[0670] Framingham RHIは肥満を持つ小児の血管拡張能指標となり得るか
Keywords:小児肥満, 血管拡張能, 反応性充血指数
【はじめに,目的】
小児期の肥満の多くは思春期や成人期の肥満へと移行し,II型糖尿病や動脈硬化性疾患をはじめ種々の疾患に関わるため,小児期から肥満の予防・改善が必要である。動脈硬化となる血管変化は小児期から生じており,血管内皮障害や動脈stiffnessが低下し,血管拡張能の低下が認められると報告されている。血管拡張能の指標は,成人では脈波伝播速度(PWV)や動脈エコー検査で測定できる血流依存性血管拡張反応(FMD)などがあり,これらの指標は理学療法領域では運動効果指標として用いられている。小児領域でもこれらの指標が用いられているが,PWVは身長に制限があり,動脈エコー検査は長時間で駆血時に痛みを伴うため,小児においては非侵襲的で短時間かつ簡便なものが求められている。近年,成人では短時間かつ簡便な末梢動脈圧測定法(RH-PAT)による反応性充血指数(RHI)が注目されている。これは血管内皮機能の指標であり,小児肥満においてRHIを指標とした報告は散見され,RHIは健常児では年齢とともに増加すると報告されているが,健常児と比較した報告は少ない。また,RHIは非駆血側の脈波のベースラインに依存するため,Baseline correction factorで補正されており,この値は成人で検討された補正値が使用されている。この補正値を使用しないFramingham RHI(F-RHI)は小児において血管拡張能の指標となるかは明確ではない。そこで,F-RHIは小児肥満の血管拡張能の指標となるかを検討した上で,年齢との関係を検討した。
【方法】
A大学病院小児科にて中・高度肥満と診断された小児9名(8~9歳4名,10~12歳5名)を肥満群とし,同病院小児科の呼びかけで集まった肥満でない小児12名(8~9歳6名,10~12歳6名)を非肥満群とした。背景因子として,年齢,性別,身長,体重,肥満度(100×(実測体重-標準体重)/標準体重),腹囲,体脂肪率,血圧を測定した。血管拡張能の評価として,Endo-PAT2000(Itamar Medical社製)を用いて,RHIとF-RHIを測定した。統計学的解析は,各測定項目を2群間でMann-WhitneyのU検定を用いて比較し,統計学的有意水準は5%未満とした。また,JeanieらのRHIを用いた検討方法に従い,8~9歳,10~12歳の年齢別に分けてF-RHI,RHIを非肥満と肥満群の2群間を比較検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則を遵守し,対象者には研究内容を口頭および書面にて説明し同意を得た。なおA大学医学部・病院B倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
肥満群の肥満度(47.0±32.5%)は,非肥満群(1.9±9.2%)と比較して有意に増加していた(P<0.01)。また,体脂肪率も肥満群(39.5±14.4%)は,非肥満群(18.2±4.8%)と比較して有意に増加していた(P<0.01)。RHIは,肥満群(1.04±0.38)は非肥満群(1.20±0.30)と比較して有意差はなく(P=0.624),F-RHIは,肥満群(-0.16±0.47)は非肥満群(0.15±0.17)と比較して低下傾向(P=0.086)であった。また,F-RHIとRHIは非肥満群と肥満群ともに,8~9歳より10~12歳の方が高かった。
【考察】
RHIは血管内皮細胞が一酸化窒素(NO)を産生して血管平滑筋を弛緩させる内皮依存性血管拡張能を評価している。本研究では,Baseline correction factorで補正をしないF-RHIを使用した。RHIでは非肥満群と肥満群で有意差が認められなかったが,F-RHIでは肥満群は非肥満群より低値を示し,肥満群で血管拡張能が低下していると考えられた。年齢別のF-RHI,RHIは肥満群,非肥満群ともに8~9歳より10~12歳の方が高かった。健常児ではRHIと年齢との相関が報告されているが,本研究では非肥満群と肥満群ともに年齢が高いとF-RHIとRHIが増加する傾向が示され,健常児も肥満児も子供の血管内皮機能の発達に影響するものと考えられた。以上のことから,肥満の小児では,F-RHIが低下しており,F-RHIは小児肥満の血管拡張能の指標となる可能性が示され,今後,運動介入の評価指標になりうると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
血管内皮機能は,運動療法の効果を反映する指標とされている。今後,小児においても血管内皮機能を評価できる指標を明確化することは重要であり,理学療法学研究として有意義と思われる。
小児期の肥満の多くは思春期や成人期の肥満へと移行し,II型糖尿病や動脈硬化性疾患をはじめ種々の疾患に関わるため,小児期から肥満の予防・改善が必要である。動脈硬化となる血管変化は小児期から生じており,血管内皮障害や動脈stiffnessが低下し,血管拡張能の低下が認められると報告されている。血管拡張能の指標は,成人では脈波伝播速度(PWV)や動脈エコー検査で測定できる血流依存性血管拡張反応(FMD)などがあり,これらの指標は理学療法領域では運動効果指標として用いられている。小児領域でもこれらの指標が用いられているが,PWVは身長に制限があり,動脈エコー検査は長時間で駆血時に痛みを伴うため,小児においては非侵襲的で短時間かつ簡便なものが求められている。近年,成人では短時間かつ簡便な末梢動脈圧測定法(RH-PAT)による反応性充血指数(RHI)が注目されている。これは血管内皮機能の指標であり,小児肥満においてRHIを指標とした報告は散見され,RHIは健常児では年齢とともに増加すると報告されているが,健常児と比較した報告は少ない。また,RHIは非駆血側の脈波のベースラインに依存するため,Baseline correction factorで補正されており,この値は成人で検討された補正値が使用されている。この補正値を使用しないFramingham RHI(F-RHI)は小児において血管拡張能の指標となるかは明確ではない。そこで,F-RHIは小児肥満の血管拡張能の指標となるかを検討した上で,年齢との関係を検討した。
【方法】
A大学病院小児科にて中・高度肥満と診断された小児9名(8~9歳4名,10~12歳5名)を肥満群とし,同病院小児科の呼びかけで集まった肥満でない小児12名(8~9歳6名,10~12歳6名)を非肥満群とした。背景因子として,年齢,性別,身長,体重,肥満度(100×(実測体重-標準体重)/標準体重),腹囲,体脂肪率,血圧を測定した。血管拡張能の評価として,Endo-PAT2000(Itamar Medical社製)を用いて,RHIとF-RHIを測定した。統計学的解析は,各測定項目を2群間でMann-WhitneyのU検定を用いて比較し,統計学的有意水準は5%未満とした。また,JeanieらのRHIを用いた検討方法に従い,8~9歳,10~12歳の年齢別に分けてF-RHI,RHIを非肥満と肥満群の2群間を比較検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則を遵守し,対象者には研究内容を口頭および書面にて説明し同意を得た。なおA大学医学部・病院B倫理委員会の承認を得て実施した。
【結果】
肥満群の肥満度(47.0±32.5%)は,非肥満群(1.9±9.2%)と比較して有意に増加していた(P<0.01)。また,体脂肪率も肥満群(39.5±14.4%)は,非肥満群(18.2±4.8%)と比較して有意に増加していた(P<0.01)。RHIは,肥満群(1.04±0.38)は非肥満群(1.20±0.30)と比較して有意差はなく(P=0.624),F-RHIは,肥満群(-0.16±0.47)は非肥満群(0.15±0.17)と比較して低下傾向(P=0.086)であった。また,F-RHIとRHIは非肥満群と肥満群ともに,8~9歳より10~12歳の方が高かった。
【考察】
RHIは血管内皮細胞が一酸化窒素(NO)を産生して血管平滑筋を弛緩させる内皮依存性血管拡張能を評価している。本研究では,Baseline correction factorで補正をしないF-RHIを使用した。RHIでは非肥満群と肥満群で有意差が認められなかったが,F-RHIでは肥満群は非肥満群より低値を示し,肥満群で血管拡張能が低下していると考えられた。年齢別のF-RHI,RHIは肥満群,非肥満群ともに8~9歳より10~12歳の方が高かった。健常児ではRHIと年齢との相関が報告されているが,本研究では非肥満群と肥満群ともに年齢が高いとF-RHIとRHIが増加する傾向が示され,健常児も肥満児も子供の血管内皮機能の発達に影響するものと考えられた。以上のことから,肥満の小児では,F-RHIが低下しており,F-RHIは小児肥満の血管拡張能の指標となる可能性が示され,今後,運動介入の評価指標になりうると考えられた。
【理学療法学研究としての意義】
血管内皮機能は,運動療法の効果を反映する指標とされている。今後,小児においても血管内皮機能を評価できる指標を明確化することは重要であり,理学療法学研究として有意義と思われる。