[0730] 下肢肢位の異なるスクワット動作時の膝関節の動態解析
キーワード:スクワット, ACL損傷, 三次元動作解析
【はじめに,目的】
重度の膝前十字靭帯(以下ACL)損傷は女性に多く,着地や急速なターン動作の結果生じる非接触型の割合が高い。また,女性は男性と比較し着地動作時やカッティング動作時の膝関節屈曲角度が少ないとの報告がある。我々は着地・カッティング動作時の膝関節屈曲角度は減少し,内外反角度と内外旋角度は増加することが要因の一つではないかという仮説を立てた。そこで本研究はPoint Cluster法を用い,スクワット動作を課題動作とし,下肢中間位(neutral),下肢外反位(knee in),下肢内反位(knee out)の条件で同程度身体重心を下降した場合,膝関節屈曲,内外反,内外旋に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
被験者は健常女性10名(平均年齢21.3±0.82歳)とし,下肢に手術や外傷の既往のない者とした。身体特性は身長1.58±0.06m,体重51.1±4.58kg,BMI 20.6±3.28であった。課題動作は下肢肢位をneutral,knee in,knee out条件でのスクワット動作である。スクワット中の膝関節の運動力学的データは赤外線反射マーカーを身体各標点に貼付し,赤外線カメラ8台からなる三次元動作解析システムVICON MX(Vicon社製,Oxford)を使用し,Point Cluster法(以下:PC法)を用い計測した。被験者は両踵骨に貼付したマーカー距離を上後腸骨棘(以下:PSIS)の幅に合わせ前方を向いて立位をとり,neutral,knee in,knee outの条件下でスクワットを行った。スクワットは膝関節伸展位から最大屈曲までを1秒間,最大屈曲位から膝関節伸展位までを1秒間とし,1試行を2秒間かけて行い,5試行連続して行った。スクワット施行中,屈曲動作相で,PSISに貼付したマーカーが,身長の10%と15%下降した時点での膝関節屈曲(-)・伸展(+)角度,外反(-)・内反(+)角度,外旋(-)・内旋(+)角度を求めた。下肢肢位と身体重心下降量を要因として2元配置の分散分析を用いた。上記の条件で有意差が確認された後,Tukeyの多重比較法を行った。統計解析はDr.SPSSIIfor windows(エス・ピー・エス社)を用いた。なお,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究であり,研究の実施に先立ち,広島国際大学医療研究倫理委員会の承認を得た。また,被検者に対して研究の目的と内容を十分に説明し,文章による同意を得た後に実施した。
【結果】各被験者の身体重心を10%と15%下降した際の膝関節屈曲角度は,neutral,knee in,knee outの条件間で有意差はなかった。(neutral 10%:-78.545 vs knee in 10%:-78.420 vs knee out 10%:-76.396,knee in 15%:-97.570 vs neutral 15%:-97.728 vs knee out 15%:-95.945)。身体重心を10%と15%下降時のknee out膝関節内反角度はNeutral,knee in条件と比較し,有意に大きかった。また,knee in条件はneutral,knee out条件と比較しより外反していた(knee out10%:8.740±6.850 vs Neutral 10%:2.065±5.477 vs knee in10%:-0.002±6.071,knee out15%:8.3075±9.557 vs neutral 15%:1.079±6.198 vs knee in15%:4.056±5.929)。10%と15%下降時のknee out条件での膝関節内旋角度は,Neutral,knee in条件と比較し,有意に大きく,knee in条件の膝関節内旋角度はneutral,knee out条件と比較しより外旋していた(knee out10%:5.466±6.517 vs neutral 10%:0.666±7.233 vs knee in 10%:-1.089±3.936,knee out 15%:10.638±5.212 vs neutral 15%:4.328±6.724 vs knee in 15%:1.104±5.670)。
【考察】
本研究結果から仮説は棄却されたが,knee in条件ではより外反・外旋し,knee out条件ではより内反・内旋していた。膝関節屈曲・外反位では大腿骨と脛骨は前額面で1つに並ばず,不安定な状態であるため,脛骨を外旋させることにより,外反と外旋で互いに動きを制限し安定性を得ている。よって,knee in条件では脛骨を外旋させることでスクワット動作中の膝関節の安定性を高めていたと推測した。また,膝関節屈曲・内反位は脛骨の自動内旋が得やすい肢位であるとともに大腿骨と脛骨が前額面で一直線に並ぶため骨性の支持を得やすい。よって,knee out条件では骨性の膝関節の安定性を得るためにより内反・内旋したと推測した。膝外反位の状態で,膝関節外反モーメントや内旋モーメントが加わることでACL損傷が起こるとの報告がある。本研究でのknee inでの膝関節屈曲は,膝関節外反モーメントや内旋モーメントを生じやすく,ACL損傷リスクの一因となりうる可能性があると考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究結果から,knee in条件でのスクワット動作はACL損傷のリスクの一因となる可能性が示唆された。ACL再建後にスクワット動作を行なう場合,下肢関節を総合的に捉え,膝関節が外反しないように指導を行なうことが再損傷防止の為に重要であると考える。
重度の膝前十字靭帯(以下ACL)損傷は女性に多く,着地や急速なターン動作の結果生じる非接触型の割合が高い。また,女性は男性と比較し着地動作時やカッティング動作時の膝関節屈曲角度が少ないとの報告がある。我々は着地・カッティング動作時の膝関節屈曲角度は減少し,内外反角度と内外旋角度は増加することが要因の一つではないかという仮説を立てた。そこで本研究はPoint Cluster法を用い,スクワット動作を課題動作とし,下肢中間位(neutral),下肢外反位(knee in),下肢内反位(knee out)の条件で同程度身体重心を下降した場合,膝関節屈曲,内外反,内外旋に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
被験者は健常女性10名(平均年齢21.3±0.82歳)とし,下肢に手術や外傷の既往のない者とした。身体特性は身長1.58±0.06m,体重51.1±4.58kg,BMI 20.6±3.28であった。課題動作は下肢肢位をneutral,knee in,knee out条件でのスクワット動作である。スクワット中の膝関節の運動力学的データは赤外線反射マーカーを身体各標点に貼付し,赤外線カメラ8台からなる三次元動作解析システムVICON MX(Vicon社製,Oxford)を使用し,Point Cluster法(以下:PC法)を用い計測した。被験者は両踵骨に貼付したマーカー距離を上後腸骨棘(以下:PSIS)の幅に合わせ前方を向いて立位をとり,neutral,knee in,knee outの条件下でスクワットを行った。スクワットは膝関節伸展位から最大屈曲までを1秒間,最大屈曲位から膝関節伸展位までを1秒間とし,1試行を2秒間かけて行い,5試行連続して行った。スクワット施行中,屈曲動作相で,PSISに貼付したマーカーが,身長の10%と15%下降した時点での膝関節屈曲(-)・伸展(+)角度,外反(-)・内反(+)角度,外旋(-)・内旋(+)角度を求めた。下肢肢位と身体重心下降量を要因として2元配置の分散分析を用いた。上記の条件で有意差が確認された後,Tukeyの多重比較法を行った。統計解析はDr.SPSSIIfor windows(エス・ピー・エス社)を用いた。なお,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究であり,研究の実施に先立ち,広島国際大学医療研究倫理委員会の承認を得た。また,被検者に対して研究の目的と内容を十分に説明し,文章による同意を得た後に実施した。
【結果】各被験者の身体重心を10%と15%下降した際の膝関節屈曲角度は,neutral,knee in,knee outの条件間で有意差はなかった。(neutral 10%:-78.545 vs knee in 10%:-78.420 vs knee out 10%:-76.396,knee in 15%:-97.570 vs neutral 15%:-97.728 vs knee out 15%:-95.945)。身体重心を10%と15%下降時のknee out膝関節内反角度はNeutral,knee in条件と比較し,有意に大きかった。また,knee in条件はneutral,knee out条件と比較しより外反していた(knee out10%:8.740±6.850 vs Neutral 10%:2.065±5.477 vs knee in10%:-0.002±6.071,knee out15%:8.3075±9.557 vs neutral 15%:1.079±6.198 vs knee in15%:4.056±5.929)。10%と15%下降時のknee out条件での膝関節内旋角度は,Neutral,knee in条件と比較し,有意に大きく,knee in条件の膝関節内旋角度はneutral,knee out条件と比較しより外旋していた(knee out10%:5.466±6.517 vs neutral 10%:0.666±7.233 vs knee in 10%:-1.089±3.936,knee out 15%:10.638±5.212 vs neutral 15%:4.328±6.724 vs knee in 15%:1.104±5.670)。
【考察】
本研究結果から仮説は棄却されたが,knee in条件ではより外反・外旋し,knee out条件ではより内反・内旋していた。膝関節屈曲・外反位では大腿骨と脛骨は前額面で1つに並ばず,不安定な状態であるため,脛骨を外旋させることにより,外反と外旋で互いに動きを制限し安定性を得ている。よって,knee in条件では脛骨を外旋させることでスクワット動作中の膝関節の安定性を高めていたと推測した。また,膝関節屈曲・内反位は脛骨の自動内旋が得やすい肢位であるとともに大腿骨と脛骨が前額面で一直線に並ぶため骨性の支持を得やすい。よって,knee out条件では骨性の膝関節の安定性を得るためにより内反・内旋したと推測した。膝外反位の状態で,膝関節外反モーメントや内旋モーメントが加わることでACL損傷が起こるとの報告がある。本研究でのknee inでの膝関節屈曲は,膝関節外反モーメントや内旋モーメントを生じやすく,ACL損傷リスクの一因となりうる可能性があると考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究結果から,knee in条件でのスクワット動作はACL損傷のリスクの一因となる可能性が示唆された。ACL再建後にスクワット動作を行なう場合,下肢関節を総合的に捉え,膝関節が外反しないように指導を行なうことが再損傷防止の為に重要であると考える。