[0732] 維持期脳卒中片麻痺患者に対する歩行感覚提示装置を用いた歩行トレーニングの検討
キーワード:脳卒中, 歩行トレーニング, 歩行感覚提示装置
【はじめに】1990年代より脳卒中患者に対する新たな歩行トレーニングとして,体重免荷トレッドミル歩行練習が導入された。体重免荷トレッドミル歩行練習では,荷重の反復と股関節伸展運動が重要なため,下肢や体幹のサポートが不可欠なものとなり,その下肢や体幹のサポートのため,理学療法士の負担が増加した。そこで,その問題を解決するため,下肢の振り出しにロボット技術が応用された。海外ではLOKOMATやGait Trainerが臨床に導入され,介入効果の報告が多くなされている。日本においては,産業医科大学の歩行支援ロボットや筑波大学の歩行感覚提示装置(以下,GaitMaster)が開発されているが,介入効果の報告は少なく,臨床導入に至っていない。そのため,根拠に基づいたリハビリテーション介入を行うためにも,介入効果を明確にする必要があると考える。我々は以前の調査で,維持期脳卒中片麻痺患者に対するGaitMasterを用いた歩行トレーニングの歩行速度,Timed Up & Go test(以下,TUG),筋力に対する効果の持続性を検証した。しかし,対照群を設定していないため,治療効果の有効性を示せなかった。そのため,本研究では,対照群と治療効果を比較しGaitMasterの有効性を明らかにすることを目的とした。
【対象】対象は外来通院が可能で,GaitMasterを用いた歩行トレーニングが実施可能な維持期脳卒中患者15名(男性10名,女性5名),平均62.1±8.6歳であった。内訳は左片麻痺10名,右片麻痺5名であり,原因疾患は脳梗塞10名,脳出血5名であった。発症からの期間は58.2±44.3カ月であった。研究開始前の運動状況は,通院リハビリテーション2名,健康増進施設7名,訪問リハビリテーション2名,在宅での自主運動4名であった。
【方法】方法はベースライン期,介入期,フォローアップ期で構成した前向き介入研究とし,対象者をGaitMaster実施群(以下,GM群)と対照群に割りつけた。GM群は,ベースライン期では週1回の測定を4回実施し,介入期ではGaitMasterを用いた歩行トレーニングを週3回合計12回実施し,3回終了ごとに測定を実施した。フォローアップ期では,ベースライン期と同様に週1回の測定を4回実施した。対照群は,ベースライン期,介入期,フォローアップで週1回測定のみを4回実施した。GaitMasterによる歩行トレーニング条件は,歩行装置はGaitMaster4(筑波大学大学院システム情報工学研究科開発)を使用し,実施時間20分間,歩行速度は患者が耐えうる最大の歩行速度とした。研究期間中は,研究前に行っていた活動や運動,リハビリテーションを継続して実施するように指示し,それらの内容に制限はしなかった。評価指標は10m最大歩行速度,TUG,Hand-held dynamometer(ANIMA社製μ Tas-MF01)による等尺性収縮筋力(股関節屈曲筋伸展筋力)とした。統計学的分析では,各群の特性の比較には対応のないt検定を用いた。各指標では,各群それぞれのベースライン期の4回の測定値の平均を算出し,介入期,フォローアップ期においてベースラインからの変化量を算出した。介入期とフォローアップ期の値は,それぞれ4回目の測定値の変化量とし,二元配置反復測定分散分析を用いて分析した。有意水準を5%とした。
【倫理的配慮】本研究は,筑波記念病院倫理委員会の承認を得て実施し,患者には十分な説明と同意を得て実施した。
【結果および考察】各群の患者特性に有意差は認められなかった。最大歩行速度では,群間要因(p=0.037)で有意な主効果を認めた。TUGでは,群間要因(p=0.198)で有意な主効果は認められなかった。等尺性収縮筋力では,群間要因は麻痺側股関節屈曲筋力(p=0.037),非麻痺側股関節屈曲筋力(p=0.046),麻痺側股関節伸展筋力(p=0.021)で有意な主効果が認められ,麻痺側股関節屈曲筋力(p=0.038),非麻痺側股関節屈曲筋力(p=0.041)で交互作用が認められた。このことから,GaitMasterの歩行運動の特徴である等速反復運動,強制歩行運動が,歩行能力の改善,股関節周囲筋力の改善に影響を与えることが示され,維持期脳卒中患者の歩行能力を改善させるトレーニングとして有効であることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】歩行障害を呈する脳卒中患者は多く,その歩行障害の改善のための有効な手法を検討する意義は非常に重要だと考える。
【対象】対象は外来通院が可能で,GaitMasterを用いた歩行トレーニングが実施可能な維持期脳卒中患者15名(男性10名,女性5名),平均62.1±8.6歳であった。内訳は左片麻痺10名,右片麻痺5名であり,原因疾患は脳梗塞10名,脳出血5名であった。発症からの期間は58.2±44.3カ月であった。研究開始前の運動状況は,通院リハビリテーション2名,健康増進施設7名,訪問リハビリテーション2名,在宅での自主運動4名であった。
【方法】方法はベースライン期,介入期,フォローアップ期で構成した前向き介入研究とし,対象者をGaitMaster実施群(以下,GM群)と対照群に割りつけた。GM群は,ベースライン期では週1回の測定を4回実施し,介入期ではGaitMasterを用いた歩行トレーニングを週3回合計12回実施し,3回終了ごとに測定を実施した。フォローアップ期では,ベースライン期と同様に週1回の測定を4回実施した。対照群は,ベースライン期,介入期,フォローアップで週1回測定のみを4回実施した。GaitMasterによる歩行トレーニング条件は,歩行装置はGaitMaster4(筑波大学大学院システム情報工学研究科開発)を使用し,実施時間20分間,歩行速度は患者が耐えうる最大の歩行速度とした。研究期間中は,研究前に行っていた活動や運動,リハビリテーションを継続して実施するように指示し,それらの内容に制限はしなかった。評価指標は10m最大歩行速度,TUG,Hand-held dynamometer(ANIMA社製μ Tas-MF01)による等尺性収縮筋力(股関節屈曲筋伸展筋力)とした。統計学的分析では,各群の特性の比較には対応のないt検定を用いた。各指標では,各群それぞれのベースライン期の4回の測定値の平均を算出し,介入期,フォローアップ期においてベースラインからの変化量を算出した。介入期とフォローアップ期の値は,それぞれ4回目の測定値の変化量とし,二元配置反復測定分散分析を用いて分析した。有意水準を5%とした。
【倫理的配慮】本研究は,筑波記念病院倫理委員会の承認を得て実施し,患者には十分な説明と同意を得て実施した。
【結果および考察】各群の患者特性に有意差は認められなかった。最大歩行速度では,群間要因(p=0.037)で有意な主効果を認めた。TUGでは,群間要因(p=0.198)で有意な主効果は認められなかった。等尺性収縮筋力では,群間要因は麻痺側股関節屈曲筋力(p=0.037),非麻痺側股関節屈曲筋力(p=0.046),麻痺側股関節伸展筋力(p=0.021)で有意な主効果が認められ,麻痺側股関節屈曲筋力(p=0.038),非麻痺側股関節屈曲筋力(p=0.041)で交互作用が認められた。このことから,GaitMasterの歩行運動の特徴である等速反復運動,強制歩行運動が,歩行能力の改善,股関節周囲筋力の改善に影響を与えることが示され,維持期脳卒中患者の歩行能力を改善させるトレーニングとして有効であることが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】歩行障害を呈する脳卒中患者は多く,その歩行障害の改善のための有効な手法を検討する意義は非常に重要だと考える。