[0762] 立位でのステップ肢位保持における支持側大殿筋上部線維,中殿筋,大腿筋膜張筋の筋電図積分値について
Keywords:股関節外転筋, 筋電図, ステップ肢位
【目的】股関節伸展,外旋を主作用とする大殿筋の活動性低下により,歩行の立脚側股関節に屈曲,内旋,内転位を呈する事で前方への体重移動が困難となる患者をみる。この場合振り向く様な方向転換時に立脚側股関節外旋,外転,伸展方向への運動が困難となる。そこで立位にて一側下肢を前外側方向に配置した台上へステップさせ,支持側股関節外旋,外転,伸展方向への運動や保持により大殿筋上部線維(Upper gluteus maximus fiber:以下,UMG)には外旋,外転,伸展作用を,大殿筋下部線維は外旋,伸展作用を考慮して活動性向上を図っている。著者らは先行研究にて立位でのステップ肢位における支持側股関節外旋角度(以下,外旋角度)変化が支持側UGMと大殿筋下部線維の筋電図積分値に及ぼす影響について検討した。この時外旋角度の増加に伴い自律的な股関節伸展が生じると共に,ステップ側下肢は開始肢位における前額面に対して外側方に位置する肢位となる事から,ステップ側下肢,体幹,頭部,上肢を含む重みは外側方へ落ちようとする働きが増す事で,支持側股関節では内転しようとする働きが増大すると述べた。これに対しUGMは股関節外旋,外転,伸展作用として,大殿筋下部線維は外旋,伸展作用にて関与すると報告した。今回は外旋角度の増加に伴う支持側股関節が内転しようとする働きの増大に対して外転作用にて関わると考えられるUGM,中殿筋(glteus medius muscule:以下,GMe),大腿筋膜張筋(Tensor fasciae latae muscle:以下,TFL)の筋電図積分値について検討した。
【方法】対象は健常男性10名(平均年齢24.2±2.6歳)とし,直立位にてUGM,GMe,TFLの筋電図を5秒間3回測定した。筋電図測定には,テレメトリー筋電計MQ8(キッセイコムテック社製)を用いて双極導出法にて測定し,それぞれ3回の平均値を個々のデータとした。次に直立位での一側足尖より10cm前方に高さ15cmの台を配置し,一側足尖が台上に軽く触れるステップ肢位を保持させた。この肢位を開始肢位(外旋角度0度位)とし,支持側股関節において基本軸を支持側上前腸骨棘を通る矢状面への垂線,移動軸を両側上前腸骨棘を結ぶ線として,外旋角度15,30,45度位となるステップ肢位を保持させ筋電図を測定した。この際支持側下肢の膝蓋骨の向きは開始肢位を維持させ,外旋角度の増大に伴う自律的な股関節伸展は許可した。直立位での各筋の筋電図積分値を1とした相対値を求め,外旋角度変化と各筋の相対値との関係を検討した。各筋の相対値について正規性検定と等分散性検定を行い,正規性を認めず等分散性が仮定できなかった事から,フリードマン検定とScheffe’s F testの多重比較検定を実施した。
【説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言を鑑み,実験に同意を得た者を対象とした。
【結果】UGMの相対値は外旋角度の増大に伴い増加傾向を認め,外旋0度と比較して30,45度で,15度と比較して45度で,30度と比較して45度で有意に増加した(p<0.05)。GMeは外旋角度の増大に伴い増加傾向を認めたが,有意差はなかった。TFLは外旋角度の増大に伴い減少傾向を認め,外旋0度と比較して45度で有意に減少した(p<0.05)。
【考察】UGM,GMeの相対値は外旋角度の増大により増加傾向を認め,UGMは有意な増加を認めた。外旋角度の増大に伴い,ステップ側下肢は開始肢位における前額面に対して外側方に位置する肢位となる事から,ステップ側下肢,体幹,頭部,上肢を含む重みは外側方へ落ちようとする働きが増す事で,支持側股関節では内転しようとする働きが増大する。これに対してUGM,GMeは外転作用として関与したと考える。また本課題は外旋角度の増大と共に自律的に支持側股関節が伸展位となる事から,UGMは外旋,伸展作用により有意な増加を認め,GMeは外転作用のみの関与により有意差がなかったと考える。またTFLの相対値は外旋角度の増大により有意に減少した。TFLは外転作用として肢位保持に関与するが,屈曲,内旋作用を有する事を考慮すると外旋角度の増加に伴って外旋,伸展位を保持するうえでの積極的な活動は肢位保持を妨げると考えられ,開始肢位より筋の伸張が必要で活動が減少したと考える。
【理学療法学研究としての意義】理学療法場面で本課題を用いる場合,各筋に対し以下を考慮する必要がある。1)UGM,GMeは外旋角度の増加により,支持側股関節では内転しようとする働きが増大する事に対して外転作用にて関わり,UGMは外旋,伸展作用を有する事から自律的な伸展を伴った外旋位保持に関与する。2)TFLは外転作用にて肢位保持に関与するが,伸展,外旋位保持には伸張するための活動減少が必要となる。
【方法】対象は健常男性10名(平均年齢24.2±2.6歳)とし,直立位にてUGM,GMe,TFLの筋電図を5秒間3回測定した。筋電図測定には,テレメトリー筋電計MQ8(キッセイコムテック社製)を用いて双極導出法にて測定し,それぞれ3回の平均値を個々のデータとした。次に直立位での一側足尖より10cm前方に高さ15cmの台を配置し,一側足尖が台上に軽く触れるステップ肢位を保持させた。この肢位を開始肢位(外旋角度0度位)とし,支持側股関節において基本軸を支持側上前腸骨棘を通る矢状面への垂線,移動軸を両側上前腸骨棘を結ぶ線として,外旋角度15,30,45度位となるステップ肢位を保持させ筋電図を測定した。この際支持側下肢の膝蓋骨の向きは開始肢位を維持させ,外旋角度の増大に伴う自律的な股関節伸展は許可した。直立位での各筋の筋電図積分値を1とした相対値を求め,外旋角度変化と各筋の相対値との関係を検討した。各筋の相対値について正規性検定と等分散性検定を行い,正規性を認めず等分散性が仮定できなかった事から,フリードマン検定とScheffe’s F testの多重比較検定を実施した。
【説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言を鑑み,実験に同意を得た者を対象とした。
【結果】UGMの相対値は外旋角度の増大に伴い増加傾向を認め,外旋0度と比較して30,45度で,15度と比較して45度で,30度と比較して45度で有意に増加した(p<0.05)。GMeは外旋角度の増大に伴い増加傾向を認めたが,有意差はなかった。TFLは外旋角度の増大に伴い減少傾向を認め,外旋0度と比較して45度で有意に減少した(p<0.05)。
【考察】UGM,GMeの相対値は外旋角度の増大により増加傾向を認め,UGMは有意な増加を認めた。外旋角度の増大に伴い,ステップ側下肢は開始肢位における前額面に対して外側方に位置する肢位となる事から,ステップ側下肢,体幹,頭部,上肢を含む重みは外側方へ落ちようとする働きが増す事で,支持側股関節では内転しようとする働きが増大する。これに対してUGM,GMeは外転作用として関与したと考える。また本課題は外旋角度の増大と共に自律的に支持側股関節が伸展位となる事から,UGMは外旋,伸展作用により有意な増加を認め,GMeは外転作用のみの関与により有意差がなかったと考える。またTFLの相対値は外旋角度の増大により有意に減少した。TFLは外転作用として肢位保持に関与するが,屈曲,内旋作用を有する事を考慮すると外旋角度の増加に伴って外旋,伸展位を保持するうえでの積極的な活動は肢位保持を妨げると考えられ,開始肢位より筋の伸張が必要で活動が減少したと考える。
【理学療法学研究としての意義】理学療法場面で本課題を用いる場合,各筋に対し以下を考慮する必要がある。1)UGM,GMeは外旋角度の増加により,支持側股関節では内転しようとする働きが増大する事に対して外転作用にて関わり,UGMは外旋,伸展作用を有する事から自律的な伸展を伴った外旋位保持に関与する。2)TFLは外転作用にて肢位保持に関与するが,伸展,外旋位保持には伸張するための活動減少が必要となる。