[0802] プレート式下肢加重検査を用いたTHA前後のバランス機能の検討
Keywords:プレート式下肢加重検査, 変形性股関節症, 人工股関節全置換術
【はじめに,目的】
近年,人工股関節全置換術(THA)後の入院期間は短縮の一途を辿っており,THA後の入院期間の妥当性を身体機能の側面から検証した報告が種々散見される。THAの施行に至る主病因である変形性股関節症(股OA)は,その主訴である疼痛により歩行困難を引き起こす。しかし,THA前後で下肢の支持性を検討した報告は少ない。そこで今回我々は,股OA患者のTHA前後で,術側下肢支持性がどのように変化しているかを明らかにすることを目的とした。検討には,2008年発行の日本リハビリテーション医学会ニュースにて,下肢荷重を計測し足踏み動作時における左右足の足圧中心移動分析などを行う検査として紹介され,診療点数も認められている,プレート式下肢荷重検査を用いた。
【方法】
2013年5月1日~10月30日に,当院にTHA目的で入院した股OA患者のうち,対側のTHAを施行している者,その他明らかな脊椎・関節疾患を有する者を除いた平均年齢63.9±10.6歳の女性16名・男性2名を対象とした。下肢加重検査はアニマ社製のプレート式下肢加重計ツイングラビコーダGP-6000を用い,足踏み検査を術前日と術後3週目に実施した。立脚期のプレートへの垂直成分を表す立脚期荷重バランスの平均値・最大値(体重%)と,1歩ごとのCOP中心を原点にCOP軌跡を重ねた足底内重心図の左右幅(cm)について検討した。THA前後の各データを統計処理ソフトSPSSを用い,対応のあるt検定にて統計を行なった。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者全員に対し,ヘルシンキ宣言をもとに本研究の趣旨を口頭および書面で説明し,同意を得た者のみを対象とした。また対象者は研究への参加の同意をいつでも撤回でき,それによる不利益は生じないこと,更にプライバシー保護について十分に説明を行なった。
【結果】
立脚期荷重バランスは平均値で術前68.0±4.9%・術後65.3±4.1%,最大値では術前107.5±5.5%・術後105.7±3.8%であり,共に術前後で有意差は認めなかった。一方,足底内重心図左右幅は術前4.4±1.5cm・術後3.3±0.8cmで有意差(p<0.01)を認めた。
【考察】
立脚期荷重バランスは平均値・最大値共に有意差は認めないものの,術前に対し術後が低値を示した。よって術後3週目では,術側下肢へ十分に荷重が出来ていないことが示唆された。また足底内重心図左右幅では,術前に対し術後が有意に低値を示し,足底内における左右動揺は改善傾向にあることを示した。しかし,前述したように術側下肢への荷重自体が不十分である可能性があるため,端的に改善したとは言い切れない。Vissersらは,過去31論文を調査した結果,THA後患者の身体機能は健常群に対し,術後6-8ヵ月でも概ね80%程度の改善であったと報告しており,今回検討した術後3週目では,THA前の股OAやTHAによる侵襲などにより,術側の股関節を主とした下肢機能,またそれに随伴する身体の機能障害が残存しているために,術側下肢支持性が不十分であると考えられた。従って,THA前の機能を向上させるための理学療法介入の必要性や,THA後の理学療法における,下肢支持性向上を目的としたアプローチの重要性が考えられた。それと同時に,THA後の下肢支持性の長期的変化や各機能障害との関連,また効果的なアプローチ方法の検討などが今後の課題となった。
【理学療法学研究としての意義】
THA後3週目では,歩行時の術側立脚期の不安定性が示唆され,THA前理学療法介入の必要性やTHA後の下肢支持性に対する理学療法の重要性が考えられた。
近年,人工股関節全置換術(THA)後の入院期間は短縮の一途を辿っており,THA後の入院期間の妥当性を身体機能の側面から検証した報告が種々散見される。THAの施行に至る主病因である変形性股関節症(股OA)は,その主訴である疼痛により歩行困難を引き起こす。しかし,THA前後で下肢の支持性を検討した報告は少ない。そこで今回我々は,股OA患者のTHA前後で,術側下肢支持性がどのように変化しているかを明らかにすることを目的とした。検討には,2008年発行の日本リハビリテーション医学会ニュースにて,下肢荷重を計測し足踏み動作時における左右足の足圧中心移動分析などを行う検査として紹介され,診療点数も認められている,プレート式下肢荷重検査を用いた。
【方法】
2013年5月1日~10月30日に,当院にTHA目的で入院した股OA患者のうち,対側のTHAを施行している者,その他明らかな脊椎・関節疾患を有する者を除いた平均年齢63.9±10.6歳の女性16名・男性2名を対象とした。下肢加重検査はアニマ社製のプレート式下肢加重計ツイングラビコーダGP-6000を用い,足踏み検査を術前日と術後3週目に実施した。立脚期のプレートへの垂直成分を表す立脚期荷重バランスの平均値・最大値(体重%)と,1歩ごとのCOP中心を原点にCOP軌跡を重ねた足底内重心図の左右幅(cm)について検討した。THA前後の各データを統計処理ソフトSPSSを用い,対応のあるt検定にて統計を行なった。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者全員に対し,ヘルシンキ宣言をもとに本研究の趣旨を口頭および書面で説明し,同意を得た者のみを対象とした。また対象者は研究への参加の同意をいつでも撤回でき,それによる不利益は生じないこと,更にプライバシー保護について十分に説明を行なった。
【結果】
立脚期荷重バランスは平均値で術前68.0±4.9%・術後65.3±4.1%,最大値では術前107.5±5.5%・術後105.7±3.8%であり,共に術前後で有意差は認めなかった。一方,足底内重心図左右幅は術前4.4±1.5cm・術後3.3±0.8cmで有意差(p<0.01)を認めた。
【考察】
立脚期荷重バランスは平均値・最大値共に有意差は認めないものの,術前に対し術後が低値を示した。よって術後3週目では,術側下肢へ十分に荷重が出来ていないことが示唆された。また足底内重心図左右幅では,術前に対し術後が有意に低値を示し,足底内における左右動揺は改善傾向にあることを示した。しかし,前述したように術側下肢への荷重自体が不十分である可能性があるため,端的に改善したとは言い切れない。Vissersらは,過去31論文を調査した結果,THA後患者の身体機能は健常群に対し,術後6-8ヵ月でも概ね80%程度の改善であったと報告しており,今回検討した術後3週目では,THA前の股OAやTHAによる侵襲などにより,術側の股関節を主とした下肢機能,またそれに随伴する身体の機能障害が残存しているために,術側下肢支持性が不十分であると考えられた。従って,THA前の機能を向上させるための理学療法介入の必要性や,THA後の理学療法における,下肢支持性向上を目的としたアプローチの重要性が考えられた。それと同時に,THA後の下肢支持性の長期的変化や各機能障害との関連,また効果的なアプローチ方法の検討などが今後の課題となった。
【理学療法学研究としての意義】
THA後3週目では,歩行時の術側立脚期の不安定性が示唆され,THA前理学療法介入の必要性やTHA後の下肢支持性に対する理学療法の重要性が考えられた。