[0760] 膝関節肢位の変化と大腿四頭筋機能 第3報
キーワード:慢性腰痛者, 中間広筋, %MVC
【はじめに,目的】大腿四頭筋に関してはこれまでに機能解剖学的報告,また腰痛・腰部疾患との関係を示すものなど多くの報告がある。さらに近年は超音波診断装置の進歩により深層に位置する中間広筋機能に関する報告も散見する。我々は,超音波診断装置および表面筋電図を用いて膝伸展筋力と大腿四頭筋各筋厚・面積積分値・各筋積分値比について検証し,いずれも膝伸展筋力,特に屈曲位70度から45度間における中間広筋の貢献度が高い事を報告した。そこで今回は,健常人および慢性腰痛者を対象とし,膝伸展運動時における大腿四頭筋各筋活動量の両群間での比較,また角度変化での活動量の推移について,表面筋電図を用い検証したので報告する。
【方法】対象は下肢・体幹に整形外科的疾患の既往のない健常人男性17名(平均年齢24.4±3.64歳,平均体重64.2±10.1kg,平均身長169.13±7.9cm),2ヵ月以上の持続した腰痛を有する慢性腰痛者男性16名(平均年齢24.1±4.57歳,体重63.7±9.1kg,平均身長168.53±8.5cm)とした。表面筋電図の測定筋は右側の大腿直筋,内側広筋,外側広筋,中間広筋の4筋とした。導出部位として大腿直筋は下前腸骨棘と膝蓋骨上縁を結ぶ線の中央部位,内側広筋は膝蓋骨上縁より筋腹に沿って4横指部位,外側広筋は膝蓋骨上縁より筋腹に沿って5横指部位,中間広筋は外側広筋腹停止部位から膝蓋骨上縁までの間隙とした。なお中間広筋導出に際しては超音波診断装置(SONIMAGE513,コニカミノルタエムジー株式会社製)を用いて,中間広筋腹が表層近くで膨隆する部位を確認したうえ行った。電極は皮膚の電気抵抗を考慮し十分な処理を行い,電極中心距離は10mm,各筋線維走行に並行に貼付した。まず座位にて膝屈曲5度における膝伸展最大随意等尺性収縮(以下,MVC:maximum voluntary contraction)時の大腿四頭筋活動量を計測した。筋活動量は付属のプログラムによって計算された面積積分値により評価した。次に右膝関節屈曲30度,45度,70度位からの伸展運動時の大腿四頭筋各筋MVCより面積積分値を計算し,膝関節屈曲5度でのMVCに対する割合(以下,%MVC)を計算して各筋間で比較検討した。測定は1回で5秒間のMVCを実施し,あいだ3秒間の面積積分値を用いた。測定肢位はBIODEX上端座位とし,角度調整もBIODEXにて行った。比較項目は各筋の角度別筋積分値の変化とした。比較項目は,健常群,慢性腰痛群それぞれに各肢位での大腿四頭筋各筋%MVCの変化,および両群間の各肢位のおける各筋%MVCを比較検討した。統計処理にはSPSSを用い,各肢位での大腿四頭筋各筋%MVCの比較には,一元配置分散分析法,および多重比較(Bonferroni法)を用い,両群間の比較には対応のないt検定を用いた。有意水準は5%未満とした。結果は平均±標準偏差で表記した。
【倫理的配慮,説明と同意】全ての被験者には動作を口頭および文章にて研究趣旨を十分に説明し,同意を得たのちに検証を行った。
【結果】膝関節各肢位における大腿四頭筋各筋の変化は,健常群・慢性腰痛群とも70度で%MVCは最大値を示し,45度,30度と減少する結果であった。中でも中間広筋は,健常群・慢性腰痛群ともに70度(健常群平均434.9±131.0,腰痛群338.6±108.9),45度(健常群平均235.9±81.2,腰痛群178.0±60.5),30度(健常群平均178.5±82.4,腰痛群120.1±66.4)と角度変化に伴い有意に変化した(p<0.01)。他3筋は70度と30度間で有意差を認めたが,70度と45度間,45度と30度間で有意差は認められなかった。群間比較では,腰痛群の中間広筋%MVCが,健常群の中間広筋%MVCに比較し有意に減少していた(p<0.01)。他3筋に有意差は認めなかった。
【考察】両群間での比較で,大腿直筋・内側広筋・外側広筋に有意差は認められず,腰痛群中間広筋のみが有意に低い値を示したことから,腰痛群での膝伸展筋力低下・筋出力低下に中間広筋の関与が示唆された。また,両群の角度変化による各筋%MVC推移は,同様の変化を示し,腰痛群の特異性は認めなかった。
【理学療法学研究としての意義】膝伸展筋力における中間広筋の貢献度を示す健常人による前回まで報告から,慢性腰痛者による検証を加えた。結果,慢性腰痛者で中間広筋に有意な低下を認め,健常人同様,膝伸展筋力への中間広筋貢献度の大きさを示すものであった。今後は,対象疾患を増やしていき,これまでの結果と比較し検証したい。また膝関節は荷重関節であり,末梢からの感覚入力系との関係について明らかにする必要があると考え今後の課題とする。
【方法】対象は下肢・体幹に整形外科的疾患の既往のない健常人男性17名(平均年齢24.4±3.64歳,平均体重64.2±10.1kg,平均身長169.13±7.9cm),2ヵ月以上の持続した腰痛を有する慢性腰痛者男性16名(平均年齢24.1±4.57歳,体重63.7±9.1kg,平均身長168.53±8.5cm)とした。表面筋電図の測定筋は右側の大腿直筋,内側広筋,外側広筋,中間広筋の4筋とした。導出部位として大腿直筋は下前腸骨棘と膝蓋骨上縁を結ぶ線の中央部位,内側広筋は膝蓋骨上縁より筋腹に沿って4横指部位,外側広筋は膝蓋骨上縁より筋腹に沿って5横指部位,中間広筋は外側広筋腹停止部位から膝蓋骨上縁までの間隙とした。なお中間広筋導出に際しては超音波診断装置(SONIMAGE513,コニカミノルタエムジー株式会社製)を用いて,中間広筋腹が表層近くで膨隆する部位を確認したうえ行った。電極は皮膚の電気抵抗を考慮し十分な処理を行い,電極中心距離は10mm,各筋線維走行に並行に貼付した。まず座位にて膝屈曲5度における膝伸展最大随意等尺性収縮(以下,MVC:maximum voluntary contraction)時の大腿四頭筋活動量を計測した。筋活動量は付属のプログラムによって計算された面積積分値により評価した。次に右膝関節屈曲30度,45度,70度位からの伸展運動時の大腿四頭筋各筋MVCより面積積分値を計算し,膝関節屈曲5度でのMVCに対する割合(以下,%MVC)を計算して各筋間で比較検討した。測定は1回で5秒間のMVCを実施し,あいだ3秒間の面積積分値を用いた。測定肢位はBIODEX上端座位とし,角度調整もBIODEXにて行った。比較項目は各筋の角度別筋積分値の変化とした。比較項目は,健常群,慢性腰痛群それぞれに各肢位での大腿四頭筋各筋%MVCの変化,および両群間の各肢位のおける各筋%MVCを比較検討した。統計処理にはSPSSを用い,各肢位での大腿四頭筋各筋%MVCの比較には,一元配置分散分析法,および多重比較(Bonferroni法)を用い,両群間の比較には対応のないt検定を用いた。有意水準は5%未満とした。結果は平均±標準偏差で表記した。
【倫理的配慮,説明と同意】全ての被験者には動作を口頭および文章にて研究趣旨を十分に説明し,同意を得たのちに検証を行った。
【結果】膝関節各肢位における大腿四頭筋各筋の変化は,健常群・慢性腰痛群とも70度で%MVCは最大値を示し,45度,30度と減少する結果であった。中でも中間広筋は,健常群・慢性腰痛群ともに70度(健常群平均434.9±131.0,腰痛群338.6±108.9),45度(健常群平均235.9±81.2,腰痛群178.0±60.5),30度(健常群平均178.5±82.4,腰痛群120.1±66.4)と角度変化に伴い有意に変化した(p<0.01)。他3筋は70度と30度間で有意差を認めたが,70度と45度間,45度と30度間で有意差は認められなかった。群間比較では,腰痛群の中間広筋%MVCが,健常群の中間広筋%MVCに比較し有意に減少していた(p<0.01)。他3筋に有意差は認めなかった。
【考察】両群間での比較で,大腿直筋・内側広筋・外側広筋に有意差は認められず,腰痛群中間広筋のみが有意に低い値を示したことから,腰痛群での膝伸展筋力低下・筋出力低下に中間広筋の関与が示唆された。また,両群の角度変化による各筋%MVC推移は,同様の変化を示し,腰痛群の特異性は認めなかった。
【理学療法学研究としての意義】膝伸展筋力における中間広筋の貢献度を示す健常人による前回まで報告から,慢性腰痛者による検証を加えた。結果,慢性腰痛者で中間広筋に有意な低下を認め,健常人同様,膝伸展筋力への中間広筋貢献度の大きさを示すものであった。今後は,対象疾患を増やしていき,これまでの結果と比較し検証したい。また膝関節は荷重関節であり,末梢からの感覚入力系との関係について明らかにする必要があると考え今後の課題とする。