第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 口述 » 教育・管理理学療法 口述

管理運営系2

Sat. May 31, 2014 9:30 AM - 10:20 AM 第8会場 (4F 411+412)

座長:曾根理(医療法人社団三喜会鶴巻温泉病院リハビリテーション部)

教育・管理 口述

[0680] リハビリテーションサービスを受療した患者の満足度と運動に対する動機づけの関連性

武田知樹1,2, 尾方英二3, 川江章利2,4, 大野智之2,5, 平野真子2,6 (1.学校法人平松学園大分リハビリテーション専門学校, 2.大分県リハビリテーション測定評価研究会, 3.池邉整形外科, 4.佐賀関病院, 5.大分赤十字病院, 6.大分健生病院)

Keywords:リハビリテーション, 患者満足度(SERVQUAL), 動機づけ

【はじめに,目的】
患者中心の医療を推進する流れがますます強まる中,リハビリテーションの領域においても患者満足度(Patient Satisfaction)の研究が散見されるようになった。
我々は第48回日本理学療法学術大会において,理学療法を含むリハビリテーションサービスを受療した患者88名を対象として患者満足度と運動に対する動機づけとの関連性について報告した。
今回,骨関節疾患のリハビリ患者を対象として患者満足度と運動動機との関連性について検討したので報告する。
【方法】
調査協力の得られた医療機関に入院および外来通院する患者の内,理学療法を含むリハビリテーションサービスを受療している骨関節疾患の患者109名(男性27名,女性82名,平均年齢72.3±9.2歳)を対象とした。
調査方法は,担当理学療法士によって調査協力の依頼およびアンケート用紙の配布を行い,患者は自室もしくは自宅にて記入後,専用の返送用封筒にて郵送してもらった。なお,その際の回収率は64%であった。
調査内容について,患者満足度の評価については,Parasuramanらの開発した「サービス品質尺度(SERVQUAL)」を使用した。患者の運動習慣に対する動機づけについては,大友らの先行研究をもとに「高齢者用運動動機尺度(以下,運動動機)」を用いた。
また,患者満足度に関連する要因として,性別,年齢等の基本的属性データも同時に調査した。
【倫理的配慮,説明と同意】
調査実施にあたっては,対象者の十分な同意を得るために調査協力依頼書を作成し,研究の趣旨および内容に対し理解および同意が得られた者を対象とした。
【結果】
1)性別の比較
リハ満足度を示すSERVQUAL得点(平均値±SD)は,男性110±13.0点に対し女性111±12.8点で明らかな性差は認められなかった(Mann-Whitney U-test,N.S.)。
2)年齢別の比較
高齢者(65歳以上)のSERVQUAL得点は112±12.8点に対し,中年者(65歳未満)は106±11.9点で,高齢者は中年者に比べ満足度が有意に高かった(Mann-Whitney U-test,p<0.05)。
3)入院外来別の比較
入院患者のSERVQUAL得点は106±14.3点,外来患者141±11.9点で,入院患者は外来患者に比べ有意に低値であった(Mann-Whitney U-test,p<0.05)。
4)患者満足度と運動に対する動機付けとの関連性
患者満足度と運動動機との関連性について,SERVQUALと運動動機は有意な相関関係(r=0.43)を認めた(無相関の検定,p<0.01)。
【考察】
骨関節疾患の患者を対象としてSERVQUALを用いた患者満足度と運動動機について調査を行った。
患者満足度に関する性差や年齢差を調査した先行研究では,女性または高齢者で患者満足度が高くなりやすいとした報告が散見される中,本研究では性差による満足度の違いは明確にすることはできなかった。
しかし,高齢者の方が中年者より満足度が高い傾向にあることが伺われた。これは,骨関節疾患の患者の場合において,年齢の方が性別より満足度を規定する因子として重要であることを示唆するものであった。
また,入院外来別の比較では,入院患者の患者満足度は外来患者に比べ有意に低値であった。この事は,骨関節疾患の入院患者の場合,外科的治療などの侵襲的治療を伴うことが多いことが影響したのではないかと推察された。
患者満足度と運動に対する動機付けとの関連性を検討したところ,満足度が高いほど,運動に対する動機付け(アドヒアランス)が高い傾向が確認された。つまり,患者満足度を高めていく取り組みは,患者の運動に対する動機づけを高める上で有益である可能性が示された。
【理学療法学研究としての意義】
本研究では,骨関節疾患患者において,患者満足度が運動に対する動機づけに肯定的な影響を及ぼしていることが推察された。
これは,理学療法士個々人の技能に加えて,リハビリテーション部門および病院全体の取り組みとして良質なサービスを提供することが,患者の運動動機を高めて疾病管理や介護予防を図るうえで非常に有意義であることを示しているといえる。