[0625] 高齢者の強壮・虚弱を反映する体組成成分指標の検討
Keywords:高齢者, 除脂肪量, FFMI
【はじめに,目的】理学療法評価の中で広く用いられている体格栄養評価にBody Mass Index(BMI)がある。BMIは,身長・体重で構成されているため,BMIの増減が脂肪量,除脂肪量のいずれによるものかは判断できない。BMIは,身体組成を反映した健康・栄養状態までは表していないことから,体格の影響を補正した除脂肪量指数(fat-free mass index:FFMI),脂肪量指数(free mass index:FMI)が評価に用いられている。FFMI,FMIは除脂肪量または脂肪量を身長の二乗で除した指数であり,BMIを構成している。また,全身の骨格筋量は加齢に伴って徐々に減少し,体組成における脂肪の割合は増加する。高齢者では,BMIに明らかな変化が認められない場合でも一般成人と異なる体組成成分を示すことがある。そのため,高齢者の体格栄養評価をする際,体組成成分を評価する必要がある。現在,高齢者の筋肉量についての報告はみられるが,BMIをFMIとFFMIに分け体組成成分を検討している研究は少ない。そこで,高齢者の強壮・虚弱を反映する指標としてFMI,FFMIに着目した。本研究では,若年男性と活動性の高い高齢男性を対象に身体組成を計測し,体組成成分量,FFMI,FMIを検討した。
【方法】対象は,若年男性34名(年齢19.3±0.4歳),健康増進関連行事に積極的に参加し活動性の高い地域在住高齢男性22名(年齢71.2±3.6歳)である。体組成測定には,生体電気インピーダンス法である体成分分析装置(バイオスペース社製InBody520)を用いた。測定周波数は,5,50,500kHzの3種類で,四肢遠位端の電極から電流を供給した。対象者は床に設置された機器の定位置に裸足で立ち,体重を計測した。その後,付属のグリップを両手で持ち,両腕が体幹,下肢が接しない姿勢で計測を開始した。計測した体脂肪量,除脂肪量からFMI,FFMIを算出した。統計的手法には,Mann-Whitney U検定を使用し,5%を有意水準とした。
【倫理的配慮,説明と同意】体組成測定の実施に際し,対象者には,研究の内容,研究で得られた結果は目的以外に使用しないことを十分に説明し同意を得た。
【結果】身長は若年者172.0±5.9cm,高齢者162.9±5.2cm,体重は若年者66.2±13.7kg,高齢者63.5±7.7kgであった。身長に有意差はみられたが,体重には有意差はみられなかった。BMIは,若年者22.4±4.6kg/m2,高齢者23.9±2.7kg/m2で有意差がみられた。体脂肪量は,若年者10.9±9.5kg,高齢者13.8±5.1kgで有意な差がみられ,FMIも若年者3.7±3.3kg/m2,高齢者5.2±1.9kg/m2と有意差がみられた。除脂肪量は,若年者55.2±6.3kg,高齢者は49.8±3.9kgで有意差がみられた。しかし,FFMIにおいては,若年者18.6±1.7kg/m2,高齢者18.8±1.2kg/m2と高齢者がやや高い値を示したが有意差はみられなかった。
【考察】筋肉量の加齢変化は部位により異なり,減少率が最も大きいのは下肢で,次に全身,上肢,体幹部の順と報告されている。このため高齢期の健康づくりにおいて早期から特に下肢に注目した支援の必要性が示唆される。今回の対象者は日頃から健康増進関連行事に積極的に参加しており,活動性の高い地域在住高齢男性で下肢筋量が比較的保たれていると考えられ,高齢強壮群の特徴を表している。結果より体組成成分を比較すると,BMI,脂肪量,FMI,除脂肪量に有意差はみられたが,FFMIにおいては有意な差はみられなかった。FMMIは年齢による変化が少なく,FMIは若年者に比べ高齢者が高くなる報告があり,本研究においても同様の結果が得られた。高齢男性のBMIが有意に高くなったのは,脂肪量の増加がBMIに反映したと考える。脂肪量は加齢に伴い増加するためBMIだけではなくFMIにおいても有意差がみられた。一方,FFMIでは有意な差は認められなかった。除脂肪量は有意差が認められたが,身長により補正したFFMIにおいて差がみられなかったことから,身長差により除脂肪量に有意差が生じたものと考える。これより,身長が異なる対象者の体組成成分を解釈するのに有効であることが示された。また,FFMIは若年者で18.6±1.7kg/m2,高齢男性では18.8±1.2kg/m2であった。先行研究では,男性の平均値は18~19 kg/m2と報告されており,同様の結果を得られた。これらより,高齢強壮群は,加齢によりBMI,FMIは高くなるが,FFMIは変化しないことが明らかになった。FFMIはBMIと異なり,加齢による脂肪量が影響しないため,体格栄養評価の指標の一つとなる可能性が示唆された。今後は対象者数を増やし,臨床での有用性について検討していく必要がある。
【理学療法学研究としての意義】FFMIは体格栄養評価において有用な指数の一つとなる可能性が期待できる。今後は,臨床現場で,栄養状態の把握に用いることが可能になると考えている。
【方法】対象は,若年男性34名(年齢19.3±0.4歳),健康増進関連行事に積極的に参加し活動性の高い地域在住高齢男性22名(年齢71.2±3.6歳)である。体組成測定には,生体電気インピーダンス法である体成分分析装置(バイオスペース社製InBody520)を用いた。測定周波数は,5,50,500kHzの3種類で,四肢遠位端の電極から電流を供給した。対象者は床に設置された機器の定位置に裸足で立ち,体重を計測した。その後,付属のグリップを両手で持ち,両腕が体幹,下肢が接しない姿勢で計測を開始した。計測した体脂肪量,除脂肪量からFMI,FFMIを算出した。統計的手法には,Mann-Whitney U検定を使用し,5%を有意水準とした。
【倫理的配慮,説明と同意】体組成測定の実施に際し,対象者には,研究の内容,研究で得られた結果は目的以外に使用しないことを十分に説明し同意を得た。
【結果】身長は若年者172.0±5.9cm,高齢者162.9±5.2cm,体重は若年者66.2±13.7kg,高齢者63.5±7.7kgであった。身長に有意差はみられたが,体重には有意差はみられなかった。BMIは,若年者22.4±4.6kg/m2,高齢者23.9±2.7kg/m2で有意差がみられた。体脂肪量は,若年者10.9±9.5kg,高齢者13.8±5.1kgで有意な差がみられ,FMIも若年者3.7±3.3kg/m2,高齢者5.2±1.9kg/m2と有意差がみられた。除脂肪量は,若年者55.2±6.3kg,高齢者は49.8±3.9kgで有意差がみられた。しかし,FFMIにおいては,若年者18.6±1.7kg/m2,高齢者18.8±1.2kg/m2と高齢者がやや高い値を示したが有意差はみられなかった。
【考察】筋肉量の加齢変化は部位により異なり,減少率が最も大きいのは下肢で,次に全身,上肢,体幹部の順と報告されている。このため高齢期の健康づくりにおいて早期から特に下肢に注目した支援の必要性が示唆される。今回の対象者は日頃から健康増進関連行事に積極的に参加しており,活動性の高い地域在住高齢男性で下肢筋量が比較的保たれていると考えられ,高齢強壮群の特徴を表している。結果より体組成成分を比較すると,BMI,脂肪量,FMI,除脂肪量に有意差はみられたが,FFMIにおいては有意な差はみられなかった。FMMIは年齢による変化が少なく,FMIは若年者に比べ高齢者が高くなる報告があり,本研究においても同様の結果が得られた。高齢男性のBMIが有意に高くなったのは,脂肪量の増加がBMIに反映したと考える。脂肪量は加齢に伴い増加するためBMIだけではなくFMIにおいても有意差がみられた。一方,FFMIでは有意な差は認められなかった。除脂肪量は有意差が認められたが,身長により補正したFFMIにおいて差がみられなかったことから,身長差により除脂肪量に有意差が生じたものと考える。これより,身長が異なる対象者の体組成成分を解釈するのに有効であることが示された。また,FFMIは若年者で18.6±1.7kg/m2,高齢男性では18.8±1.2kg/m2であった。先行研究では,男性の平均値は18~19 kg/m2と報告されており,同様の結果を得られた。これらより,高齢強壮群は,加齢によりBMI,FMIは高くなるが,FFMIは変化しないことが明らかになった。FFMIはBMIと異なり,加齢による脂肪量が影響しないため,体格栄養評価の指標の一つとなる可能性が示唆された。今後は対象者数を増やし,臨床での有用性について検討していく必要がある。
【理学療法学研究としての意義】FFMIは体格栄養評価において有用な指数の一つとなる可能性が期待できる。今後は,臨床現場で,栄養状態の把握に用いることが可能になると考えている。