第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 口述 » 内部障害理学療法 口述

その他1

2014年5月30日(金) 18:05 〜 18:55 第5会場 (3F 303)

座長:菅原慶勇(市立秋田総合病院リハビリテーション科)

内部障害 口述

[0661] 廃用症候群入院患者におけるADL能力の向上に関連する要因の検討

後藤亮平1,2, 田中直樹1, 金森毅繁1, 斉藤秀之1, 柳久子2, 長澤俊郎3, 小関迪4 (1.筑波記念病院リハビリテーション部, 2.筑波大学大学院人間総合科学研究科, 3.筑波記念病院血液内科, 4.つくば総合リハビリテーションセンター)

キーワード:廃用症候群, FIM, 評価

【はじめに,目的】
現在,廃用症候群を伴う入院患者へのリハビリテーション(以下,リハ)は一般的であるが,廃用症候群の診断基準や確立された評価項目はない。また診療報酬上においても,治療開始時のADL能力の低下が廃用症候群患者のリハ算定基準となっている。廃用症候群患者にリハの評価・介入を行っていく上では,ADL能力の評価だけでなく,各廃用症候を含めた評価の中で,何がADL能力の向上に関連しているか,また退院に向けてどの程度ADL能力が向上するかを検討していく必要があると考える。我々は,先行文献をもとに主要な廃用症候19項目について報告してきた(後藤ら,2012)。今回これらを用いて,廃用症候群入院患者におけるADL能力の向上に関連する要因を検討する事を目的とした。
【方法】
対象は,当院一般病棟に入院し,2012年6月24日~11月23日の間に,脳血管疾患等リハ料(廃用症候群の場合)の区分で処方された患者197例のうち,本研究の基準を満たす102例とした。調査項目は,年齢,性別,廃用をきたした疾患名,入院前ADL能力,入院前の生活状況とし,退院時には在院日数や,入院からリハ開始までの期間等についても記録した。また,日常生活自立度,FIM,廃用症候19項目(筋力低下,関節可動域制限,骨粗鬆症,心臓機能障害,起立性低血圧,運動耐容能低下,深部静脈血栓症,呼吸機能障害,肺炎,耐糖能障害,便秘,栄養障害,知的機能低下,うつ状態,バランス機能障害,協調運動障害,排尿障害,尿路感染,褥瘡)をリハ開始時と退院時に評価した。分析方法として,退院時のFIM運動項目の得点からリハ開始時のFIM運動項目の得点を引いた値をFIM利得として算出した。FIM利得を中央値で,低回復群と高回復群の2群に分類し,これらに関連する要因を検討した。その結果をもとに,2012年11月24日~2013年8月23日の新たな廃用症候群患者119例に対して,FIM利得との関連を認めた要因を評価し,リハ開始時から退院時までのFIM利得を予測できるか検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,当院倫理委員会,筑波大学医学医療系医の倫理委員会の承認を得て実施した。また研究の内容を,対象者または対象者の家族へ書面および口頭で説明し,同意を得た。
【結果】
102例の患者特性として,平均年齢は81.0±8.9歳(男性48例,女性54例),廃用をきたした疾患名は,肺炎・胃腸炎・尿路感染症の順に多く見られた。また,FIM利得(高回復群:1,低回復群:0)を従属変数とし,多重ロジスティック回帰分析にて関連する要因を検討した結果,入院前FIM運動項目(自立:オッズ比3.54,介助:reference,p<0.05),リハ開始時の膝伸展筋力(MMT3以上:オッズ比6.17,MMT3未満:reference,p<0.05),リハ開始時の股関節屈曲可動域(120°以上:オッズ比3.33,120°未満:reference,p<0.05),肺炎の有無(肺炎有り:オッズ比0.23,肺炎無し:reference,p<0.05)にFIM利得との有意な関連を認めた。これらの4要因を新たな対象者で評価し,プラス要因の数とFIM利得の平均を検討した結果,0要因:0.83±1.9点,1要因:7.2±7.5点,2要因:13.4±15.1点,3要因:19.7±20.0点,4要因:17.3±13.5点であり,クラスカル・ウォリス検定にて5群間でFIM利得に差があることが明らかになった(p<0.01)。
【考察】
入院前FIM運動項目,リハ開始時の膝伸展筋力,リハ開始時の股関節屈曲可動域,肺炎の有無の4要因においてFIM利得との関連を認めた事は,リハ開始時においてこれらの評価を行う事の重要性を示したと考えられた。また,119例を対象として行った結果からも,これらの4つのモデルにより,リハ開始時から退院時までのFIM利得がある程度は予測できると考えられた。しかし,本研究では廃用をきたした疾患名が多岐にわたるため,今後は疾患別での検討も必要であると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
廃用症候群患者におけるADL能力の向上に関連する要因を明らかにすることで,廃用症候群患者に対してADLの評価だけでなく,廃用症候を含めた代表的な評価を標準的に行う意義を示したと考えられる。