[0633] スクエアステップが脳血管障害者の身体・認知機能に及ぼす影響について
キーワード:スクエアステップ, 脳血管障害者, 歩行
【はじめに,目的】
大蔵らが開発した転倒・認知症予防エクササイズ「スクエアステップ(SSE)」は脳機能賦活と身体活動量増大に効果的であると報告されている。このSSEはこれまでに主に高齢者の転倒予防効果(下肢筋力,反応性,バランス等)や認知機能の改善の報告がされている。しかし,身体に障害のある脳血管障害者に対するSSEの効果は未だ実証されていない。そこで今回,SSEが脳血管障害者の身体・認知機能へ及ぼす影響について検証することを目的とした。
【方法】
対象は当施設の機能訓練事業を利用し,歩行が50m以上可能な脳血管障害者7人(屋外歩行自立:3人,屋内歩行自立3人,屋内歩行監視1人。男性7人。年齢46±4.2歳。発症からの期間18.7±7.3ヶ月)であった。SSEは,当センターにて実施している集団運動のプログラムの一部として週1回,約20分間のうちに基本ステップ(6種目),チャレンジステップ(32種目)から選択して対象者全員で実施した。SSE実施前の初回評価時および実施3か月後に,下肢筋力として5回椅子立ち上がりテスト,反応性としてSSE基本ステップ(6種目)の1回所用時間,バランス機能としてFunctional Balance Scale(FBS),認知機能として浜松方式高次脳機能スケール(対象のうち失語症を有する者(2人)は除外した)を用いて評価した。初回評価と実施3か月後の各評価結果について,正規分布する場合は対応のあるt検定を用い,正規分布しない場合はWilcoxonの符号付順位和検定を用いて,有意差を比較した。統計的有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき,研究の目的と内容を対象者に事前に口頭と書面にて説明し,同意を得た後実施した。
【結果】
3か月間で全13回SSEを実施し,1人あたりの参加数は8.3回,参加率は63.7%だった。屋内歩行監視であった対象者1人が実施期間中に屋内歩行自立となった。初回評価と実施3か月後における比較において,5回椅子立ち上がりテスト初回は12.2±2.2秒,3か月後は11.7±2.8秒に短縮した。SSE基本ステップの1回所用時間初回の「右から開き」は14.7±3.2秒,「左から開き」は15.4±5.2秒,3か月後の「右から開き」は12.7±2.6秒,「左から開き」は12.6±4.1秒にそれぞれ短縮した。FBS初回は49.6±5.8点,3か月後は52.9±3.1点に向上した。浜松方式高次脳機能スケール初回の「数唱逆唱」は10.4±3.9点,「5単語即時想起」は4.8±3.2点,「仮名拾い」は5.8±2.3点,3か月後の「数唱逆唱」は11.0±4.1点,「5単語即時想起」は8.2±1.5点,「仮名拾い」は6.2±2.7点にそれぞれ向上した。統計的に有意差が認められたのはSSE基本ステップの1回所用時間の「右から開き」「左から開き」であった。
【考察】
SSE基本ステップ1回所用時間の「右から開き」「左から開き」において有意な向上が認められた。この理由として,歩隔の広がった歩行は日常の活動では行わないパターンであり,SSEには歩隔を広くとるステップパターンが多いため特異的に向上が認められたと考えられる。つまりSSEが高頻度で特異性のあるエクササイズであり,各脳血管障害者の通常歩行パターンとは違うステップパターンを選択し練習することで,歩行のバリエーションが増え,歩行の安定につながる可能性が考えられる。他の因子では有意差は認められなかったが,筋力・バランス等は改善傾向がみられており,今後症例数を増やしていくことで健常者と同様の改善の可能性が考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
健常者で効果がみられているSSEを行うことで,脳血管障害者も身体機能の改善の可能性があることがわかった。
大蔵らが開発した転倒・認知症予防エクササイズ「スクエアステップ(SSE)」は脳機能賦活と身体活動量増大に効果的であると報告されている。このSSEはこれまでに主に高齢者の転倒予防効果(下肢筋力,反応性,バランス等)や認知機能の改善の報告がされている。しかし,身体に障害のある脳血管障害者に対するSSEの効果は未だ実証されていない。そこで今回,SSEが脳血管障害者の身体・認知機能へ及ぼす影響について検証することを目的とした。
【方法】
対象は当施設の機能訓練事業を利用し,歩行が50m以上可能な脳血管障害者7人(屋外歩行自立:3人,屋内歩行自立3人,屋内歩行監視1人。男性7人。年齢46±4.2歳。発症からの期間18.7±7.3ヶ月)であった。SSEは,当センターにて実施している集団運動のプログラムの一部として週1回,約20分間のうちに基本ステップ(6種目),チャレンジステップ(32種目)から選択して対象者全員で実施した。SSE実施前の初回評価時および実施3か月後に,下肢筋力として5回椅子立ち上がりテスト,反応性としてSSE基本ステップ(6種目)の1回所用時間,バランス機能としてFunctional Balance Scale(FBS),認知機能として浜松方式高次脳機能スケール(対象のうち失語症を有する者(2人)は除外した)を用いて評価した。初回評価と実施3か月後の各評価結果について,正規分布する場合は対応のあるt検定を用い,正規分布しない場合はWilcoxonの符号付順位和検定を用いて,有意差を比較した。統計的有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき,研究の目的と内容を対象者に事前に口頭と書面にて説明し,同意を得た後実施した。
【結果】
3か月間で全13回SSEを実施し,1人あたりの参加数は8.3回,参加率は63.7%だった。屋内歩行監視であった対象者1人が実施期間中に屋内歩行自立となった。初回評価と実施3か月後における比較において,5回椅子立ち上がりテスト初回は12.2±2.2秒,3か月後は11.7±2.8秒に短縮した。SSE基本ステップの1回所用時間初回の「右から開き」は14.7±3.2秒,「左から開き」は15.4±5.2秒,3か月後の「右から開き」は12.7±2.6秒,「左から開き」は12.6±4.1秒にそれぞれ短縮した。FBS初回は49.6±5.8点,3か月後は52.9±3.1点に向上した。浜松方式高次脳機能スケール初回の「数唱逆唱」は10.4±3.9点,「5単語即時想起」は4.8±3.2点,「仮名拾い」は5.8±2.3点,3か月後の「数唱逆唱」は11.0±4.1点,「5単語即時想起」は8.2±1.5点,「仮名拾い」は6.2±2.7点にそれぞれ向上した。統計的に有意差が認められたのはSSE基本ステップの1回所用時間の「右から開き」「左から開き」であった。
【考察】
SSE基本ステップ1回所用時間の「右から開き」「左から開き」において有意な向上が認められた。この理由として,歩隔の広がった歩行は日常の活動では行わないパターンであり,SSEには歩隔を広くとるステップパターンが多いため特異的に向上が認められたと考えられる。つまりSSEが高頻度で特異性のあるエクササイズであり,各脳血管障害者の通常歩行パターンとは違うステップパターンを選択し練習することで,歩行のバリエーションが増え,歩行の安定につながる可能性が考えられる。他の因子では有意差は認められなかったが,筋力・バランス等は改善傾向がみられており,今後症例数を増やしていくことで健常者と同様の改善の可能性が考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
健常者で効果がみられているSSEを行うことで,脳血管障害者も身体機能の改善の可能性があることがわかった。