーションも含めて,臨床試験全体を通して有害事象のモニターを独立したデータマネジメントセンターで実施した。
【倫理的配慮,説明と同意】
文書及び口頭にて研究の目的,方法を説明し,文書による同意を得た患者を対象にした。本臨床試験は当該施設の倫理委員会に承認され実施した。
【結果】
本臨床試験には男性10名(20~48歳)が参加した。股関節可動域は患側,健側のいずれの可動域も治療前と比較して術後6ヵ月では増大傾向を示したが,術後1年では横ばいからやや低下傾向にあった。これらのうち患側の外旋は術前と術後6ヵ月との間で有意な増大を認めた。筋力は患側,健側のいずれの筋力も治療前と比較して術後6ヵ月で増加傾向を認め,術後1年ではやや増加傾向にあった。患側の股関節伸展,外転は有意な増加を認めた。TUGは改善傾向であったが統計的有意差は認めなかった。SF-36は下位尺度のうちphysical function,role-physical,bodily painは有意な改善を認めた。general health,social function,role-emotion,mental healthは統計的有意差を認めないが,改善傾向を示し,vitalityは不変であった。リハビリテーション実施中の有害事象は「筋肉痛」「筋のこわばり」などの主に筋力強化によるものであった。
【考察】
米国においてはAmbrosioがregenerative rehabilitationという名称で,再生医療におけるリハビリテーションの新たな役割について概念化を行なっている。しかしながら世界的にも再生医療後のリハビリテーションとして確立したプログラムはいまだ存在せず,従来のプログラムを踏襲して行なっているのが現状である。本臨床試験は非盲検単群試験であることから,今回のリハビリテーションプログラムの有効性について言及することはできない。しかしながらその効果について有効性と安全性を示唆する結果を得られた事から今後の発展性が期待される。今後は更に,再生医療に特化したリハビリテーションプログラムを基礎研究で開発することに加えて,臨床における有効性を臨床試験等によって明らかにすることが必要である。
【理学療法学研究としての意義】
今後,国内外において再生医療はますます発展することが予想される。細胞移植治療においては移植,輸注した細胞が移植部において成熟した組織に分化し,移植母床と一体化することが必要で,その際に理学療法はそれらを促す重要な因子になると考えられ,当該研究を実施することは再生医療のみならず理学療法の発展に大きく寄与すると考えられる。
再生医療は従来の治療では治癒が困難な患者にとって大きな希望である。いくつかの疾患においては既に臨床試験が開始され,良好な結果も報告されている。しかしながら細胞移植後あるいは輸注後のリハビリテーションにおいて特化したプログラムはなく,従来のリハビリテーションプログラムに沿って実施されているのが現状である。そこで本研究においては,臨床試験「大腿骨頭無腐性壊死患者に対する骨髄間葉系幹細胞を用いた骨再生治療の検討」を実施時のリハビリテーションプログラムとその結果を検証することを目的とする。
【方法】
本臨床試験は特発性大腿骨頭壊死症(ステロイド性含む)のうち厚生労働省素案X線グレードstage3A及び3Bの患者10名を対象に,自己骨随由来間葉系幹細胞とベータリン酸三カルシウムを血管柄付き腸骨移植術と併用し,細胞移植治療の有効性と安全性を検証する非盲検単群試験である。
本臨床試験で実施したリハビリテーションプログラムは従来の骨頭温存手術後のプログラムに準拠してプログラム構築した。荷重は術後6週より1/3荷重から開始し,以後は2週毎に荷重量を増加し,術後12週で全荷重とした。関節可動域エクササイズは健側は術後3日,患側は術後2週から開始した。筋力強化エクササイズは健側は術後3日から,患側は術後6週から開始した。リハビリテーション実施期間は,急性期病院入院の1ヵ月間を急性期リハビリテーション,回復期病院に転院後2ヵ月間を回復期リハビリテーション,回復期病院退院後2ヵ月間を外来リハビリテーションとして実施した。リハビリテーション効果の判定は,機能評価として股関節可動域測定,筋力測定,パフォーマンス評価をTimed up and go test(TUG)にて行い,健康関連QOL評価として日本語版SF-36を用いた。関節可動域は股関節屈曲,伸展,外転,外旋を測定した。股関節周囲筋力(伸展,屈曲,外転)は徒手筋力計を,膝関節周囲筋力(伸展,屈曲)はIsoForce GT-330を用いて評価した。統計解析は術前,術後6ヵ月,術後1年の変化をFriedman検定にて解析した。多重比較はScheffeの対比較により行い,有意水準を5%とした。
安全性の評価はリハビリテーションも含めて,臨床試験全体を通して有害事象のモニターを独立したデータマネジメントセンターで実施した。
【倫理的配慮,説明と同意】
文書及び口頭にて研究の目的,方法を説明し,文書による同意を得た患者を対象にした。本臨床試験は当該施設の倫理委員会に承認され実施した。
【結果】
本臨床試験には男性10名(20~48歳)が参加した。股関節可動域は患側,健側のいずれの可動域も治療前と比較して術後6ヵ月では増大傾向を示したが,術後1年では横ばいからやや低下傾向にあった。これらのうち患側の外旋は術前と術後6ヵ月との間で有意な増大を認めた。筋力は患側,健側のいずれの筋力も治療前と比較して術後6ヵ月で増加傾向を認め,術後1年ではやや増加傾向にあった。患側の股関節伸展,外転は有意な増加を認めた。TUGは改善傾向であったが統計的有意差は認めなかった。SF-36は下位尺度のうちphysical function,role-physical,bodily painは有意な改善を認めた。general health,social function,role-emotion,mental healthは統計的有意差を認めないが,改善傾向を示し,vitalityは不変であった。リハビリテーション実施中の有害事象は「筋肉痛」「筋のこわばり」などの主に筋力強化によるものであった。
【考察】
米国においてはAmbrosioがregenerative rehabilitationという名称で,再生医療におけるリハビリテーションの新たな役割について概念化を行なっている。しかしながら世界的にも再生医療後のリハビリテーションとして確立したプログラムはいまだ存在せず,従来のプログラムを踏襲して行なっているのが現状である。本臨床試験は非盲検単群試験であることから,今回のリハビリテーションプログラムの有効性について言及することはできない。しかしながらその効果について有効性と安全性を示唆する結果を得られた事から今後の発展性が期待される。今後は更に,再生医療に特化したリハビリテーションプログラムを基礎研究で開発することに加えて,臨床における有効性を臨床試験等によって明らかにすることが必要である。
【理学療法学研究としての意義】
今後,国内外において再生医療はますます発展することが予想される。細胞移植治療においては移植,輸注した細胞が移植部において成熟した組織に分化し,移植母床と一体化することが必要で,その際に理学療法はそれらを促す重要な因子になると考えられ,当該研究を実施することは再生医療のみならず理学療法の発展に大きく寄与すると考えられる。