[0798] 全人工膝関節形成術後超早期における反重力トレッドミルの使用経験
キーワード:反重力トレッドミル, 全人工膝関節形成術, 歩行
【はじめに,目的】
全人工膝関節形成術(以下:TKA)は,歩行能力の低下した変形性膝関節症や関節リウマチの患者に対し,歩行能力の改善を主目的として行われ高齢化社会の進行と共に年々増加の傾向をたどっている。
一般に,TKA後患者の歩行能力に関してはADL能力の改善,あるいはQOLの向上を目指して行く中でその形態変化が重要視されているが,術後超早期の段階では,疼痛管理の観点からも,長時間持続して積極的に歩行練習を行うことは難しい。
反重力トレッドミル(以下ALTER-G)は,空気圧を利用することで,自重の80%まで1%単位の免荷を行うことが可能であり,整形外科領域における下肢障害に対するリハビリテーションや,有酸素トレーニングなどの目的で,幅広い層を対象に臨床への導入が進んでいる。
当院では,TKA後超早期よりALTER-Gを導入し,積極的に歩行練習を実施している。今回,その使用効果に関する調査内容を報告する。
【方法】
2011年9月以前に当院でTKAを施行した80例80膝(男性11例,女性69例,平均年齢74.3歳±6.7,Alter-G未使用群:以下P群)と,2011年9月以降に当院でTKAを施行した100例100膝(男性21例,女性79例,平均年齢74.1歳±7.4,Alter-G導入群:以下A群)を対象とした。退院時における術側の膝関節屈曲および伸展可動域,疼痛(安静時,歩行時),10m歩行時間,加えて杖歩行自立レベル獲得日数について,それぞれ両群間で比較検討した。
なお,各因子の比較検討として,対応のないt-検定を用い統計解析した。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき,全ての症例に対して測定前に今回の研究の意義を説明し同意を得た。
【結果】
在院日数は,P群:平均15.9日±2.3,A群:平均16.0日±2.8であった。
退院時の屈曲可動域はP群:平均124.0°±2.5,A群:平均123.7°±3.0,伸展可動域はP群:平均-1.1°±1.8,A群:平均-1.0°±1.7となり共に有意差を認めなかった。
退院時の疼痛に関して,安静時痛はP群:平均12.8mm±12.4,A群:平均9.65.mm±11.5,歩行時痛はP群:平均20.2mm±13.7,A群:平均16.4mm±14.2となり共にA群が有意に低値であった(p<0.05)。
10m歩行時間はP群:平均12.3sec±2.9,A群:平均10.8sec±3.1となりA群が有意に速かった(p<0.05)。
杖歩行自立獲得日数に関しては,P群:5.2日±2.3,A群:4.8日±2.4で両群間に有意差は認められなかった。
【考察】
当院ではTKA後翌日からALTER-Gを用いて積極的に歩行練習を実施しており,今回その有用性について調査した。
結果から,ALTER-Gを用いることで,荷重時の床反力を減少させ,荷重時痛をコントロールすることが可能であったと考える。また前述より,TKA後超早期の症例においても,骨盤以下の各関節運動を円滑に行うことが可能となり,その構造から両上肢の運動が自由に行えるため,より至適歩行に近い状態で歩行動作が可能となる。
また,荷重時痛をコントロールすることで,術後超早期より持続的歩行練習が可能となり,より深部静脈血栓症の予防効果を期待し,加えて歩行訓練に対する症例の満足度や歩行能力の向上,及びリハビリテーションに対するモチベーションの向上につながり得ると考える。さらに,ALTER-Gはその構造から,転倒リスクの高いTKA後超早期でも安全に歩行訓練を実施できるため,歩行に対する心理的因子にも影響を及ぼすことが考えられる。
今後の展望として,症例数の増加及び長期臨床結果について調査を進めていきたい。さらにEBMの観点から,ALTER-Gの有用性を示すべく様々な視点から研究を重ね,報告しようと考える。
【理学療法学研究としての意義】
TKA後超早期の症例に対するALTER-Gの使用効果について検討した。調査結果より,TKA後超早期からALTER-Gを導入し積極的に歩行練習を進めていくことは,安全かつ効果的に術後理学療法を進めて行く一手段として有効である可能性を示した。
全人工膝関節形成術(以下:TKA)は,歩行能力の低下した変形性膝関節症や関節リウマチの患者に対し,歩行能力の改善を主目的として行われ高齢化社会の進行と共に年々増加の傾向をたどっている。
一般に,TKA後患者の歩行能力に関してはADL能力の改善,あるいはQOLの向上を目指して行く中でその形態変化が重要視されているが,術後超早期の段階では,疼痛管理の観点からも,長時間持続して積極的に歩行練習を行うことは難しい。
反重力トレッドミル(以下ALTER-G)は,空気圧を利用することで,自重の80%まで1%単位の免荷を行うことが可能であり,整形外科領域における下肢障害に対するリハビリテーションや,有酸素トレーニングなどの目的で,幅広い層を対象に臨床への導入が進んでいる。
当院では,TKA後超早期よりALTER-Gを導入し,積極的に歩行練習を実施している。今回,その使用効果に関する調査内容を報告する。
【方法】
2011年9月以前に当院でTKAを施行した80例80膝(男性11例,女性69例,平均年齢74.3歳±6.7,Alter-G未使用群:以下P群)と,2011年9月以降に当院でTKAを施行した100例100膝(男性21例,女性79例,平均年齢74.1歳±7.4,Alter-G導入群:以下A群)を対象とした。退院時における術側の膝関節屈曲および伸展可動域,疼痛(安静時,歩行時),10m歩行時間,加えて杖歩行自立レベル獲得日数について,それぞれ両群間で比較検討した。
なお,各因子の比較検討として,対応のないt-検定を用い統計解析した。
【倫理的配慮,説明と同意】
ヘルシンキ宣言に基づき,全ての症例に対して測定前に今回の研究の意義を説明し同意を得た。
【結果】
在院日数は,P群:平均15.9日±2.3,A群:平均16.0日±2.8であった。
退院時の屈曲可動域はP群:平均124.0°±2.5,A群:平均123.7°±3.0,伸展可動域はP群:平均-1.1°±1.8,A群:平均-1.0°±1.7となり共に有意差を認めなかった。
退院時の疼痛に関して,安静時痛はP群:平均12.8mm±12.4,A群:平均9.65.mm±11.5,歩行時痛はP群:平均20.2mm±13.7,A群:平均16.4mm±14.2となり共にA群が有意に低値であった(p<0.05)。
10m歩行時間はP群:平均12.3sec±2.9,A群:平均10.8sec±3.1となりA群が有意に速かった(p<0.05)。
杖歩行自立獲得日数に関しては,P群:5.2日±2.3,A群:4.8日±2.4で両群間に有意差は認められなかった。
【考察】
当院ではTKA後翌日からALTER-Gを用いて積極的に歩行練習を実施しており,今回その有用性について調査した。
結果から,ALTER-Gを用いることで,荷重時の床反力を減少させ,荷重時痛をコントロールすることが可能であったと考える。また前述より,TKA後超早期の症例においても,骨盤以下の各関節運動を円滑に行うことが可能となり,その構造から両上肢の運動が自由に行えるため,より至適歩行に近い状態で歩行動作が可能となる。
また,荷重時痛をコントロールすることで,術後超早期より持続的歩行練習が可能となり,より深部静脈血栓症の予防効果を期待し,加えて歩行訓練に対する症例の満足度や歩行能力の向上,及びリハビリテーションに対するモチベーションの向上につながり得ると考える。さらに,ALTER-Gはその構造から,転倒リスクの高いTKA後超早期でも安全に歩行訓練を実施できるため,歩行に対する心理的因子にも影響を及ぼすことが考えられる。
今後の展望として,症例数の増加及び長期臨床結果について調査を進めていきたい。さらにEBMの観点から,ALTER-Gの有用性を示すべく様々な視点から研究を重ね,報告しようと考える。
【理学療法学研究としての意義】
TKA後超早期の症例に対するALTER-Gの使用効果について検討した。調査結果より,TKA後超早期からALTER-Gを導入し積極的に歩行練習を進めていくことは,安全かつ効果的に術後理学療法を進めて行く一手段として有効である可能性を示した。